524話
今年がもう少しで終わるのと同時にクリスマスがその前に来るって言う。
忙しすぎません?いやクリスマス何も予定ないですけど
時間は回って夕方。
雪ちゃんはヨミ(分身)と一緒に帰っていった。
帰り際に、がんばってくださいと応援もされた。何故かニホリが返事をしていたが。
そして夕飯の時間。
ニホリの予告通りに豪華な夕飯になった。
それぞれみんなが好きな物を用意してもらって、明日への英気を養った。
コロちゃん何か、自分の顔よりでかい肉頬張ってたからな。
「・・・ワン」
「あきらめろん」
顎が疲れたそうです。
さて、後は明日いつ何があってもいいように寝るだけ・・・なんだが、何故かニホリ達は寝具を持って小屋の方に。
それを見て俺も行こうかとしたら、ピッちゃんに耳引っ張られて俺の部屋まで誘導された。
「るる」
「え?何?」
良く聞こえねぇ。
そのまま部屋の前に立たされて、少し待てと言われてはや5分。
時期も時期なので、さっむとか思っていると、ふいに暖かいものに包まれた感覚が・・・
「フミ?」
「何しとるん廊下で?」
フミが俺を見て尻尾で包んでくれたようだ。
あったけー
「いや、ピッちゃんに待ってろって言われてな?」
「・・・あー・・・うん。もう大丈夫やと思うで」
「おん?」
まぁフミが言うなら・・・
扉を開ける。まぁわかっていたけど誰もいない。
一体俺は何を待ってたんだ・・・?
「・・・あ。もしかしてフミ?」
「多分なぁ・・・めっちゃ気使われとる」
フミは・・・正確には、フミと母さんなんだけど。
ニホリと夕飯の準備を約束通りにして、さぁ片付けって時に母さんが言ったのだ。
「明日頑張るんでしょ?だったら後は任せて」と
そして母さんとフミが2人で片付けを済ませてしまった。
だからフミは遅れて俺の部屋に来たのだ。
皆が小屋に向かってったのは見てないから、何も思わずに来たのだろう。
そしてピッちゃんの話を俺が伝えてすべて理解したと。
なんなら俺も今理解したと・・・でもね?
「明日があるのに励むのはちょっと」
「せやな」
そこはね?ちゃんとわきまえている。
まぁそんなことに気を使われたのではないだろう。
今日の夜は、2人っきりで色々話しなさいと言うことだろう。
確かに、寝るには少し早いしな。
「・・・まぁ入るか」
「せ、せやな」
一緒にベッドに入る。
隣にフミがいる・・・当たり前のことだ。
だが、この当たり前が明日崩れるかもしれない。
そう考えると、謎の恐怖に襲われる。
そんなことをさせない為に、今までやって来たのに。良くないことを考えてしまう。
実際、そうなってしまった自分を見ているからだろうか。その想像は嫌にリアルに頭をよぎる。
そんな俺の顔を見て、察したのか。
フミが、狸になる。
「フミ?」
「この方がくっつけるかんな~うりうり~」
・・・暖かく柔らかい。
「せやろ?うちが頑張って恭輔の好みに合わせてん」
「そうだったな」
「やから・・・恭輔も大丈夫やて」
「・・・なぁフミ」
「うん?」
「怖くはないのか?」
「・・・」
「死ぬかもしれないんだぞ?」
フミは、俺に自分の事を気にするなと言った。
でも、俺はフミがフミ自身の事をどう思っているか聞いたことがない。
体を動かして、フミが俺の目の前までやってくる。
「まぁ・・・対して怖くはないなぁ」
「なんでだ?」
「うーん・・・これ、未来のうちも同じやったと思うんやけど・・・」
「・・・」
「うちな?恭輔に殺されるならそれでもええで」
「・・・は?」
何を言っているんだ?
「それも、恭輔を助ける為やろ?進んで命差し出すと思うわ」
「・・・それは」
「それに、うちは逆でもそうやと嬉しいで?」
「逆?」
「うちが危なかったら、恭輔は死んでもうちの事助けてくれるやろ?」
「あ・・・」
「多分そういうことなんだやと思うんよ・・・やから、怖くはないんよ」
・・・信頼されている。それを強く感じる。
ああそうだ。逆だったら俺もそうする。
確かに、それは怖くない。むしろ俺が望んでそうするだろう。
フミも、そういうことなのか。
未来では、俺はフミを殺した。その結果、俺は救われた・・・まぁ結果はあんなんだけど。
そして今もだ。結局。未来と同じ道のりを辿るのなら、フミは俺に殺される。
そうしないために、きっかけとなった厄災の花を倒す。
それが失敗したら・・・同じになる。
だけどそれでもフミは俺に殺されてもいいと言う。
「後花はどちらにせよほっておけんのやし。もうやるだけやん」
「・・・いやそうだけどなぁ」
「ならうじうじせんとまっすぐやればええねん!」
そういうことでは確かにある。
厄災の花は、放置すればいずれかは地球を滅ぼすだろう。
それをさせない為に、未来の俺は暴走覚悟で戦ったわけだし。
フミを死なせないで、花を倒す。
俺が考えることは、花を倒せばいいだけ。フミの事は結果として付いてくる。
「・・・ってこと?」
「せや。てか前にも言うたやんこれー」
「まぁだけど・・・なんかな」
時間が進むと、やっぱり気になるのだ。
「明日が近づくほど・・・お前と離れる気がしてな」
「むー・・・うちの事好きすぎひん?」
「これも前に言ったと思うけど、そうじゃなきゃ時間越えてでも助けに来ないよ」
「えへへ~」
だがまぁ、結論はそこなのだろう。
何を言っても、何をしても・・・未来に何が待っていたも、俺はフミが好きなのだ。
だから来たのだ。
だからいるのだ。
「『だから俺達は・・・』」
「・・・恭輔?」
「・・・うん?どうした?」
「いや・・・今恭輔が2人おったような・・・?」
「ん?未来の俺でもいたのか?」
「・・・いんや。気のせいやったわ」
「???」
何をフミは見たんだ?
時間は少し遡る。
まだフミと恭輔の母親・・・大門美智子が並んで皿を洗っていた。
洗浄機もあるが、今日はわざと手洗いをしているのだ。
少し、長く話すために。
「あのねフミちゃん」
「はい?」
「恭輔の事。ありがとうね」
「・・・はい?」
フミは、何の事だか分からなかった。
お礼を言うのはこちらだと思っているからだ。
「昔に比べたら、よく笑うようになったもの」
「よく?恭輔はよう笑う方やと思うんですけど・・・?」
「そうね。動物達には、昔からそういう子だったわ」
恭輔は、基本的に人間が好きではない。
嫌いと言うわけではないが・・・興味がないのだ。
だからこそ、友人数人以外の前では。いや、友人たちの前ですら笑うことはあまりない。
笑わないようにしているわけではないが、どこかで距離を置いているからだ。
その事実に気が付いているのは、家族と恩師。そして恭輔自身からも察しが良いと言われているあの友だけ。
だが、最近は・・・特にフミが来てからは変わった。
「あの子は隠すのが上手だから、中々気が付かないかもだけれどね?」
「・・・なんや。想像もつかんですわ」
「ふふ。それだけ、フミちゃんの前ではかっこつけるのよ」
「恭輔は何もせんでもかっこええですもん」
「ふふふ~そうねぇ。だって私たちの子供だもん」
親だから、気が付いてはいた。だけど、変えることは出来なかった。
自分達の仕事もあったし、何より動物たちの前では普通だから、問題ないと思ったのだ。
だけど、フミが来てからの恭輔を見て考え直した。
あれは普通ではなかったのではないか。もっと何か出来たのではないかと。
「だからねフミちゃん・・・絶対に恭輔と一緒に帰って来てね?」
「・・・え?うちですか?」
「ええ。だってあの子、絶対に無茶するもん。引きずってでも帰ってきていいわ」
「・・・ええ。絶対に」
「あ、でもフミちゃんも無茶しちゃだめよ?」
「えへへ。もちろんです」
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