511話
そういえばカラオケにも長いこと言ってないなとふと思いました。
そもそも大学出てから行ってないな・・・
光が束になり、恭輔に襲い掛かる。
それに対して、恭輔が腕を薙ぎ払うとその動作に合わせて同じ色の圧縮された魔力が束を消していく。
「・・・ムッとする」
「俺もここまで露骨だとは思わなかったわ」
まぁ俺的にもびっくりだわ。
フミが見ているってだけで、やる気が違ってくる。
というか、俺ってどんだけモチベーションに左右されやすいんだか。
「吸収などに支障は?」
「ない・・・と思う」
「・・・ニホリ?」
「うー!」
ニホリの方も問題ないようだ。
確実にさっきより受け渡しが簡単なようだ。
そんなところにも影響が出るのか。
随分とまぁ・・・うん。俺も何も言えないわな。
だが安定したのは確かだ。これなら十分戦えるぞ。
と思ってのもつかの間、人型が構えを解いてしまった。魔力も完全に低くなっている。
「あら?」
「終了」
「何故に?調子いいんだけど」
「時間」
「時間・・・ああ、お昼かもう」
どんだけ戦ってたんだ俺。
んじゃ、お昼食べたら続きを・・・え?やらない?
「もう流石に体を休めないと駄目よ?」
「はい?まだ余裕だぞ」
「ダメダメ。大事な戦いなんだから、体を休めるのも大事なのだわ」
「強制」
「うぇ~」
調子いいし、かなり実力が上がっているのが分かる。
だから今詰め込みたかったが・・・2人がこれだと駄目だろうな。
フミも相手してくれないだろうし。
「魔力運用くらいはOK?」
「それはいいわね。結局あれは慣れてかないといけないから」
「無茶は禁止」
「そうね。あんまり・・・大体20分操作で10分休憩ね」
「20分?」
「長時間やるのは、今のを見てできそうなのは分かったから、後は負担を連続的にかけてどうなるかね」
「なるほど」
「まぁフミちゃんが当日は見てくれないけどね~」
「問題ない」
「あらそうなの?」
「気持ちの問題。当日の方が調子がいいはず」
「あら~」
「ふぉぉぉぉぉ・・・」
「・・・なんでフミは狸モードなの?」
「恥ずいねん!!」
だからって狸状態で手で顔隠さなくてもいいでしょように。
その状態だと顔赤いなーとか分かるの俺くらいだぞ?
「じゃあ恭輔ちゃん達は、お昼食べててね~」
「うん?2人は食べないのか?」
「ちょっとね~」
「人型のご飯は?」
「う」
「ありがとう」
「準備の良さよ」
なんでニホリが持ってんだ・・・ああ、ポヨネの『倉庫』に入れておいたと。
マジで準備いいなおい。
人型が荷物を受け取ると、そのまま消えていった。
本当に何か用があるみたいだな。
じゃあ俺達はここで・・・あ
「皆分のご飯は?」
「あ・・・忘れてもうた」
「あちゃ~・・・まぁ帰って食べる気だったしな」
だからフミ達は家にいたわけだしな。
「じゃあ帰っか」
「うー!」
「せやな・・・ところで恭輔?」
「うん?」
「なんでうち抱えられっぱなしなん?」
「え?いやなんとなく」
「ほう」
「・・・あ、降ろす気はないぞ」
「・・・いやまぁええけど」
あ、また顔が赤くなったぞ。
「ふぅ~・・・やれることは遣ったって感じなのだわ」
「不足している」
「分かっているわよ。残りの部分はどうあがいたって時間が足りてないわ」
22層の海に面している洞窟の1つ。
その中は、本来あるべき姿からは大きく変わっていた。
岩をそのままくりぬいたような、自然の姿から海辺の別荘に変わっているのだ。
女神たちがこの階層に家を建てる際に、出来るだけおしゃれにと頑張った結果こうなった。
明らかにやりすぎだし、殆どこの家にいないのだが・・・まぁいいだろう。
彼女たちは、この家で休んでいた。これは恭輔達に気を使ったのだ。
女神たちは、あまり深く考えていないように振舞っていたが・・・これが最後になるかもしれないのだ。
ならば、彼らには水入らずで過ごしてもらうのがいいだろうと。
それに、人型のダメージの回復も行わないといけなかった。
「それで?どんな感じ?」
「・・・損傷率2割」
「・・・本当に規格外の速度ね」
「余波のみで各部に支障が出始めた」
恭輔が調子の良い時・・・その成長は1秒1秒実感できる。
魔法を使うたび。拳を振るうたびに成長する。
そのせいで、人型の想定していた威力を超えることが多かったのだ。
その分を、ダメージとした人型は徐々に蓄積している状態だった。
「最後はあなたも戦うからね。流石にちゃんと見ておかないと」
「・・・」
「・・・ねぇひーちゃん?」
「?」
「貴方・・・死ぬ気じゃないわよね?」
「それはない」
「あら」
「約束した」
「・・・それは、あの子と?でもそれは」
「私ではないのは分かっている。だからこそ」
「え?」
「既に・・・『私は』いないが私はいる」
「ひーちゃん・・・」
「悲しい結末を見た。悲壮な決意を見た。絶望を見た」
「・・・」
「それを変えたい。超えたい・・・私は・・・私たちはそのために生まれた」
遠い・・・遠い記憶の話。
女神が彼女を生み出したのは、地球という母なる大地を守る為だった。
その理由を、女神は既に忘れてしまった。
だが、人型は覚えていた。そして、自分が生れた時に望まれたことも。
そもそも、ダンジョンがなければあの厄災の花は存在すらしなかっただろう。
それが生れた理由・・・一番の原因を、人型は彼女自身にあると思っていた。
だから、人型は嘘をついた。すぐにばれてしまう嘘だとわかっていながら。
それは何故か・・・彼女が、人型が女神の期待に応えることが出来なかったからだ。
「私と『私』そして、彼女の思いで戦う。だから死ねない」
「・・・ひーちゃんそれは」
「問題ない」
人型は、未来の恭輔や今の恭輔を戦わせる気がない。
自分のやること・・・私たちのやることは、既に決まっている。
何より・・・今の彼女を、彼らに見せたくはない。
それが・・・自分に与えてくれた彼女への恩返しだ。
「負けない・・・絶対に」
「・・・じゃあひーちゃん。私とも1つ約束をしましょ?」
「・・・」
「死ぬ気で戦うのも、ボロボロになるものいいけど・・・絶対に、返って来てね?」
「・・・」
「ふふ。だって、そうじゃないと私の子供ですって、未来の旦那様に自慢出来ないのだわ!」
「!!・・・努力する」
「あ!絶対よ。絶対だからね!!」
ここに、新たな約束が増えた。
人型もまた、負けられない理由が増えたのだ。
お昼も食べた。おなか一杯。
だから・・・そろそろ頑張ろう。
「」(エッホエッホ
ロラちゃんが、庭にあるお墓の前に何かを運ぶ。
それは、恭輔が撮りためて作ってきた、家族たちの写真集だ。
こっそりと持ちだしてきたから、後で怒られちゃうかも。
そんなことを考えながら、ロラちゃんはお墓の前にそれを並べた。
「」(ヨシ
『いやそれでいいんです?』
「」(ヨ!
『ええお久しぶりです・・・ああ、私はの話ですけどね?』
「」(シッテル
『まぁでしょうね・・・というか、本当にそれだけでいいんです?』
「」(ミチダケ
『・・・ああ、道があればいいんですか。異常ですね』
「」(エヘ
『ハァ~・・・それにしても、死んだ存在を呼び起こすのがこんなに簡単だったなんて』
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