468話
ヘッドセットのマイクがぶっ壊れるっていう
名前が聞こえない?でもちゃんと発言して・・・
「■■■・・・なんで・・・」
「またおんなじ?」
「多分・・・」
あの子と同じ現象が起きている・・・?
でも姿かたちはちゃんと覚えてる。それに、夢の中にはあの子だっているし・・・
「う?」
「他の子?・・・まさか」
・・・他の子の名前を思い出そうとする。
だけど、やはりそれを言葉に出来ない。
口にしようとすると、何故か言語化できない。頭では、それが名前であるということが分かるのに。
俺以外の存在に名前を伝えようとすると駄目になる?
「■■■・・・ああクッソ!!」
独り言でもダメ・・・俺の外に出せない。
「本当に何が起きてんだ俺に・・・」
「それ、恭輔のせいなん?」
「・・・というか、地球とのつながりがあるからって感じか」
俺に起きていることで、明らかに問題ありそうなのはそれくらいだ。
まて、一つこの夢の中なら確かめられることがある。
今、俺はみんなとのつながりを認識している。
だけど、俺に繋がっているのはみんなだけではない。
地球と言う、俺では受け止めきれない存在との繋がりもあるのだ。
それを・・・この場に引きずり出す。
視界のチャンネルを切り替える。
俺に繋がっているすべてのラインを認識。
その中で、一番大きい物を・・・俺の方に引っ張れば・・・ッ
俺の過去を移していたはずの世界が崩れる。
まるで地震が起きたかの様に大きく揺れている。
思わず倒れてしまうほどの強い振動だ。
「なんや!?」
「恭輔さん何したんです!?」
「ワン!」
「う!」
「いやすまん!!」
いきなりすぎて、他の皆も慌ててしまった。
いやだが、収穫はある。
引っ張った感覚から、何かをこの場に引きずり出すことは出来そうだ。
だがそれを無理やりすると、恐らくいまいる空間が壊れるかもしれない。
夢ってのは精神状態に大きく影響するそうだ。つまりここは、俺の精神世界であると言い換えてもいいかもしれない。
そこが壊れた時、俺にどんな影響があるか分からない。
「何したんや今の・・・」
「地球をここに引っ張り出そうとしたんだ・・・正確には、繋がっている部分をってことだけど」
「本当に何してるんや」
「今の揺れは、この空間が壊れかけたってことですか?あまりに巨大な存在を入れようとして」
「多分だけど」
「それ危ないやん!?」
「ええ。逆に揺れてくれて良かったです」
「面目ない・・・」
少々焦っていた。
あの子だけでなく、他の子達の名前も言えなくなっているなんて・・・忘れてないだけ、まだマシなのに。
やるなら、もっとラインのつながりを調べてからやるべきだった。
「メッ!やで」
「すまん・・・」
今回は全面的に俺が悪い。あまりにも迂闊だった。
揺れた時に完全に俺の夢と言う名の過去は消えてしまったようだ。
当たりを見回しても、何も映っていない。
「クゥ~」
「いや本当にすまん・・・」
平謝りするしかない。
ふーちゃんも自分の先輩・・・自分より先にいた狐の事をもっと見たかったそうだし。
他の子も似た感じだな。前の俺を見たかったそうだ。
・・・そういえば、皆にはあんまり昔の話をしたことなかったな。
「・・・うん?皆?」
「どしたん?」
「・・・みんないるか?」
「え?おるやん・・・あれ?」
「そんなはずは・・・」
「うー?」
・・・ロラちゃんが、いない。
暗闇の中、1匹の何かが歩いている。
そこは暗く、何もない空間。
人の気配はおろか、本当ならいつも近くにいるはずの家族の姿すらない。
当たり前だ、自分は、自分の意思で離れてきたのだから。
あそこにいたら、バレてしまう。
「」(クラーイ
ただでさえ未来の彼が来た時にバレかけたのだ。
あの時はまだ意識すらしていなかったと思うが・・・多分。未来の方にはバレちゃったかな?
でもいいのだ。それでも名前は憶えてない。自分が・・・自分たちが全部消してしまったから。
この世界は、前はそこあそこ賑わっていた。
一杯家族はいたから。明るく温かかった。
・・・でも、その家族も今はいない。いなくならないといけなかった。
そうじゃないと、君の元へ行けないから。
・・・君は、僕たちの事を覚えていない。
でもそれでいい。
君は、自分ではそうは思ってないみたいだけど、思っている以上にみんなに好かれている。
ずっと見ていた。だから、君に好きな人・・・人じゃないけど、愛する存在が僕たち以外に出来て嬉しかった。
だけど、君はそれを失ってしまったね。悲しかったね。辛かったね。
僕たちは、あの時は力になれなかった。
でも、今は違う。
あの子に・・・僕たちがいなくなって、悲しんでいた君のそばにいてくれたあの子が力を手に入れた。
その力の形は、君たちを示すものであり、僕たちを示すものでもある。
だから、今度こそ・・・君の為に僕たちはここにあれる。
会いたいし、ちゃんと名前を呼んでほしい・・・けど今は。
「」(トリャー!!
夢から覚めて、未来に向かって欲しい。
その先で僕たちもいるから。
・・・僕だけ先に呼ばれると、皆に怒られちゃうしね!!
「・・・どんな姿勢だこれ」
「「「「「「「「「zzzzzzz」」」」」」」」
「・・・増えてね?」
「めぇ」
「しーちゃんおはよう・・・この猫たちはどこから・・・」
「・・・」(クイ
「ああ猫扉から・・・そういや開けてたわ」
我ながら不用心・・・でもないか。所詮猫用だし。
夢が壊れて、何もない空間にいたはずだが、急に目が覚めた。
何も起きずに、本当に唐突に夢が終わった。
そして起きてみたら皆+猫に囲まれてたって言う。
「・・・めぇ?」
「え?」
泣いている・・・?
顔に触ると、水分が手に着く。
何で泣いているんだ・・・?
夢の内容は覚えてる。
コロちゃんが来るより前の話。
だから、泣くようなことなんて・・・
「何で・・・なんで・・・」
「めぇ・・・」
涙が止まらない・・・
「」(オハヨ!
「うぷ・・・ロラちゃん?」
「めぇ」
「今割と悲し」
「」(トリャ
「おっふ・・・」
軽く顔踏まれた。なんて攻撃的なロラちゃんなんだ・・・
「」(フンス
「・・・元気出せって?」
「」(グゥー
「・・・ハハ。ご飯食べるか」
「」(ワー
「・・・その前に皆どかすか」
「めぇ」
「あんがと」
気が付いたら、涙は止まっていた。
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