449話
観光から別荘に帰還
「ところでなんやけどふーちゃん」
「クゥ?」
「ふーちゃんお喋り出来へんかったっけ?」
「・・・出来るけど面倒」
「あー」
「変化って声帯も作れるのか・・・」
もはやなんでもあり・・・今更か。
「あ、じゃあバトちゃんは?」
「あーどうなんやろ」
サキュバスの見た目の変化はあくまでも異性を誘惑するための能力。
もちろん言葉を話せた方がいい事もあるのだろうが、基本的には相手の好みに見た目を合わせるって方向に寄っていると思うのだ。
そうなると、バトちゃんはお喋り出来ないわけで。
「うーん・・・ちょっと残念」
「そうなん?」
「まぁね」
「恭輔そもそも必要なんか?ってあたりが疑問なんやけど」
「うーん・・・俺の場合って、皆が何が言いたいかが伝わるだけで音自体は普通に聞こえてるのってこの話したな」
「されたわな」
「んで、その音自体はあんまり関係ないって言うか?」
「ほう?」
別に音を鳴らす必要性すらないのだ。本当はな。
俺の動物たちの言葉がわかるこの能力。正確には言葉がわかるんじゃなくて心がわかるの方が正しいのかもしれない。
「なんならコロちゃんとか触ってれば何考えてるかわかるし」
「それは付き合いの長さから来るあれなんやないの?」
「それはある」
大いにある。
「クゥ?」
「ふーちゃんは尻尾見れば大体わかるかな」
「ぶんぶんやからな」
「私は?」
「バトちゃんは羽根と口かな」
「ほう?口何?」
「うん。バトちゃんはテンション上がってたりすると口角がちょっとだけ上がるのよ」
「・・・うん?」
「んで、眠いと口角が下がる。後目もとろーんってなる」
「可愛い?」
「可愛い可愛い。なんか手に乗せて寝る所見たくなる・・・?」
「えへへ~」
「・・・うん?」
「クゥ?」
「どうしたの恭輔?」
「・・・う?」
「あ、ニホリお帰り~」
「・・・」
「・・・」
「・・・う!」
「・・・クゥ~」
「・・・きき?」
「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?」」
シャベッタ
「るるー?」
俺とフミの絶叫が家の中に響く。
それを聞いて、何事かとピッちゃんが来た。
そしてバトちゃんの姿を見て、あー見せたのねとか頷いて戻っていく・・・って待って。
「待てピッちゃん」
「るー?」
「何その薄味の反応」
「るーるー」
「あーなるほどってまてや」
恭輔の魔力吸ってるの見ちゃったから今更驚かないって何。
既にそのリアクションは通り過ぎてるんだって顔やめて。
「てか俺の魔力吸うって何」
「る」
「首元に・・・?」
「あ、恭輔昨日言ってた魔力が変ってこれが原因なんやないの?」
「・・・おお!?」
俺吸われてたってそういうことか!?
ニコニココロコロ笑いながらバトちゃんは飛んでいる。
さらっと体から羽根を生やしてパタパタと飛んでいるんだけど、いきなりそういうことするのかこの子・・・?
何かもっと純粋だったはずなのに・・・もしや。
「『悪魔化』の影響がここに・・・?」
「えぇ!?」
「明らかに動きが小悪魔のそれだ・・・男をもてあそぶ小悪魔のそれだ・・・!!」
「き~♪」
『悪魔化』ってそう言うことじゃねぇだろおい。
確かにヨミも性格が変わるかもーとか言ってたけど、こういう方面って・・・何か凶暴になるよりダメージが大きいんだが。
「大事に育ててた娘が悪女になってしまった気分だ・・・」
「いやどんな気分なんそれ・・・」
「うー・・・」
「クゥ・・・」
「・・・駄目だった?」(ウルウル
「ハッ!!ダメじゃないぞバトちゃん!!」
「じゃあ魔力吸ってもいい?」
「おk」
「じゃあイタダキマス!!」
そう言って首元に噛みつく勢いで口を付ける。
そのままちゅーちゅー音を立てながら吸っている。
おお、これが魔力を吸われてる感覚か。
なんというか・・・よくわからんな。確かに抜けてるってのはわかるんだけど、それ以外わからない。
体の中の魔力が抜けていっているはずなのに、体の魔力が動いている感覚が全くないのだ。
どういう理屈だこれ。
「・・・美味しいの?」
「きき♪」
やっぱり人間と同じ言葉をしゃべるのは慣れてないのだろう。
魔力吸引に夢中になっているからバトちゃんのいつもの鳴き声になっている。
てか、口を体に付けるだけでいいんだな。
そもそも外部の他の生物に魔力を吸われているって、勝手に魔力を動かされているのと同じだしな。
まぁ感覚はないんですけど。
「あ、もしかして吸ってはないのか?」
「き?」
「え?めっちゃ吸われとるような気がするんやけど」
「えっとな・・・」
まずサキュバスの精気を男から奪うのには。夢に出てくる必要がある。
これは肉体ではなく精神に干渉することで、相手に干渉しやすいようにしていると考えられる。
そして夢の中で性行為に及ぶわけなのだが・・・精神的にとは言え肉体的に深くつながる事で相手の精神のもっと深い所、魂に干渉出来るようになるためだと思う。
ここまでの手順を踏んで、ようやく精気を吸収している・・・と思っている。
この考えをバトちゃんに適応する。
まずバトちゃんは俺の首元に口を付けている。
この時点で、夢の中で俺と触れ合るのよりいい条件になっている。
直接触れ合っているから、わざわざ性行為に及ばなくても魂に干渉出来る・・・って感じだ。
「おお!・・・バトちゃん恭輔とエッチしたいん?」
「???」
「バトちゃん元がコウモリだから・・・」
んでもってモンスターだからそんなことわからないですはい。
「ああ、そらわからんわな・・・よかったわ」
「うー」
「るる」
「き?」
「クゥ・・・」(プルプル
命拾いしたなってニホリ達がバトちゃんの肩に手を置く。
場合によっては本気の殺気とか飛んできかねないからな。一度経験があるふーちゃんが震えてるよ。
「まぁ吸ってることには吸ってるんだろうけど、ストローとかで飲み物飲んでるとは違うって感じ」
「『吸血』の魔力版じゃないってことやな」
「そういうこと。ちなみに吸ったらどうなるの?」
「美味しい!!」
「・・・そっかぁ」
強くなる・・・とかはないのか。まぁそうなったらそれは吸血鬼か。
吸血鬼もなんか姿形が自由自在な感じあるけど、強くならないなら吸血鬼じゃないな。
てか普通に昼にニンニク食べてなかったか?
「じゃあ食事なん?」
「・・・お肉がいい!」
「ほー・・・え、じゃあなんで吸うん?」
「んー・・・デザート?」
「「ああー」」
「う?」
「きー」
「ニホリ相手やときーなんやな」
「多分ニホリがうーだからそれに対して反射的に喋ってるんだよ思うわ」
俺達が普通に喋ってるからそれに対しては人の言葉で話すって意識があるのだと思う。
逆にニホリとふーちゃん達には普段の話し方が反射的に出てくるのだろう。
考える間もなく、普段からお喋りしているように。
実際、俺の魔力を吸っている間もきーだったから、集中してないと駄目なんでしょ。
「そこんところふーちゃんはどうなん?」
「・・・面倒?」
「うーんぶれないねぇ」
「意味ないもん」
「確かにそれはあるわ」
「・・・そういえば、フミも何かそういう鳴き声あるんか?」
「ほえ?うち?」
「うちうち」
「・・・あれ、どんなんやったっけ」
「えぇ・・・」
普通自分の鳴き声忘れるか・・・?
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