446話
短め
『さて・・・そろそろ行くかな』
「誰かに会いに来たとか言ってなかったか?」
『んあ。いいんだよ。元気そうなのはわかったしな』
「フミか?」
『いや違う・・・忘れてた子と、自分の事を投げ出してでも俺の為に動いてくれた子だよ』
「はぁ・・・そういや、なんでお前俺にしか会わないの」
『はい?・・・一応俺未来から来たんですけど?』
「おう・・・それで」
『えぇ・・・これ以上何が起きるか想定不可能にしない為にも、お前以外に会わないようにしてるんだよ』
「じゃあお前自体は会いたいってか?」
『・・・いや、そうでもない。皆いるしな』
「そうか。フミには会いたいと・・・だってさ」
『は?』
「いやぁ・・・未来の恭輔ってあんま変わらんな。文字通り格は違うみたいやけど」
いつのまにと言った顔だろう。
それもそうだ。フミにそういったスキルがないのはこいつの方が詳しいだろう。
気がつかなかったのは俺がいて、未来の俺自身も景色を眺めることに気を取られていたからだろう。
実際、こんなところで会うとは思ってもいなかったのか、その顔は驚愕と・・・恐怖が見える。
は?恐怖?
『な・・・んで』
「おん???」
「???」
『いや待て・・・そうか、だからか。だから俺がここに来れるのか・・・』
「おーい、未来俺ー・・・ダメだ己の世界に入ってる」
「恭輔も時々こんなんやで?」
「マジかよ」
ブツブツとは言ってないけど、それでも顎に手を当てて下を見る図は不振極まりない。
あ、こいつ考え事してるなってすごく良くわかる。
・・・俺もこうなるのかぁ
それにしても。フミを見て恐怖してこうなるって・・・何かフミに感じたのか?
自分がここに来れる理由とか言ってたけど、こいつが時を超える力を持っているからじゃなかったのか?
『ハハハ・・・そらそうだ。俺がこうなんだ、あいつだって・・・』
「んー?力はあるけど、簡単には使えないのか?それが何故か出来る・・・」
「・・・いや2人で何おんなじ体勢で考え込んでんねん!!」
「『おお』」
尻尾によって俺と未来の俺の顔を軽くはたかれることで現実に戻ってこれた。
「反応もおんなじなんかい」
『まぁ俺だし』
「俺だからなぁ」
「『ハッハッハ』」
「うわそっくりが並ぶと違和感えっぐいわぁ・・・」
身長とか老け具合とか違うけど、ほぼおんなじ顔が同じだからな。
それが横に並んで一斉に笑っているのだからそれは非常に変な絵図らだろう。
んで、未来の俺は何かわかったのか?
『んー・・・そうだな。ああ、わかった』
「そうですかい・・・なんかさっきよりテンション高いな」
「未来の恭輔もうちの魅力にやられたんやな」
『・・・はは。そうだな』
「目逸らされた!?」
「はいはい。フミは俺のフミだぞー」
「むぅ・・・それでも恭輔に魅力伝わらんのむかつくんやけど」
「いやほら。未来の俺はちゃんと未来のフミの事大好きだから」
「まぁじゃなきゃ過去を変えようとせんわな」
「途中諦めてたらしいけど」
『やかましい・・・悪い、もう帰るわ』
「うん?もうか。フミと話さなくていいのか?」
『いいんだよ・・・やることも出来たしな。ああいや、この場合やることってか準備する物が出来たか』
「はぁ」
「・・・なぁ」
『・・・あ、俺か?』
「せや。あんた・・・未来のうちに会ったらちゃんと話せる?」
『・・・無理・・・かなぁとか思ってたよ』
「思ってた?」
『ああ。でも、今ならなんとなくちゃんと話せる気がする。やらなきゃいけない理由も増えたしな』
「・・・ならええわ」
「おう?」
フミは、フミにしか感じ取れない何かがあるのだろう。
それは、未来の俺の何か?
それもフミに関することで・・・いや、これは無粋だな。なんとなくだが、俺が考えていいことじゃない。
『じゃあ、行くわ。恐らく、今年を越えられるかが勝負だ・・・準備はしとけよ』
「ああ。何が何でも越えてやるよ」
『呵々。そうじゃなきゃ困るからな』
そう言って、未来の俺は消えていった。
未来に戻ったのだろう。あの、誰もいなくなったあの世界に。
「未来の恭輔さんってどんな感じでした?」
「えーっと・・・恭輔に影を増やした感じと言うか。大人びとるなやっぱり」
「まぁ年は今の恭輔さんより上ですからね。強そうでした?」
「めっちゃ強いわあれ。あの亀とかよりつよいんちゃう?」
「えぇ!?そこまでですか!?」
「いや起きてたのかよポヨネ」
「え、いやお姉さまを隠すの手伝ってたんですけど」
「あ、結界張ってたのか」
それは全く気がつかなかった。
ベランダから戻り、寝室に入ると何故かポヨネがいたのだ。
まぁそういうことなら仕方ないな。
ただなんで俺の部屋で女子トークを開始するのか?
そもそも他の子どこ行った。
後、なんでポヨネは人型なんだ?
「ロフトで寝てますよ。皆で」
「ユニちゃん達は?」
「ニホリが浮かせて運んでましたけど」
「便利だなぁおい」
・・・俺もそっち行きたいな
「んで?ポヨネは何しに来たん?」
「あ、そうでした。お父様からご連絡がありましたよ」
「親父から?」
「はい。まぁ忙しそうだったので私が電話を受けたのですが・・・」
「ああいや、それは全然いいんだけど・・・今連絡来るのって明らかにやばい内容なんだよなぁ」
だから人型だったのか。
俺一応休暇で旅行中だぞ?その状況で連絡・・・ポヨネの言い方だと、様子を聞きに来た感じでもないだろう。
となると・・・事件発生かな。
「何だって?」
「この写真の存在が、太平洋上で確認出来たそうです」
ポヨネが見せてくれた画面は、海の画像だ。
・・・海中に見える、大きな影がなければ完璧だった。
あの龍じゃない。もっと・・・やばい。
写真越しだというのに、それがヤバい・・・俺にとって不吉をもたらす存在だと言うのがわかる。
「なんやこれ?」
「お父様曰く、植物だそうですよ?」
「へぇ。これが。海の中って海藻だけやないんやな」
「ですね。これめっちゃ木みたいですし」
「せやなぁ・・・でもなんやろこいつ・・・恭輔に似とる?」
「え?」
・・・そら似てるだろうさ。ある意味で、俺と同じような存在だ。
地球に干渉出来て、自然の力を操れる・・・操れるようになる怪物なのだから。
「厄災の花・・・」
「花?」
「木やで?」
こいつは見た目が木だが、花なのだ。
ああなるほど。これは良くない。地中の魔力を吸ってるのはこいつか。
それに、今の段階で処理することも出来ない。
こいつは魔力を食らうから、魔法が全部効かないんだ。
成長しきって、吸収を辞めた時にしか魔法が通用しない。これでは俺達では手を出せない。
国の持つ兵器では・・・多分ダメだな。近づいた途端に脅威と判定されて返り討ちにあうだろう。
それだけの力は既に持っているはずだ。
神力では・・・ダメだな。使える量が少なすぎる。
その状態で使っても意味がない。それどころか、こいつ自身に神力を吸収させる結果にしかならないかもしれない。
それは恐らく考えうる限り最悪の行動だ。そうなったら本当にどうしようもなくなってしまう。
・・・あの宝玉を使えば届きそうだが、その場合は・・・多分ダメだ。俺がダメになる。
耐えられないと言うか・・・多分暴走する。結果が変わらない。
厄災の花を倒せるが、その代わりに・・・
「・・・成長しきるまで、ちょうど1月」
「わかるんですか?」
「未来の俺が言ってたからな・・・敵はこいつだ」
「これが・・・」
ようやく、敵が見えたな。
よろしければ評価やブクマ登録などお願いします




