433話
ようやく出せた
ついに、と言うべきだろう。
日本を出て、鱗の持ち主が残したメッセージの通りに神力を辿ることになったのだ。
まぁ俺自身はあることしかわからないから、細かい所はハクコちゃんに頼ることになるんだが。
飛行機で向かうのは・・・ブラジル。
は?ヨーロッパ行くんじゃないのって?
・・・俺もそう思ってたんだけどね?
「何で移動してんだ見たこともないあの野郎・・・!!」
そう。俺たちが会わなきゃいけない奴・・・神力を持つ何か。
そいつが最初に俺が場所を見た時と違う場所に移動していたのだ。
これがマジ最悪。
親父には最初にブルガリアあたりって伝えちゃったから、その方向で俺も移動する予定だった。
それを急遽変えてもらったのだ。マジで本当にすまんかった親父。
移動は特別に用意してもらった、俺達が全員乗れる飛行機。
詳しい話は省くけど、まぁでかいよね。
ユニコーンとか羊とかが快適に過ごせるようにってお願いしたからなんだけど・・・あれ、もしかしてこれが時間かかった理由なのでは・・・?
まぁそんな感じにブラジルのマナウスまで。
そこは結構アマゾン観光で有名な観光地だから、色々面白いものはあったよ。
普通に観光で来てみたかったなと思わんでもないよ。
さて・・・そんな俺達は今どこにいるのでしょーか?
「森の中だわちくしょう」
「うー」(プカプカ
「いいなー。俺も飛ぼうかな」
「ガウ」
「悲しい」
「一応あるのはわかるんやから頑張ってや恭輔」
アマゾンと言っても、実のところ全部が森ってわけでもない。
火事で燃えたり、伐採で減ったり、畑に成ったりで結構森じゃない部分はあるのだ。
・・・あるはずだった。
この国に来て初めてしったんだが、森が大きくなっているんだとか。
今までとは比べ物にならない速度で森が広がっている・・・砂漠化ならぬ、森林化が進んでいるそうだ。
明かな異常事態だが、元々環境破壊とかで問題になっていた分、あまり日本ではニュースになっていない。
親父は知っていたらしいが、それよりあの鱗のせいで起きた影響の方が気になってたみたいで見落としていたらしい。
そして、俺とハクコちゃんから見た場合・・・もうやばい。
どこからでも神力を感じる。
ハクコちゃん曰く、かなり薄い状態で、遠くからここまで届いているのだとか。
その神力が、自然の成長速度を爆発的に上昇させているそうだ。
これは俺も気がついた。
『植物魔法』のおかげだろう。木々が元気になっているというか・・・活性化していることがわかったのだ。
そのせいだろう。動物達も明らかに元気だ。ハイテンション。
流石にこちらに襲い掛かってくるようなアホなことはしないが。
野生動物で一番大事なのは、危機を察知する能力だからな。それがないと生き残れないし。
まぁたまーにそこらへんの能力が鈍い子が襲い掛かってきそうになるんだけど・・・
「「グルルルル」」
うちの番狼と番虎さんの威嚇で文字通りしっぽを巻いて逃げていく。
なんか可哀そうに思えるくらいの逃げっぷりだった。
アマゾンとかこういう森だと、虫とかも気をつけないといけないんだけど。これも来ない。
「にゃー!」
「ぐぅぃ!」
「楽しそう」
「るる~♪」
精霊組がおらおらしてるからね。来ないってか来れない。
自然そのものと言える精霊。だからだろう、逆らうと大変なことになる。
それが本能的にわかるのだろう。正直コロちゃん達より周囲を威圧してると言える。
ちなみにだけど、うちの子達で虫に刺されるような子はいない。
普通の蛇に噛まれても血も出ないとかそういうレベルの防御力だからなぁ俺達。
逆に虫の針が折れるわ。てか折れたんだよ。前に蜂で試したら。正直すまんかった。
そんな感じで、唯々あっつい状態で森を進むこと既に3時間以上。
目的地まではもう少しだ。
本当はヘリで行きたかったんけど、危険だしな。
これから会いに行く存在が、そういうの嫌いだった場合撃墜間違いなしだし。
・・・温厚そうではあるんだけどな。
「ニホリーおんぶするー?」
「うー!」
「いやー・・・あんまりにも暇だから」
「う!?」
やさしさじゃないのって・・・あなた飛んでたから疲れてないでしょ。
ニホリが背中に張り付いたのを確認して、地面から蔓を生やしてニホリを捕獲。そのまま肩車に移行。
「・・・う?」
「ついでに上見といて」
「うー!」(ビシ
皆も流石に同じ風景が続いてるから飽きているな。
フミとポヨネは流石に警戒の方に集中してるからそういうのはないみたいだけど。
ハクコちゃんなんかは神力を俺に替わって追ってるからめっちゃ集中している。
他の子?・・・察せ。
「・・・なんや、不気味やな」
「はい。こんなにも活力にあふれてるのに・・・何もいません」
「うん?・・・ああ、本当だ。何もいないな」
「う?」
「動物が生きるのに適しているのに、何もいないんだよこの辺」
これは鱗を見つけた時もあった現象だ。
周囲に生き物がいない。その場から動けない植物しかないのだ。
偶に見かけていた動物も、最後に見たのは・・・そうか、1時間前か。
虫はもう少し見ていたが・・・それもいなくなってるな。
いかんいかん。俺が飽きて集中出来てない。
「ハクコちゃん。近い?」
「ガウ」
「う?」
「なんじゃそりゃ?」
「ガウ~」
近いかもとのこと。どういうことだ?
俺と違ってハクコちゃんは神力を辿れる。俺と違ってだ。
俺はこの神力の大きさや濃さはわからない。それがどこにあるかはわからない。空気中に漂ってるなぁくらいのことしかわからない。
ハクコちゃんはそのあたりが完全にわかる。だからどこが発生源かちゃんとわかる・・・はずなのだが。
そのハクコちゃんが、言い切ることが出来ない。
これは、俺達が探している対象が隠れているということだろうか。
「じゃあ実はもう見かけてるのか?」
「グゥ」(フルフル
「見てない?じゃあどういう・・・?」
「・・・ガウ」
「はい?下?」
下を探してくれと言われた。
どうにもハクコちゃん的には、このあたりと言う事までしかわからないみたいだ。
だけど、神力自体は下から出ているとのこと。
まぁそれなら俺がやった方が速いな。
下ってことは・・・地面ってことだからな。
「ニホリちょいと降りて」
「うー」
「サンクス・・・よい、やるか」
少しだけ『真化』を発動させる。
神力自体は『ガイア』では察知できないが、何かが要ればわかる。
それも、全く動物のいないこのあたりなら、何か生き物がいればそれが俺たちの目的の存在だろう。
地に手を付けて、集中する。
魔力を地面に浸透させ、広げていく感じで・・・は?
「な・・・なにこれ」
「お?もういたんか?」
「・・・いたってか・・・いや、これって」
「うー?」
「恭輔ー?」
「・・・ガウ?・・・ガ!?」
・・・やばい・・・俺達、上にいるのか。
その瞬間、大地が大きく揺れ始めた。
経っていられないほどの揺れだ。
急いで飛行する。
他の子達も、ニホリとポヨネの咄嗟の判断で無事だ。
ニホリが全員浮かせて、ポヨネの結界の上に立った。
「んな!?・・・なんやこれ!?」
「ぴぴー!!」
「違う。地震じゃない!動いてるんだ」
「は?・・・まさか」
「・・・うー!!」
「危ない!!」
ポヨネが結界を操作して、高速で移動する。
俺達が先ほどまで立っていた場所が、いきなり上に上がってきたのだ。
そこだけではない。広い範囲で、地面が持ち上がっている。
まるで、地面の中にあるものが、急に地中から飛び出してこようとしているようだ。
いや・・・そうなんだ。まさにその通りなのだ。
「・・・これ、は・・・想定外」
「いや・・・こんなんありなんか」
「うー・・・」
「・・・これあれですね。映画の怪獣ですね」
それを無理やり動物で例えるのなら、亀だ。
背に大地を背負っている。
そして何より、神力の強弱がわからないはずの俺が視認できるほどの神力を持っていると言うこと。
ハクコちゃんが黄煙鎧を纏う時に出てくる煙・・・あれの茶色のが、体の周囲を覆っているのだ。
「ポヨネ。移動してくれ」
「ど、どちらに?」
「・・・あっちだな」
「ガウ」
神力の一番濃い方・・・恐らくそちらが顔だ。
結界の船が、大きな体を迂回しながら進む。
顔に辿り着くだけで、5分ほどかかった。自動車くらいの速度は出てると思うんだがなこれ。
顔らしき所までたどり着いた。
「・・・うわぁ」
「ガウ・・・」
鱗を見た時も思ったが・・・これは勝てない。
サイズが違いすぎて、俺達ではどうやって決定打を与えればいいかわからない。
そして・・・俺との相性が最悪だ。
こいつ、よりにもよって俺と同じものを司っている。
そして俺たちは、再び驚愕することになる。
『・・・ほぉほぉほぉ・・・ようやく来てくれたの~』
「・・・?」
「・・・?」
「・・・?」
「・・・?」
『・・・おや?』
「「「「・・・・・・シャベッタァァァァァァァァ」」」」
『いやそら喋るわい」
この亀喋りおる・・・あ、未来のハクコちゃん達も喋ってたわ。
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