431話
定期的にロボットゲームをしたくなる衝動が来て何するか悩んで一日が終わるって言う。
「ちゅー!」
「お?どったのねっさん」
家に帰って来た途端にねっさんが出迎えてきた。
何か咥えてるけど?
それって・・・
「『悪魔化』のスキルスクロールじゃんか、良く見つけたな」
「ちゅっちゅ・・・ちゅ!」
「そうかそうか・・・は?使いたい?」
「ちゅ!」
「・・・うーん」
「ちゅ?」
ねっさんは割とあっさり許可が出ると思っていたようだが・・・そうしたいんだけどね?
俺にも俺の考え・・・というか、勘なんだけど、それが違うと言っているのだ。
元々、『悪魔化』に関しては慎重になっていたというのもある。
そして、使うのなら俺かバトちゃんだろうと。
今は俺と言う選択肢はないけど。まぁ色々ある。
んで、肝心のねっさんが使うのは・・・どうなんだろうな。
正直バトちゃん以上に効果があるとは思えない。
「ちゅ?」
「ああいやな?俺一応ニホリにそれに関しては内容を聞いてたのよ」
「ちゅー!」
「うん。ねっさん、それ使うと純粋に強くなるって思ってるでしょ」
「ちゅ」
「違うんだよね」
「・・・ちゅ?」
「いやまぁ・・・確かに体力とかは上がるよ?純粋に強い種族に変わるって意味なら」
どうにも、これは『妖怪化』にも言える話だったらしい。
ああいう種族変化形スキルは、使用者自身の影響を強く受ける。
ふーちゃんが使った時は、ふーちゃんが狐であること、そして火の魔法をスキルで持っていたことから、種族的には『妖狐』と言う種族になった。
何を持ってても『妖狐』になるんじゃないのかと思われるが、そうでもないらしい。
「変なのもってると狐ですらなくなるんだってさ」
「ちゅ!?」
まぁそういうことらしい。
実際に見たことあるわけじゃないから何になるかまでは知らないそうだが。
ここで俺の勘の説明ができる。
俺かバトちゃんと思ってた理由は、俺達に使った場合の種族の想像が付くからだ。
バトちゃんなら風の魔法に使ってないけど吸血とか。
これなら、悪魔かどうか微妙なところだけど吸血鬼っぽくなるんじゃないかと思われる。
俺は吸血鬼自体を良く知らないから悪魔扱いでいいのかわからないけど、ゲームによっては悪魔とする場合もあるし、あながち間違ってないと思う。
俺の場合は・・・恐らく『悪魔』っていう、なんともそのままな種族になるんだとか。
これはスキルうんぬんよりは、人間であると言うことが大きいらしい。
『魔人』とも言えるそうだ。なんか強そうだなと心惹かれたのは内緒の話だけど。
「んでな?ねっさんに使ったら何になるって話よ」
「・・・ちゅ?」
「いやいると思うけど・・・調べっか」
ネズミの悪魔って何かいるのか・・・?
「・・・おお、お前神様の乗り物になるのか」
「ちゅー?」
「・・・いやこれになるとは・・・てか、思ったよりいないのな」
なんか悪魔とかそういう系の話して、なんでもかんでも動物のモチーフの話あるからもっとあると思ってたけど。
「てか、こうやってみるとネズミ自体が結構やばいよな」
「ちゅー!」
「自慢げ」
農作物に対して、古代から人間の頭を悩ませていたって感じ。
それに、ネズミに悪魔が化けて悪さをーとか、悪神がネズミを作ったとか、そういうエピソードはどこの国にでもあるんだな。
・・・でもやっぱりネズミ自体がって話は見つからないな。
殺気も言ったけど、乗り物にはなってるな。インド神話の。しかもガネーシャのなんだよな。
ここだけ見ると強さそうだな。
だけどまぁ・・・
「・・・使わない方が良くね?」
「・・・ちゅー」
ねっさん自身もあんまりって感じだった。
なんかこう・・・使っても強くなりそうな感じの話はないよねっていう。
まぁ別に絶対に何かしらの悪魔がモチーフの何かになるってわけじゃないみたいだしなぁ。
スキルの影響もあるのなら、何か全く新しい何かになるって可能性もないわけじゃない。
「でもなぁ・・・」
「ちゅー」
膝の上で俺とおんなじ様に悩んでるねっさん。
そうだよなー何かになる確率が高いっていうのがあって、それが強いならいいんだけど・・・
想像もつかない。強いかもわからない。
でもワンチャンあるかもしれない・・・悩むよなぁ。
「まぁこんなわけで、俺はこいつを死蔵してたんですよ」
「ちゅ~・・・」
「うーん・・・でもまぁ、強くなりたいんだよな?」
「ちゅ!」
「あー・・・こういう時はあれだ、詳しそうな人に聞くのが一番だ」
「ちゅ?」
「ヨミ」
「ちゅー!」
「そんなわけで何かヒント寄こせ」
『いきなり電話掛けてきてそれですか・・・?」
「ちゅー!」
『あ、ねっちゃんこんにちわ』
「・・・ねっちゃん?」
『はい。可愛いでしょ?』
「は?ねっさんはそのままで可愛いんだが???」
『はいはい親バカ親バカ・・・それで、ねっさんがもっと強くなるにはどうするかでしたっけ?』
「イエス」
『・・・難しい事言いますね』
「ちゅ?」
『ああいや。出来ないわけじゃないですよ?ただ・・・』
「ただ?」
『ねっさんって、面倒なくらいに今の状態で完成度が高いんですよ』
「・・・お?」
「ちゅ?」
ヨミによると、ねっさんの種族はどう頑張っても能力が偏るらしい。
これはなんとなくわかってた。
てか、別にこれはねっさんに限った話でもないだろう。
まぁそれはともかく、ねっさんの完成度の話。
まず『分身』と『爆発』の相性が良すぎることがある。
本来自分の体力を消費して火力を上げる『爆発』
全力で使ってまうと、それだけで死んでしまう。そして、体力・・・HPって言ってもいいな、これが低いと死んでも大した効果が出ない。
だが、『分身』達なら死を恐れることはない。なにせ死んでも増える。
分身達がどれだけ消費されようが、ねっさんは魔力を減らすだけ。
そしてこの『爆発』なんだが・・・
『これ使うとどんな能力が伸びると思います?』
「は?・・・発動に使う魔力じゃないのか?」
『違います。正解は体力が増えます』
「はい?・・・あーそういうこと?」
『はい。体力が減ったという経験が、ねっさんに大きな影響を与えてたんです』
実際に鑑定して見た結果、体力の値だけおかしなことになっているそうだ。
『ぶっちゃけお姉様より上です』
「はぁ!?」
フミより上!?
「言いすぎじゃないのかそれ」
『私も見間違えたかと思いましたけど・・・よくよく考えると当たり前なんですよ』
「ほほう?」
ねっさんの出せる分身の最大数は、どんどん増えている。
戦闘では実際に最大数を出すってことはないが、それでも相当数が戦い爆発する。
それ以外でも、ダンジョン中を走り回って探索をしたりもする。
そして、その分身達の経験は、すべてねっさんに帰ってくる。
「・・・えぇ」
『ええまぁ・・・なんだこれとは思いましたけど』
「チートかなんかか」
『まぁでも向き不向きはあるみたいですけど、それに経験が全部来るわけでもないみたいですし』
「ほう」
『ねっさんの場合は、操作をある程度自動化してるので本当はほとんど入ってないんだと思いますよ?』
「ああ、そういうことか」
自分で操作する場合、分身の経験はちゃんと自分に来るが数が少ない。
ヨミでも完全に操作は2、3体が限界で、ちゃんと動かすのなら1体だけしか出来ないとのこと。
まぁ当たり前だわな。どんだけ頑張っても、生物は自分の体を動かすので精一杯だし。
ねっさんはその当たりの面倒な部分をオート化している。
共有するのは何かしら変な物を見た時くらい。他はある程度の志向性を持たせているだけで終わる。
だから経験は全部は来ない・・・それどころか、100分の1も入っていないのではとヨミは推測している。
では、何故ヨミを超える体力を手に入れているか。
簡単な話だな。物量のごり押しだよ。
「戦いは数だったか・・・」
『正直これでねっさんの防御面が強くなった日には手に負えませんよ?』
「数が多いのに一撃で倒せない。近寄られたら爆発する」
『そして数が尽きないと・・・なんですその無理ゲー』
「強いて言うなら、爆発が効かないタイプとか、耐えられちゃうタイプには弱いか?」
『まぁ分身達はねっちゃんの劣化コピーですから、体力的にはお姉様と比べると大分低いですし』
「・・・いやえぐいことに変わりねぇな」
『ええ全く・・・あれ、私結界張れなかったらボコられるなこれ』
ヨミの場合は大体そうだろ言いたいが。
「・・・ああ、だから完成度が高いと」
『ええ。そもそも爆発が効きにくい相手ってねっさんがする意味あります?』
「ないわ。コロちゃんとか俺でもいいし」
『はいまぁそういうことですよ・・・強くなる方法としてはまぁ数で押せとしか』
「なるほど、結果的に今までと変わらないからアドバイスではないと」
『現状維持でOK!っていうアドバイスがアリなら』
「いや、十分いい話だったわ」
『よっし!!!!』
今日の相談のお給料はニホリが練習で作ってるレアチーズケーキになります。
喜んでるのはそういうことです。
「まぁ今度来る時に言っとくわ」
『絶対ですよ!絶対にですからね!!!』
「わかってるよ」
「ちゅーちゅー!」
『アハァー!!いい事するのって楽しい~』(ブチ
「・・・うるさいなあいつ」
「ちゅ~」
まぁねっさんの方向性は決まったな。
「伸ばしたい能力関係の事を分身達にひたすらやらせる!!」
「ちゅ!!」
何か大変なことが起きそうな気がするけど、ここはあえて無視するぜ!!
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