429話
「・・・?」
「・・・何?」
「どうかしたん?」
「・・・変わった?」
「はい?」
「うちらが?」
「・・・」(コクリ
「いや・・・特に何も変わってないと思うんだけど」
「せやなぁ」
「・・・そう」
変な人型だ。
まだ冒険者研修・・・講習?いい加減統一したい・・・講習でいいか。
冒険者講習は続いている。
その中で、何かを察知したのか、人型が俺たちのいる警備室に来たのだ。
もちろんニホリお手製のお菓子を食べているが。
その中で聞かれた質問だが、何を感じ取ったのだろうか。
特に変化はないはずなんだが・・・しいて言うなら心象の変化はあっただろうが。
フミに全て打ち明けた分、心が軽くなった。
もちろんまだ問題がなくなったわけではないし、解決手段も見つかったわけではない。
でも、フミは一緒にいてくれると言ってくれた。
それだけで、俺は救われている。
少なくとも、何があっても諦めないって思えるくらいには。
まぁ俺たちの返事に納得してないのか。お菓子も食べずにまだ俺達を見ているが。
・・・そんなに変わった?
「変わった」
「マジか」
「えぇ・・・なんやろ」
「強くなった」
「・・・はい?」
「いやいやいや・・・うちら全く戦ってへんで?」
「知ってる。でも強い」
「???」
「全くわからんわ」
強く・・・?
本当にわからんな。
「てか、それ美味しいのか?」
「美味」
「うー」(ドヤ
「・・・俺も一つ」
「ダメ」
「う!」
「おおう」
「完全に専属シェフなっとるな」
「食材持ち込み」
「うちは料理屋か」
そしてニホリは何なんだ。
今美味そうに焼き菓子を食べているが。見たことない奴だぞこれ。
てか食材持ち込みって・・・ダンジョン内でお菓子用の食材作ってんのかこいつ!?
い、いや。まぁやりかねないか・・・
俺がやるよりダンジョン内なら早く質のいい食材を作ってそうだし。
そうなると、今こいつは地球上の誰よりも貴重なお菓子を馬鹿食いしているんだけど。
頬ぱんぱんだぞ。俺にくれないし。
「・・・オナカヘッタ」
「うー!」
「ワーイ!」
「」(ボクモー
「うっうー!」
「」(ワー
その豪快な食べっぷりを見て、アリシアとロラちゃんもお腹が減ったようで。
ニホリに催促すると、速攻で追加が出てくる。
「・・・今どっから取り出した?」
「家事関連でニホリにツッコんだらきりないで?」
「家でもあんな感じなのニホリさん・・・?」
「わりと。袖からはたき棒取り出したりするしな」
「どうなってんだ袖」
入らないだろそれは。
・・・そういえば、ロラちゃんいつからいたっけ。
「え・・・おお!?」
「うー?」
「いや、母さんに預けてきたはずなんだけど」
「う?・・・うー・・・う!?」
ニホリも少し間をおいて理解したようだ。
そう、ニホリは母さんに預けてきたはずなのだ。
そもそも今回の仕事は一応とはいえ戦闘前提。何か問題が起きた時の、冒険者制圧が目的だ。
だからこそ、戦えないロラちゃんは母さんに預けている・・・はずなんだけど。
え、マジなんでこいついるの。
「とりあえず母さんに・・・あ、メール来てた」
「なんやって?」
「・・・ロラちゃんが迷子なう」
「迷子どころか」
「うー」
・・・まぁまずは返事返すか。
写真撮って・・・俺の所なうと・・・あ、もう返事きた。
「いやならよかったじゃなねぇ」
「ここから研究所ってどれくらい離れてるんやっけ?」
「大体20キロ」
「うーん・・・うちらならまぁ大したことない距離やけど」
「ロラちゃんの足をの速さを加味しても・・・いや無理無理」
「ロラちゃん短距離速いだけやし」
「だよな・・・え、本当になんで?」
「」(コテン
目の前で体ごと首を傾げているかわいらしい生物は一体何なのでしょうか。
思えば、前から不思議な子ではあった。
なにせ女神から俺への手助けとして送られてきた子。
これは後日見かけたから送っただけとわかったのだが。
そして、寄生型精霊に始めて会った時。
ソフィアさんと言う、海外の冒険者を助けたあの時。
ロラちゃんは誰よりも先に走り出していた。まるで、何かに駆り立てられるように。
俺を連れて行き、あの場所にあった薬を飲ませて、何とかソフィアさんを治療できるまでにした。
あの時は、ロアちゃんは変な能力があるのかーくらいにしか思ってなかったが・・・
なんでロラちゃんは寄生型精霊を感知出来た?
いや、本当に感知か?あの感じは、どうにもそう言うのじゃない気がする。
あの場で何が起きるか、それを知っているかのような動きだった。
「ほぇーそんなんやったんか」
「ああ。なんか・・・上手く言えないけど」
「あれやな。恭輔みたいやな」
「はい?」
「恭輔が地球から知識を取った時に動くんはそんなんやん」
「まぁあれは・・・あ?」
・・・いやまさかそんな。
「ロラちゃんも・・・俺と一緒?」
「違う」
「だぁ!?」
「なんやぁ違うんかぁ」
「関係ない」
「ほーん・・・」
速攻で否定されましたとさちくしょう。
まぁこいつがそう言うんなら本当なんだろう。
なにせ女神がそうなのだ。違うならすぐにわかるだろう。
でも、関係ない?
「そういうってことは、何か知っとる?」
「知ってる」
「ほ?」
「マジ?」
「でも言えない」
モグモグしながら言うなと言いたいが。
言わないじゃなくて、言えないか。
「それはタイミングの問題か?」
「そう。これ以上はだめ」
「・・・もう聞くなと」
「ロラちゃんに聞いても・・・まぁダメやろうな」
「ダメだろうなぁ」
「」(ナニー
「なんでもないぞこのこの~」
「」(ナニスルノー
このもふぷにうさぎ、天然ぽわぽわちゃんだから聞いてもダメだろうな。
そもそも聞いたこと理解してるのかどうかも怪しいし。
・・・明らかに、人型はロラちゃんの事を知っているのはわかっていた。
なにせ前に、ワタシと同じと言ってきたくらいだ。
最初は女神に生み出された存在として一緒なのかと思ったが、そうではないようだし。
でも何かが一緒なんだ。スキルや能力に共通点はない。
ニホリの作った料理大好きってのはあるけど・・・それは別にロラちゃん限定じゃないしなぁ。
・・・えい
「」(ウワー
「・・・こいつマジで枕にぴったりなんだよな」
「あ!ずるいうちも!!」
「う!!」
「」(オモイー
「ほれほれ、重いってさ」
「じゃあこうするわ」(ポン
「う」(フワッ
「そこまでしてロラちゃんに抱き着きたいか」
「」(アツーイ
「・・・フフ」
ロラちゃんが恭輔とフミ、ニホリに抱き着かれている。
本人は暑がっているが、内心で嬉しいのだろう。
ジタバタともしないし、何より声が喜んでいる。
そんな光景を、人型は見ていた。
まるで、懐かしい物を見たかのような顔で。
「・・・ドシタノ?」
「・・・何でもない」
「ソウ・・・ア!コレオイシイ!アゲル!!」
「ありがとう。これもいい」
「ワーイ!!」
それを見ていたアリシアは、お菓子に集中して気がつかなかった。
人型が、どこかで見たような・・・誰かに似ている笑みを浮かべたことを
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