428話
苦戦からの一方的な勝利。
周りからはそう見えただろう。
実際問題、本人たちからしたらこの結果は当たり前なのだが。
「それでも悔しい!!」
「目的変わってね?」
「それとこれとは別問題よ!」
元の目的は、俺に対するおせっかいじゃなかったんかいこの姉・・・
いや、何なら丸山さんも藤岡さんも似たような顔してんな。
三崎さんは・・・ああ、苦笑いしてる。いつも通りだな。
2人の拘束を解除して、藤岡さんには肩を貸す。
丸山さんはまだお腹をさすっているが、もう動けるようだ。
とりあえず一旦休憩解散になった。
戦闘を見ていた人たちは、足早に建物内に戻っていく。
今見た戦闘に関して議論したいのだろう。
俺は俺で・・・聞きたことはあるな。
「んで、いつから気づいたの」
「んー・・・まぁ割と最近よ」
「ほとんど会ってなかっただろうに」
「そういうもんよ」
「・・・そういうもんかねぇ」
そういうことらしい。
俺が隠しているつもりで、実際フミにも親父にも隠し通せたいたが。
「・・・内容までわかってる感じ?」
「いやね。そこまでじゃないわよ。何かとんでもない事隠してんなこいつーくらいよ」
「恭輔君。こういう時の女の人は鋭いから気にしたら負けだぞ」
「はぁ・・・」
実際それが当たっているんだから何も言えない。
そして問題は。これがきっちりフミに伝わっていることだろう。
外に付けられたカメラを見る。
そうでなくたって、フミはスキルで遠い所の景色を見れるし、音も聞こえる。
俺達の会話は筒抜けだろう。
「・・・はぁ」
「・・・かなり深い問題みたいね」
「・・・隠し通すつもりだったよ」
「何かは聞かないけど、それ、フミさんが関わってるなら話した方がいいわよ」
「あ?」
「逆なのよ。いざって時にバレたら、女は後先考えずに動くわ。あ、これ経験談ね」
「・・・」
「巻き込みたくないとか、そういうのなら猶更ね」
何の気なしに言ってくれる。
「後はまぁ・・・あれね」
「あれ?」
「そういう隠し事してると、言いたいこと言えなくなるから・・・後悔するわよ」
「・・・それも、経験談?」
「さーてどうでしょーかね」
「そこ隠すのかよ」
「女はいいのよ。それに・・・」
「それに?」
「きっと、フミさんも気づいてるでしょうし」
「・・・はい?」
姉ちゃんたちとの戦闘の後、俺は家に帰された。
警備室にはコロちゃん達を置いてきている。
世話と部屋待機は姉ちゃんたちが順番に替わり替わりでやってくれるから、二人で話し合えと。
ニホリも施設に残っている。お二人でごゆっくりーだそうだ。
・・・気を使われているな。
そして今、フミと2人っきりで俺の部屋にいる。
割といつもの光景だが、やはり少し緊張する。
そんな俺だったが、フミの一言で緊張が吹っ飛ぶ。
「・・・まぁ何か隠されとるなぁくらいにはおもっとたけど」
「え」
「恭輔その部分に関しては・・・あー心に浮かばんように・・・考えんようにしとったやろ」
「そらまぁな」
「それが逆に変やったんよ。しかもなんか・・・うちに気を遣うかんじやったし」
「お前の心を読むのってそんなのも出来んのか・・・?」
「いやこれは恭輔限定や」
ずっと恭輔見とったらから、そういう小さな差にも気づけるようになっただけやし。
そうフミはまっすぐに俺を見つめて言う。
「じゃあなんで聞かなかったんだ?」
「うーん・・・それでうちの事好きっちゅうんがわかっとったからなぁ」
「・・・お?」
「大体人の心を見る時は何考えとるかわかるんけど、それでもやっぱりほとんど表面のことばっかりやん?」
「まぁそらそうだろ」
心は複雑だ。
一つの特定の感情だけしかない・・・ってことがない。
複数の気持ちがまじりあって、初めて心になる。
フミが読み取れるのは、その心の一番大きな部分。表面で取り繕えば、隠したいことは隠せる。
だから俺も隠せると思ったんだ。
その状態で隠し事・・・フミが近い未来で俺に殺されるってことを考えなければ、バレることはないと。
「あ、あとあれやな」
「どれだ」
「恭輔、うちにそれを知られるの怖がっとったやろ」
「・・・そんなこともわかるのか」
「恭輔限定やけどな!!」
「文字通り丸裸と・・・」
隠し事の出来ない関係・・・まぁ俺もフミが何か隠してればわかりそうだな。
それだけ、フミの事は見てるはずだ。フミも、それだけ俺の事を見ていると言うことなのだろう。
「やから、別に無理に聞こうとは思わんかったんよ。まぁお義姉さんにバラされたんやけど」
「思いっきり背中蹴られたな」
「あはは。いい人やん」
「・・・ちなみに、なんで俺が怖がってたかわかるか?」
「・・・うちが離れるかもしれへんから?」
「正解」
「そうかそうか・・・うふふ~」
「何がおかしいんだよ」
「いやぁ・・・愛されとるなぁうちって」
「そら!・・・まぁそうですけど」
「えへへ~」
怖がってたのは、フミが事実を知って離れること。
俺がフミを殺すのだ。回避する一番の方法は、フミが俺から離れること。
あの洞窟に戻って籠れば、俺に関わることはなくなる。
・・・それが、嫌だった。
なんだかんだ言うが、それが一番大きい。
「ま!そんなわけやから!言わんでもええで!絶対に離れんし、どっか行く気もないしな!!」
「・・・いや、話すよ」
「ええんか?」
「うん。まぁそれで嫌われたら・・・ああうん凹むなぁ」
俺その場で自害しそうです。
フミに、全部話した。
未来のハクコちゃんとフィニちゃんが俺の元に来たこと。
その場で告げられたこと、そして未来の俺に呼ばれて伝えられた事実から、俺がフミを殺すことがほぼ確定になっていること。
・・・現時点で、未来を変える方法がほぼない事。
「ほほーやから最近ハクコちゃんの神力?なんか使えるようにしとったと」
「まぁそういうこと・・・」
「離れるんわ・・・それが一番確実やから」
「そう」
「・・・まぁ聞いてもうちの心は変わらんわ。頼まれたって離れたりせぇへんわ」
「・・・いいのか?」
「てか恭輔。自分めちゃくちゃ言うとるんのわかっとる?」
「・・・一応」
フミに離れてほしくない。
でも、それ以上に死んでほしくない。だから、俺からは離れてほしい。
だけど・・・一緒にいてほしい。
「そこまで思われてとるんやもん。どこも行かへんし、嫌いにもならんわ」
むしろ、今までより好きになったわ
「とう!」
「・・・もふい」
フミが狸モードになる。
体を俺に預けながら、尻尾が軽く顔に当たる。
「せやろ?これも恭輔の為に地味に毛並み変えとるんやで?」
「そうなのか?・・・ああ、確かに最初より硬めかも」
「恭輔ただ柔らかいのよりちょっと手ごたえ欲しがるんやもんなぁ」
「喋ったことあったっけ?」
「いんや。恭輔はそのままの皆が好きやからなぁ・・・でも」
「でも?」
「うちも恭輔が好きやから。あ、皆の好きとはちゃうで。loveやlove」
「・・・」
「せやから、一番好きになってもらえるように努力したんや・・・どう?」
「・・・ああ、俺も好きだ」
「一番?」
「愛してるって意味なら、ずっと一番だったよ」
「ほんまにー?」
うりうりと俺の頬をフミの手が押す。
ぷにぷにの肉球だ。沈み込むような感じだが・・・
「・・・俺は、もう少し反発する方が好きかな?」
「お、そうなんか・・・これでどうや!」
「おお!これこれ!!」
「えへへー・・・あれ、これコロちゃんのに似とるな」
「コロちゃんはもっと全体的に硬いぞ」
「ほほー・・・コロちゃんも完璧やないんやなぁ」
「そらな」
さわり心地って意味ならすらっぴ。
遊んでて楽しいのはバトちゃん。
小動物的な可愛さならねっさん。
毛先の綺麗さならふーちゃん。
幻想的な美しさならピッちゃん。
埋もれるのならしーちゃん。
力強さ、そして成長を見る楽しさならユニちゃん。
「それぞれ特徴は大きいしな」
「はぁーホンマ恭輔はよう見とるわ。他の子は?」
「ハクコちゃんとかルミネは・・・これからもっと見つけるから何とも」
「お、やったらうちと一緒に見ようや」
「うん?」
「うちらで、皆の一番見るんよ!もちろんこれから家族は増えるやろうから、もっとずっと!!」
「・・・ああ、そうだな」
未来は、まだ変えられるって話だった。
じゃあ諦めるのにはまだ早い。まだまだ、出来ることはあるはずだ。
未来の俺も、今の俺も。まだ止まってられない。
この先も、一緒に見るんだ。
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