426話
アメイヤダー
カメラの先は広い講堂。
そこでは多くの冒険者達が集まっている。
今は休憩時間で、各々自由に話し合っている。
内容は先ほど見た映像について。
映像の内容は、俺が戦っている映像だ。相手はワイバーン。
他の国ではまだほとんど越えられていない階層のボス。
強力なそのボスを、俺が容易く屠った時と解説しながら戦った時の2パターン。
片方は本当に解説してるのだ。
具体的にどういう攻撃をしてくるか。攻撃事の対処法。
そしてどうすれば比較的簡単に倒せるかを、スキル抜きで解説している。
問題はもう片方の映像・・・。
先ほども言ったが、殆どの国の冒険者はまだ20層を越えられていない。
挑んだ国はいくつかあるが、そのほとんどが失敗しているそうだ。
成功したのは僅か3国。
そのワイバーンを、一方的に殺した俺と言う存在について語り合っている・・・ということだ。
「魔法抜きはやりすぎじゃ・・・」
「えぇ?大したこと無いで?」
「うーうー」
「ウンウン」
「まぁ俺基準ですけど」
三崎さんの言い分はもっともだ。
スキルが合っても苦戦するのが普通のワイバーン。
それを素手で殴り殺した俺と言う存在は・・・まぁ異常だ。
まぁスキルなしはあれにしても、やろうと思えば誰でも一方的に倒せるのだ。
それに、筋力あるから丸山さんあたりなら素手で倒せる。
「えぇ!?」
「映像通りやればまぁいけますよ」
「それに1人じゃなくてもええしな」
映像の俺は、飛んでいるワイバーンに対しては基本何もしていない。
精々近くに来た時に石を投げるくらいだ。
だから、狙うのは突進してきたとき。口を大きく開いて噛みついてくるその瞬間が、一番のねらい目だ。
「まぁ素手はあれですけど、槍とか持ってればいいんですよ」
「いや、槍持っても変わらないんじゃ?」
「そんなこと無いですよ。口に槍ぶち込めばいいんですし」
「・・・いや出来ませんよ!?」
「そこは度胸で」
流石に真正面から受け止めるのは出来ないだろうから、槍を突き出してすれ違うように回避する必要はあるだろうが。
ちなみに俺は顎を掴んで口を閉じさせないように正面から受け止め、そのまま顎を破壊。そして頭蓋事砕いている。
三崎さんの反応が、まんまいま講堂で俺の映像を見た人たちの反応と同じだ。
いや、もっと驚いているかな?
元々俺の集めたデータは見てる人達だから、日本に強い冒険者がいるのは知っていた。
だが、これほどまでとは思わなかったのだろう。
中には顔を青くしている連中もいるくらいだ。まぁそういうのは何かしらよからぬことでも考えているんでしょ。
む、この気配は。
「お疲れ様です」
「お疲れ様ーです」
「うーうー!」
「ドウゾー!」
「あら。ありがとう2人とも」
先ほどまで講堂で話していた藤岡さんが部屋に来た。
どうやら次は違う人の担当らしい。
なにやらうんざりと言った表情をしているが・・・?
「何かありました?」
「いや。恭輔君の事で少々」
「あー」
「何すかその反応」
「いやぁ・・・一杯聞かれるんだろうなって」
「???」
何を聞かれると言うのだろうか・・・?
「彼はどんな人物ですかとか、どうやって彼は強くなったのかとか、そんなところですかね」
「はい?そんなの藤岡さん達に聞いてもしゃーないじゃないですか」
「誰も恭輔君が私たちより早くダンジョンに潜り始めているなんて知りませんから」
「同期くらいには思われてるですよきっと。それで、なら少しは知ってるだろうって」
「あー」
「う?」
「んー・・・それでも2日3日くらいの差かな?」
「・・・う?」
「いや、恭輔君の場合は潜っている時間もありますし」
「うーうー」(ウンウン
いずれにせよ聞いても意味ないんだけど。
でも理解は出来る。同じ国で、それも最初期から潜っていると推測される人物。
ならば、普通は軍人とかって思うよな。だから日本の自衛隊にいた藤岡さん達に俺の事を聞いた。
だが俺の場合はそれではわからない。
そもそも最初期はずっと内緒でも潜ってたし・・・ああ、懐かしいな。
まだフミはおろかニホリもいなかった。てか、ふーちゃんもいなかったな。
コロちゃんすらっぴばとちゃんだけでなぁ・・・コロちゃんはあのことから強かった。
「コロちゃん強くなかった時期あるんか?」
「・・・ないな」
「せやろな」
「モフモフ!!」
「バン君とかみーちゃんももふいでしょ?」
「・・・コロチャンガイチバン!!」
「そら当然」
コロちゃんだもの。
「なんでそうなるの?」
「ほら、実際に見るのって大事でしょ!!」
「そういうことさ恭輔君!!」
「あはは・・・すいません本当に・・・」
「一度手合わせはしてみたかったんですよね」
「ほほ?俺に味方はいないな?」
俺の目の前にはやる気満々で構える元自衛隊冒険者チーム。
さて、なんでこうなったか。
事の発端は、休憩明けの講義・・・姉ちゃんの担当時間にまでさかのぼる。
この時、姉ちゃんが話してたのは自分達の能力の上昇について。
苦戦すればするほど、自分にとって良い経験を積めば積むほどレベルが上がった際の能力の上昇は大きくなる。
これに関しては冒険者の常識・・・ここに来るくらいの人なら誰でも知っていることだ。
では、どうすればその経験を積めるか。
これに関しては、国ごとで個性が出てくる。
単純に強いモンスターと戦うのを優先する国。
戦いづらいモンスターを選んで戦う国など様々。
姉ちゃんは日本の場合を紹介している。
まぁ基本はやっぱり強くて苦戦するモンスターを選ぶのが基本なんだが・・・
日本では同じ冒険者同士でも戦うのだ。
それが結構いい経験として能力に反映されるのだ。
これに関しては、質問も飛んできた。
まず、モンスターを倒す・・・殺すことで経験値を得られているのではないかと。
この経験値を得られないと、どれだけ訓練しても意味がないんじゃないかと。
これに関しては、違うと断言できる。
経験値を得られなくても、経験をすればそれは能力の上昇に反映される。
そのあたりをまとめたデータもちゃんと公開してるんだけど、まぁそう言うこともあるだろう。
問題はだ、日本の冒険者・・・特に俺と自衛隊チームのメンバーの強さだ。
彼らはそのレベルになるまでにどれほどの経験を積んだのだってことだ。
ここで、俺は例外とする。俺の場合は単純に戦ってる時間が長い。
じゃあ藤岡さん達は何をしたか。
思い出してみよう。藤岡さん達が戦った中で、一番強いのは?
・・・フミだ。
そう、藤岡さん達はフミと数回戦っている。
これが、驚くほどに大きい。
だが、これは教えられない。
いくら俺と言う存在がいるとはいえ、フミ。そしてヨミの存在はマズイ。
だから代わりに、俺と戦ったと言うことにしたのだ、姉ちゃんが。
そこから何故か実際に見た方が速いと抜かし始めた姉のせいで戦うことに・・・
「いや本当になんで・・・」
フミもニホリも部屋に置いてきた。
一応部屋の中にはポヨネ達もいるし、何があっても大丈夫にはなっている。
けどね?折角快適な部屋でぼーっと画面眺めるだけのお仕事だと思ったのにこれですよ?
俺のやる気がそがれる。
フミもいないし。なんならコロちゃん達もいない。
てかさ、俺の紹介内容ひどくない?
何ダンジョンで何時間もぶっ続けで戦えるスタミナお化けって・・・いや戦えますけど。
その際に、俺のスキルも一部だけ公開された。
魔法2種持ち時点で驚かれたけど。まぁこれは姉ちゃんたちのスキルに関しても公開されたからいいか。
・・・いやなんもよくねぇな。
「面倒な・・・」
「ほら、さっさと構える!!」
「へいへい・・・」
こうなっては何言っても聞かないだろう・・・あれ、なんかデジャブ。
構える・・・と言ってもなぁ、何か普通に構えるのはあれだな。癪だな。
・・・そうだ。こうするか。
ズボンのポケットに手をつっこんだまま構える。
「お?」
「これは・・・」
「ははーん・・・舐めてる?」
「姉ちゃん1人の時は余裕だったからな~」
「うわぁ。恭輔君の笑顔が怖い・・・」
「ハッハッハ・・・ぶっ飛ばす!!」
「やってみなアホ姉!!」
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