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423話

マタ、ヨヤクワスレタ

恭輔が寝た深夜・・・

コロちゃんはこっそりと寝床を抜け出し、同じように部屋にいないある子の元に向かった。


庭に出ると、そこには白い虎が、月を見上げている。

周囲には、煙が漂っている。

黄色の煙ではなく、赤い煙が。


「・・・ワン」

「ガウ?」

「ワフ」

「・・・」(フルフル


その煙は、固定化させることなくハクコちゃんの周囲を漂っている。

何度か固まろうかという動きはあるのだが、失敗して霧散する。


ハクコちゃんは、こうして夜な夜な神力の煙のコントロールをしているのだ。

それも、皆に内緒で。

気がついているのはコロちゃんだけ。恭輔は知らない。


そして、知ってはいるが普段はこの時間には庭に出ないコロちゃんが、今日ここに来たのにはわけがある。


「ワン」

「・・ウウ?」

「・・・」(コクリ

「・・・ガウ」


煙がコロちゃんも包む。それを確認して、コロちゃんはその場に座る。


・・・恭輔は出来た、自分は出来なかった。

それではダメだ。足りなくなる時が必ず来る。


故にコロちゃんは、そうするのだ。












「おはよー・・・ああ、やっぱりここにいたか」

「がうがうzzz」

「わうーzzz」

「どこで寝てんだこいつら・・・」


何故か部屋でなく一階のリビングで寝ていたコロちゃんとハクコちゃんにタオルケットを掛ける。

お互いに体を寄せ合ってるから寒くはないだろうけど、それでも一応ね。


てか、寝言呟いてんだけど・・・何、煙いって。


「うー?」

「いや。まだ寝てるからいいよ。後で俺があげる」

「うーうー」


ニホリが朝ごはんが出来たぞと来たが、まぁ寝てるからな。

後で俺が用意してあげればいいでしょ。


さてさて俺もご飯・・・お?


「どったのルミネ」

「わん!」(ブンブン

「ハイテンションだなぁ・・・よっと」

「・・・わふ?」

「ニホリー今日のご飯なにー」

「うー!」

「目玉焼きかー」

「・・・くーん」


はて、ルミネは何を言いたかったのか。

疲れてる!って・・・何のこと?


「って、フミは?」

「う?うーうー」

「ヨミの所?珍しいな・・・」

「う」

「ああ、ユニちゃんの角か」


長い方の加工が終わったから、フミが取りに行ったらしい。

長い奴は耐久力そのままで長いから、槍の穂先以外にも使えるだろうということで研究所的にも注目の素材だ。

魔法の威力を上げたりするのはまだ研究段階だから作れないけどな。

そもそも普通のサイズで出来ないと意味ないし。


フミが取りに行ったのは、それが一番速いからだ。

周りに見られることなく最速で一直線に雪ちゃんの家まで跳んでいける。

俺が言ってもよかったんだけど、フミがついでに貰う物があるとかでフミが行くことになったのだ。

まぁそろそろ帰ってくるだろうけど・・・お、噂をすれば帰って来たな。


「ただいまー!!」

「おかえりフミ」

「恭輔~!!」

「おおん・・・」


返って来て早々に飛びつかれたんだが。

なんだなんだ、何でフミまでハイテンションなのさ。


「なーいしょ」

「はいはい」

「運んで?」

「いやいいけど・・・」


抱き着いてきたフミを持ち変えて・・・まぁお姫様抱っこですよ。

すぐそばのテーブルまで運ぶ。

既にニホリによってテーブルに朝食は並べられている。

親父と母さんは既に出てるから、俺達だけだ。


他の皆のご飯・・・起きてるこの分は各自で出来る限り準備してある。

俺もフミを椅子に下してっと・・・


「ういうい。皆準備出来た?」

「うー」

「ぴー!・・・ぴ?」

「お寝坊さんだから後で」

「ぴぴ」

「じゃあ・・・いただきまーす」


全員でいただきますの大合唱。

・・・うーん平和。




















『・・・ワン』

『うん?何してるって?準備だよ準備。後腐れは無いようにしておかないとな』

『・・・』

『わかってるよ。あいつらはあいつらの意思に任せるさ・・・お前も、自由にしていいんだぞ?』

『ワン』

『・・・ハハ。ありがとうなコロ』


未来のいつかの時間。

彼らはそこにいる。


自分の経験した過去を、自分の未来にしないために。


共にあると誓った獣は、どこまでも彼の為にと。


彼らの世界は荒廃していた。

大きな厄災があった。生き残った人間は少数。

彼らも大事な物を失った。失いすぎた。だからこそ、諦めた。諦めていた。


だけど、希望はあった。

自分の家族が、己の存在を懸けた希望が。

自分の子供の友であった存在が、自分を失ってでも伝えた希望が。


『・・・本当に知らないなら、出会ってないなら、名前は空白なんだよ』

『ワン』

『でもさ、黒く潰されてたんだよ・・・上から、そこにあった名前を消したんだ』

『ワン・・・』

『それはきっと、あいつらにとっては・・・それでもって思ったから』

『・・・』

『ならさ、もう止まってらんないよな』


俺の家族が、そこで待ってる。


『だからお前も・・・止まってる暇なんてないぞ・・・恭輔』


今度は、間違えない。

今度こそ、守って見せる。


自分のすべてをかけて。

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