419話
「神力は、何にでもなれるけど。私たちはそれをなんにでもにはできないの」
「・・・それやと結局何もできへんって言ってるみたいなもんやん」
「そうね。当然例外はあるの」
「それが恭輔?」
「というか、実はそこは偶々条件が重なった結果なの」
「お?どういうこと?」
ニホリに誘われたという女神と人型。
とりあえず先にご飯をみんなで食べて、その後で話すことに。
だってご飯出来てるのに行かないとニホリの機嫌が大変なことに・・・
そして、みんなで食べ終わった今、再び俺の部屋で話を再開する。
「この子のみたいに、生まれ持って神力を持った子達は、その力の使い方が固定されるの」
「黄煙鎧のことか」
「そう。でもね、それは生まれてからこの子がそれが必要だと思ったからなの」
「・・・鎧が?」
「自分の身を守るためね」
「・・・そういうことか」
研究所で受けていた実験。それから身を守るために、自分を覆う鎧を生み出すようになったと。
「神力はね、心に強く思ったことを力として現象化する。だから、自由自在ってわけではないの」
「強い思い・・・それは確かに自由には出来ないわな」
「理論上可能ってだけなのか」
「そう・・・私の力に関しては、もうわかってるわね」
「ああ、神力を模造した力・・・それも、完成度はかなり高い」
「高い・・・のかしらね」
「うん?」
珍しく自信がなさそうだ。目を伏せ、声色も低い。
「・・・まぁいいわ。ともかく、私はあなたが神力と呼んでいる力を模造した物を使っているの」
「実際、それって何が出来て何が出来ないんだ?」
「かなり違うわ。出来ることは一つだけだし」
「一つ・・・?」
「ダンジョンに関することだけ・・・そういう風に固定化することでようやく使えるようにしたの」
「なるほど、神力自体が固定の形を持たないから、その部分を放置すると駄目なのか」
「ええ。むしろ神力に関してはそこが一番厄介と言ってもいいのだわ」
確かにそうだろう。
それだけで力の形と方向性を自由に変えられるのだ。
厄介ってか、強すぎるのだ。
ハクコちゃんは鎧の形にしていたが、やろうと思えば火にも雷にもできる。
その自由度の高さは、戦闘に置いては魅力的だし、戦いじゃなくなって、多様性の高さは有用すぎる。
「だけど、使用には条件があると」
「そう。それもかなり強く思わないと形にならないの」
「・・・でもそれだと、なんで俺はハクコちゃんの鎧を模倣出来たんだ?」
「ハクコちゃんが出した神力やからやないん?」
「違うのだわ。仮に他の生き物が神力を出しても、今のあなたが出来るのは鎧を作るだけよ」
「俺がよく見てたから?」
「いいえ。つながりがあるからよ」
「繋がり・・・『テイム』?」
「正解。その繋がりがあるから、神力を形に出来たの」
なるほどそういうことか。
だから俺は剣の形には出来なかったと。
ハクコちゃんが神力を持ち、出来ることのみ。
それが俺の神力で出来ることなのか。
これは恐らく、俺自身が神力を使って何かの形や力にしようと強く思っていないからだろう。
だから剣には出来なかったし、当然それ以外も出来ない。
「ハクコちゃん知ってたの?」
「ガ~」
「多分直観的にわかったのだと思うわ。『天啓』もあるしね」
「うわ、やっぱり『天啓』ってずるいわ」
「・・・じゃあなんで俺は暴走した時は何でも出来たんだ?」
「あ、それもそやな」
「・・・地球の力って、そもそもなんだと思う?」
「は?」
地球の力・・・?
普通に考えれば魔力だけど、そう言うことではないのだろう。
神力は地球にはないっていうのが俺達の考えだし、そもそもこの女神の聞いていることは何かそう言うことではない気がする。
・・・とは言っても、力と言われてもなぁ。
「貴方はもう片りんには触れているの」
「・・・知識?」
「記録とも呼べるわね。地球は、自身の上で起きた出来事全てを記録している」
「・・・そういうことか」
俺は『土魔法』をきっかけに地球とのつながりを持った。
そしてその繋がりは、今までは知識の流入現象として、俺に影響を与えていた。
それが、あの時は違った。
「俺が神力を使う時に、地球の記録がサポートしてたと」
「そう。繋がりがあって、どんな力だったのかもわかってる。なら、それと繋がっている貴方がいろんなことが出来てもおかしくないでしょう?」
「おかしくないどころか、そうじゃなきゃ説明つかないわな・・・」
「・・・俺が使った神力は誰のだ」
「恭輔?」
「・・・違和感は合ったのね」
「ああ、明らかにハクコちゃんのじゃないし、地球はやっぱり持ってない」
「正解。そして私でもないわ」
「そもそもそういう風に使えないから」
「そう・・・私も調べたの。色々ね」
「色々?」
「私だって、全部知ってるわけじゃないのよ?」
「まぁそれは知ってるけど・・・」
確か俺の暴走の事も隠し事はしたけど、本当に知らないこともあったみたいだったし・・・
「私も気がつかなかったのだけれど・・・神力を持っている何かが既に何体かいるの」
「外にな」
「ええ。本当に驚いたのだわ・・・そんなポンポン出てくる物じゃないのよ?」
「わかってるよ」
「現時点で、貴方に干渉できるくらい強い力を持つ個体は2匹」
「海のと山の?」
「そこまでわかってるのね」
「場所だけは知識で来たしな」
「本当にそれずるいわ」
「そう言われてもなぁ・・・」
「自由自在ってわけじゃないから、許してほしいのだわ」
フミが不貞腐れたように頬を膨らませている。
確かに、重要な情報とか、知りたい事とかをあっという間に無条件で知れるのはやばい。
だけどそもそもそれを自由に扱えないし、知識が来るタイミングも俺の意思に関係なし。
女神もそうみたいだし・・・俺よりは全然扱えてるらしいが、それでも完璧にではないんだろうな。
「てか、恭輔に干渉ておかしいやろ」
「あら、どうしてかしら?」
「やって、恭輔の強さで考えるならうちくらいは最低限やろ」
「そうね。あなたより強いわ」
「は?」
「ああ、フミ。それマジだぞ」
「・・・え、ホンマなん?」
「まじまじ」
「大マジなのだわ」
「・・・神力ずるない?」
「わかるのだわ!!」
「おお!?」
「人の苦労も知らないであっという間にこっちを超えてくるんだもの!!そのくせ肝心な時に役に立たないし!!!」
「どうどう」
フミの言葉が女神の何かに触れたようだ。
急にフミの手を取って早口で愚痴り始めた。どんだけストレスになってたんだ神力。
てか、前に神力持ちの知り合いでもいたのかこいつ。
その後しばらくフミと俺に愚痴り続け、満足するまで1時間以上かかった。
すべて言い切った後、自分の状態に気がついたらしく狼狽しながら戻った。
「ご、ごごご。ごめんなさいね」
「ああうん。ええですわはい・・・」
「ストレス溜まってんなあんた」
「そんな目で見ないで欲しいのだわ!?」
話を戻そう。
「えっふん!!・・・それで、貴方に干渉してきた神力持ちなのだけれど」
「そのまま続けるんやな」
「フミしー」
「ん”ん”!!・・・正確には、地球を経由してあなたに干渉してきたっていうのが正解なの」
「地球を?」
「ええ、貴方みたいに繋がっている存在が、貴方を見つけて力を貸したの」
「・・・貸したって」
「直接会って聞いてきたのだわ。何が目的かも」
「それは教えては・・・」
「あげないわ。聞いた感じ、確かに貴方自身が彼らを見つけることに意味があるの」
「はーやっぱりか」
「それに・・・貴方の未来のこともあるわ」
「ッ・・・どこまで知ってる」
「貴方から、ある才能を引き抜いたのはわかってたの。それの原因も」
「・・・フミ、悪いけど2人にさせてくれ」
「む、うちが聞いたらあかんのか?」
「いけなくはないのだけれどね。多分、恭輔君的には聞かせたくない事だとは思うわ」
「頼む」
「・・・はぁ。わかったわ。でも、絶対いつか話してもらうで」
「ああ・・・」
フミは、部屋を出ていった。
・・・聞かせたくないってのは、フミに関することだから。
「・・・俺は、近い将来でフミを殺すな?」
「あら?わかってたの?」
「なんとなく・・・だけど。俺自身の意思じゃないにしても、多分俺のせいだ」
「・・・」
俺は、もう一回暴走する。
自分では手に負えない敵と戦い、力を無理やり引き出して戦う。
その結果、フミが死ぬのだ。俺を止めようとして。
その過程で、この女神も殺す。
というか・・・かなりの人を殺してようやく止まるんだろう。
そして後悔するのだ。
「貴方から抜き取られたのは、神力を持つ才能・・・その原型」
「・・・後天的には持てないんじゃ?」
「持っていたけど気がついていなかっただけよ。それが、何かの干渉で目覚めた」
「ん?じゃあ実際は俺は俺の神力を使ってたってことか」
「ええ。あくまでも干渉してきたのは神力を目覚めさせるためなの・・・って聞いたわ」
「何か気が抜けるからやめろ」
付けたすなよ・・・
「じゃあ今の俺には神力はないのか」
「ええ。全くと言っていいほど・・・でも、使うことは出来るわ」
「誰かに借りるのか」
「さっき出来てたでしょ?」
簡単に言ってくれる。
あの感覚を掴むのに煙に包まれる事1時間と暴走経験一回が必要だったのに。
暴走がなかった場合、使うようになれるまでどれだけかかったか・・・
「それに、扱えるだけで結構ちぐはぐになってるわ。感知できるのに、本当にあるのがわかるだけでしょ?」
「ああ。魔力みたいに濃さとかは全くわからん」
「それ、特訓しても全く変わらないからね?」
「マジか」
ちょっとショック。
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