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416話

微妙に長い

深海で見つけた巨大な鱗。

持ち帰ったそれは、すぐさま研究所に送られた。

魔力を感じないことから、うちではなく違う場所に送られるって話もあったがそれは俺が止めた。


現状、魔力ではない力・・・『神威』に関する力。

俺はとりあえず神力と呼ぶことにしたそれは、俺とハクコちゃん、フィニちゃんでしか感知できない。

まだ『真化』抜きなら俺より強いはずのフミも、結界や『鑑定』を持っているヨミでも全く感知できない。

それどころか、何かあることすらわからないのだ。


だがそれでも、確かにそこにある力。

そんな物を、ダンジョンに関係していない普通の人間しかいないところには持っていけない。

なんとか親父に説明して、うちの研究所まで持ってこさせた。


そしてもう一つ。

あの鱗について考えた時に流れた知識の一つ。

あの鱗を持つ生物と同等の力を持つ何かが既に地表に出現していること。これはまだ言っていない。

言ったところで何も出来ないだろうということはあるんだが、そもそも伝えなくていいのだ。

流れてきた知識では、現時点で陸にいるその何かは寝ている。大抵の脅威は全く気にしない程の力を持つので、俺が近づかない限りは問題ないのだ。

・・・切っ掛け俺かよと思わんでもない。


「調査結果出たが、聞くか?」

「もちろん」


鱗を持ち帰って数日。

早速調べた結果が出てきた。今日はそれを聞きに来たのだ。


「まず第一に。お前の言う通り、これは普通の生物の物じゃないと判明した」

「だろうね」

「ガウ」

「チュン!」


恐らく俺より神力においてはより繊細に感知できるであろうハクコちゃん達を今日は連れてきている。

知らない人間ばかりの場所だから、ハクコちゃんは嫌がるかと思ったがすんなり来てくれた。

多分、この子も何かしら察しているのだろう。


フィニちゃんは滅多に来ない場所でで楽しそうです。


「少し削ってDNA何かも調べてみたんだが、その時点で既存の生物のどれにも当てはまらないって結果が出た」

「・・・せめて元の動物がわかればな」

「次に、この鱗の硬度何かも見たんだ。驚いたよ。今までもダンジョンに出てくるモンスターの素材なんかで既存の金属より硬いなんてあったが、これはもはやそういう領域じゃないぞ」

「ぶっちぎってるってこと?」

「そうなるな。ユニちゃんの角と比べて、数値化しても凡そ10倍以上だ」

「はぁ!?」

「しかもだ、これは剥がれ落ちてやや時間が経っていることも分かった」

「・・・もしまだ成長していたら」

「これより硬くなるってことだな」

「化け物か」

「この情報だけでも、既に普通の生物ではないというのはわかったからな。お前のいう神力に関してはさっぱりだが」

「まぁそれはフミ達でもわかってない領域だし。しゃーないよ」


てか、なんで俺が察知出来てるのかすらわかってない。

ハクコちゃん達が近くにいるからってのだと、フミ達が感じることすらできないのがおかしなことになる。


となるとだ。原因は恐らく未来のハクコちゃん達。

あの子達が関わった現代の存在は俺だけだ。

あの時の現象で何かがあった、または、経験したことで気づけるようになった・・・そのどちらかだろう。


「実際のところ、神力は何なんだ?」

「さぁ。俺もスキルの『神威』ってのが関わっていることしか知らないし」

「大丈夫なのか?」

「今のところは。まぁとんでもなく強力な物なのは確定だよ」


それはハクコちゃんの戦いぶりを見ていたらわかるだろう。

形を変える煙のような鎧。

レベル50であったハクコちゃん。いくら相手が10層のボスだったと言えど、相手は狂化オーガの上位個体。

それを一方的に倒してしまうスキルなのだ。強力なのは間違いないだろう。

そして、あの力はほんの一端に過ぎないってことも分かっている。


「フィニちゃんもそのうち使えるようになるかもな?」

「・・・チュン?」

「ガウ」

「チュー」


そのうち使えるようになるよってアドバイスはフィニちゃん納得しないからちゃんと教えてあげな。


「多分。魔力とは別種の力だと思う。ダンジョンでは今まで一度も感じたことのない力だし」

「一度もか・・・人型や女神からもか?」

「人型はない。女神は・・・わかんないな。今まで何も感じてなかったのは、俺が知らなかったからって可能性あるし」

「今見たら、女神からも神力を持ってそうか」

「・・・どうだろ。なんかこう・・・あれはそういう物じゃない気がするんだよな」

「うん?」

「もっとこう・・・根本的に違うと言うか」


魔力の元をたどれば、地球に流れるエネルギーになる。

だが神力は違う気がする。そもそもあれは地球が一切かかわっていない力な気がする。

個々の生物が、恵まれた才能と環境。そして切っ掛けを手にして気が遠くなるような確率を超えて初めて手に入れられる力。


『神威』はきっかけに過ぎない。

女神も言っていた、あれは神に至る才能を示すのだと。

環境は、恐らく強くなれる環境。

きっかけは・・・ハクコちゃんの場合は、まぁあれだろう。

痛めつけられて、俺に助けられたことで才能が開花した。フィニちゃんが使えないのは、そういった経験ががないからだと思う。

だが、その切っ掛けはなくてもいいはずだ。要するに心の問題なわけで。


ともかく、神の才能である『神威』が生まれ持った才能である以上、女神は似たような力を使うことは出来ても神力は持てないだろう。

あの女神の持つ神の力は・・・恐らく人工物だ。

人の手によって神を模して造られた力・・・ん?まて、だったらあいつは・・・。


「ガブ」

「・・・前が真っ黒」

「ガウ」

「チュン!」

「え・・・あ。また潜ってたか」

「・・・初めて見たが、深く考えるとそうなるのか」

「どう見えた?」

「ぶつぶつつぶやく不審者」

「治します」


その印象は非常にヤダ。


まぁ毎回毎回考え込むたびにそうなるわけではない。

そもそも知識の逆流現象はコントロールできないんだ。

何か見聞きして、何かしらの条件を満たしたものは知識として流れて来る。

自分から知りたいことを知りたいときには知れない・・・逆流が起きてから色々試行錯誤しているが、全く出来ない。


それでも、逆流が起きるのは俺が深く考え込んだときだけなので気を付ければ問題ない。

気を付けえると言うか・・・現象自体を起こさないようにするって感じだな。

まぁ起きても今みたいに近くにいる子が何かしらの行動で正気に戻してくれるから、長く考え込むことはない。

フミが嫌がるんだよなぁ。何か、恭輔がどっかいきそうとか言って。

まぁ自分も一度経験した現象だから、猶更嫌なんだろ。

かなり変な感覚なんだよな。自分が希薄になっていくと言うか。入り込むとそのまま出れなくなる穴を覗き込んでいるイメージ。

底が見えず、それにもかかわらず手を伸ばしたくなるあの感じ。

・・・人によっては怖いだろうなそら。


「ガウ~」

「そろそろ話していいのよ?」

「チュン?・・・チュン」

「ガウ」


ちゃんと戻って来たかフィニちゃんに確認されてようやく離された。

部屋に備え付けてある顔拭きタオルで顔をぬぐう。ハクコちゃんよだれ多いのよ。


「ふむ・・・まぁ謎のエネルギーってことがわかればいいか」

「それでいいと思うわ」

「一回見せてもらうことは出来るか?」

「ん?・・・ハクコちゃん出来ます?」

「ガウ?」

「纏うだけでいいよ」

「ガウ!」


声と共に、黄色の煙が周囲に漂い始める。

親父は初めて直接見るそれに大変驚いている。まぁそうだよな。


この煙、出てくるだけで神秘的な雰囲気を出すのだ。

中国にある黄山という山があるんだが、そこにこういう煙が漂っててもおかしくないよねって言う。


煙は徐々にハクコちゃんの周囲に集まってくる。

それが鎧の形を取り、実態を持つように変化する。


「・・・これが」

「そそ。なんて名前なのそれ」

「・・・???」(クビカシゲー

「あらないの・・・じゃあ『黄煙鎧』ね」


きえんがいだ。


「これが伸びたり変形したりすると」

「するする」

「ガウ」(にょき

「ほら」

「・・・どういう理屈だこれ。ちゃんと硬いんだが」

「ユニちゃんの角とも違うんだよなんぁ。あっちは魔力が原因なのわかってるからいいんだけど」

「うん?これは神力を使って操ってるんじゃないのか?」

「全く使ってる様子ないのよこれが。どうにも自分の意思だけで操れるみたいでさ」


何でもありかとは思ったよ。

纏う時だけは使っているんだが、纏ってしまえばいくらでも戦える。

これがどれだけやばいか。全力を出し続けても全く衰えないとか、マジで羨ましい。


「チュン?」

「・・・ガウ」

「・・・???」


フィニちゃんが真似しようと観察するも、すぐに首を傾げる。

まぁダメだよな。感じることは出来ても原理がわからん。

てか俺も分からん。神力を使っているのはわかるんだが、どうしたらそうなるのかが全く分からない。

せめて動きがわかれば・・・


似たようなことは一応出来る。

魔力で代用することになるが、俺の場合ただの鉄・・・硬度的にはもはや鉄じゃなくなってるんだけど。

まぁ物理金属の鎧にしかならない。伸びないし変形しないし。見た目だけになってしまう。

しかもハクコちゃんは鎧を纏うと全部の能力が上がるみたいだしな。

鎧版の『真化』みたいなんだよ。じかも普通に『昇華』持ってるし。

マジで戦ったらコロちゃんとも結構いい戦い出来るんじゃないか?


ちなみにだが、魔法組とやると俺でも防戦一方になることもあるので多分無理。

だって相手の戦法に嵌ると抜け出せないんだもん。


「・・・よし、一回これでデータ取っていいか?」

「いいけど・・・機械で見れるのかこれ」

「・・・まぁ物は試しだよ」

「当たって砕けろ的な。あ、その前に一回鱗の所行っていい?」

「良いが・・・何するんだ?」

「いや、こいつらに一回見てもらおうと」

「ガウ?」

「チュン?」


そもそもそれが目的で連れてきたんだしな。














「どうだ。何か感じるか?」

「・・・ガウ」

「チュン・・・」


周囲を機械に囲まれ、常にデータを取られている状態の鱗。

ただの鱗に、ここまでの機材を使うのかと驚いたものだ。


そして、やはり連れてきて正解だった。

ハクコちゃんとフィニちゃんが、明らかに何かを感じている。

俺ではまだ感じ取れない領域までだ。フィニちゃんはまだ浅いみたいだが、ハクコちゃんはかなり深い。

フィニちゃんの感情は怯え・・・恐怖だが、ハクコちゃんは逆に安心を感じているのだ。

なんか・・・同類を見つけた感じだ。それに加えて、何やら考えているが・・・


「・・・ガウ」

「うん?どうした?」

「ガウガウ!」

「・・・は?」


鱗の持ち主から伝言がある・・・?

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