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413話

「ぼががががが」

「ぴー!」

「いやそらそうやろ!」

「うー!」


水中じゃ喋れないわ。


「ぜぇぜぇ・・・」

「ぴぴー?」

「だ、大丈夫・・・」

「いや絶対あかんかったやろあれ」

「うー」


思い当たったが吉日と、フミから特殊個体の事について考えを聞いた次の日。

親父に頼んで近くで休みの日の水族館を貸してもらう頃に。

一応研究所の研究の一環として来てるから、俺個人には何の負担もないって言う。

だからこそすらっぴも連れてこれたのだ。


だが、現在困っています。

当たり前だけど水中で人間は喋れません。声が出せないから、俺の意思を伝える術がないのだ。


「そもそも何言ってるかわかったん?」

「それがまったく」

「話す以前やんか・・・」

「うー・・・」

「すらっぴはわかったん?」

「ぴぴ?」

「あかんわ」

「うーむ。流石に進展なしはなぁ」

「親父、ヒント」

「いやこっちが聞きたいんだが」


今日は俺が水槽のプールにいるイルカと話そうとしているのだ。


あちらはこっちの様子を見て、なんだかんだなごんでいるようだ。

それはわかるのだ。

問題は、正確に何言ってるかわからない事。すらっぴ達みたいに、俺の中で言葉にならないっていうか・・・

感情しか伝わってこないのだ。それだけでも十分じゃないか?とは親父には言われたが、俺の中では不十分。

出来ると思うんだよなー


「コロちゃん達と何か違うんかなあ」

「そもそも時間の問題な気もするんけど」

「どういうこと?」

「いや、恭輔だって生まれてすぐから出來たことやないんやろ?」

「そらな」

「やから、それって結局恭輔が成長するにつれて出来るようになったって話やろ?」

「・・・せやな」

「つまりはすぐ出来るもんでもないんじゃない?・・・ちゅうことや」

「こっちもそれは伝えただろ」

「・・・いや、何か出来る気がするんだよねぇ」

「なんの自信なんだそれ」


なんかこう、今の俺の意識なら出来るっていう直感があるんですよ。

こういう時の勘って基本外さないから多分今の俺でも出来ることなんだよな。


だが、特に知識が回ってくることはない。

となると足りないのは知識じゃなくて俺の意識なのだろう。


・・・考えられるのは、今の俺は水中で喋ろうって意識が強すぎるってことか。

俺の力の本質が話すことでなくて、相手の意思をちゃんと受け取ることと相手に送ることの2つだとすれば、別に声を出す必要はない・・・はず。


「でも人間ってどうやって口で喋る以外に自分の意思を伝えるよ」

「手話とか」

「目線とか?」

「う?」

「まぁ行動で示すってことは出来るな」

「それは同じ人間相手だからってやつでしょ?」


てか、それ人間同士でもうまく出来ないことあるやつだし。

うーむ・・・困った。


「・・・一つ思いついたんだが、いいか?」

「おねげーします」

「お前は今まで、口から声を出すことで意思を伝えるって生き物とばっかり触れ合ってただろ?」

「うい」

「じゃあイルカのコミュニケーション方法ってなんだ?」

「そら音でしょ。てか、大体の動物は音でコミュニケーションとるし」

「言葉はあるか?」

「ない。でもそれはコロちゃん達も一緒でしょ」

「ああ、じゃあ違うのは環境だ。彼らはどうやって音を出している?」

「だから口で・・・あ、そういうこと」

「わかったか」

「ういうい。やってみるわ」


海生生物と陸上生物の音の出し方の違い・・・割と簡単だったわ。

別に口を開く必要はないのだ。

口を閉じた状態で音を出すことは出来る。


そしてもう一つ気を付ける点は、イルカは高い音で会話するってこと。

俺達人間では聞き取れなかったり、聞き取りずらい。

そしてその音を人体で出すのは・・・まぁ無理だわな。普通なら。

だから音は出さない。代わりに魔力で代用する。


(自分の思いを魔力に乗せるイメージ・・・)


魔力を相手にぶつけて、自分の意識を伝える。

本来魔力は魔力を持つ生物でないと感じることが出来ないのだが・・・少しズルをする。

その為の知識だけを引き出すのだ。


「・・・ごっぽ」

「ッ・・・恭輔やったな?」

「う」

「ぴ?」

「後で怒るわ」

「うー」

「・・・まぁお手柔らかにな」


・・・何か嫌な予感がするな。


だが、上手い事引き出せた。

魔力を感じさせるには、触れればいいのだ。

手に魔力を込めて、その魔力には自分の言いたいことを乗っける。

それを手渡しで渡すイメージ。


「ぴきゅー」

「・・・」


また水の中に入って来た俺に対して、このイルカは興味深々なご様子。

いつもショーとかをやっている子だって言ってたし、かなり慣れてるんだな。

俺の周囲を泳ぎ回っている。

・・・うん、この状態でもどんな気持ちかはわかる。

今俺変な人間だなって思われてるわこれ。うん。わかるその気持ち。

俺もイルカが陸で楽しそうにしてたらなんだって思うわ。すぐに水に戻すけど。


手招きをすると、こっちに寄ってきてくれる。

うんうん。本当に人懐っこいな。


(こんにちわ)

「ぷきゅ!?」


成功した。俺の気持ちが言葉として伝わったみたいだ。

まぁ挨拶したってのが伝わっただけなんだが。

言葉が伝わってきたから、かなり驚かせてしまったな。すぐに体を引いて、離れてしまった。


警戒じゃないけど、不思議がられてるな。

なんていうか・・・この人間喋ってるって今・・・おん?


「ぷー」

「ば、ばぶぼぼぼ」

「ちょ恭輔!?」


ミスった。












「ぜぇぜぇ・・・」

「ぴぴー?」

「・・・大丈夫デス」

「明らかにさっきよりあかんかったわ」

「うー」

「出来たか?」

「なんとか」


親父が俺に伝えたかったのは、伝達方法が微妙に異なるのだから、いっその事普通にしなければいいんじゃないかってことだ。

だから俺は音ではなく魔力というやり方を思いついたのだが。

まぁそれは成功したな。上手い事挨拶は出来た。

じゃあなんでおぼれたって・・・あの子の言葉がわかったからだ。びっくりしたわ。


「いきなり聞こえてきたん?」

「ああ、今何したの~?っていきなり来たもんでな」

「んで、それで返そうとしてダメやったと」

「その通りです」

「ああ、普段みたいに喋ろうとしたと」

「間違えたわ」

「う?」

「なんとか。それにしても、あの子随分のんびり屋だな!!」

「溺れといて感想それか・・・」

「流石恭輔・・・」

「うー・・・」

「ぴっぴ!」

「よし、すらっぴも行くぞ!」

「ぴー!」


なんか周りに苦笑いされてるけど、気にしない気にしない。

ようやく話せるようになったんだ。今の感覚を忘れないうちにもう一回試さないと!


ふっふっふ・・・今日イルカが成功なら、鯨とかサメとかもすぐでしょ・・・


「夢が広がりんぐ。世界はワールドワイドだわ」

「ぴ?」

「何でもないぞー」


意味もないしな。

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― 新着の感想 ―
[一言] ワールドワイドウェブだったかね・・・wwwをそう呼ぶことと掛かってるのかな、世界中の海って意味で使ったんだろうけれど、シャチとか遊んでる様子も出てたりするから頭良さそうなイメージがある・・・…
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