412話
「・・・グゥ?」
「わん?」
「・・・」(コテン
「・・・」(コテン
「・・・何してるんあれ」
「いや多分遊んでるんだろうけど・・・」
「クゥ~!・・・クゥ?」(コテン
「グゥ」(コテン
「わん」(コテン
「クゥ」(コテン
「楽しいんかあれ」
「多分」
首を傾げて何が楽しいかは知らん。
ルミネがハクコちゃんに話かけたら始まったんだが。
・・・
「いや写真は撮るんかい」
「可愛いし」
「はぁー・・・いつも通りやなぁ」
「あれ、これで平穏を感じられてる?」
「戦っとるより今の方がうちは好きやし」
「そんなもんか?」
「まぁな。モンスターは基本戦うもんやから、うちみたいなのが変わってるんやけど」
「それはお前が規格外だから?」
「うーん、というか、個性やと思うわ。ほら、あっこの赤いスライムはめっちゃ好戦的やろ?」
「あれは食欲旺盛なだけだと思うんだけど」
「まぁそう言うことやろ。特殊な個体は個性が強いんよ」
「うーむ・・・」
気になる話だ・・・
フミ、すらっぴ、しーちゃん。
ダンジョンの中でテイムされる前から人に襲い掛からず、理性を持って生まれた特殊な個体達。
その特徴として、俺は人間に対する敵意がないことと思っていた。
だが、フミ自身の考えだとそうではないと。
「敵意まで行かんけど、強くなりたいって気持ちが強い個体なら襲い掛かってくるやろ」
「あー、まぁ戦って勝てばそら強くなるわな・・・そういや、俺にテイムされる前ってレベルとかどうやって確かめてたんだ?」
「勘」
「おおう」
「あんなカードみたいな便利アイテムなかったもんなぁ。スキルまで見れるなんてどういうアイテムなんやあれ」
「・・・その言い方だと、スキル見れないと不便だったと」
「使わんスキルは忘れんねん」
「あ」(察し
「恭輔やって使わんタイプの魔法は忘れとるし、戦わん階層なんて覚えてないやろ」
「まぁ・・・そりゃね」
「サキュバスとかラミアとかあのあたりとか」
「そもそも見れてないんだわ」
目隠しされてたしな。
ともかく、フミの考える自分達の特徴は、個性の強さだということだ。
確かに特殊個体以外の普通のモンスター達は個性に乏しいと言えるかもしれない。
なにせ人間に襲い掛かる以外の事をしていないのだ。
食事もしないし、遊ぶなんてもってのほか。例外は、そもそも条件を満たさないと襲い掛かってこないようなモンスター達。
22層の羊達がそうだな。あれとかは普段は温厚だ。てか俺たちは遊びに行ってるし。
「それに、恭輔はうちらとそうじゃない連中との差はもっとわかりやすく感じられると思うんやけど」
「うん?」
「恭輔、最初にすらっぴの声はわかってた?」
「わかってたって・・・今みたいに喋れるかってことだよな?」
「せやせや」
「・・・確か会話出来てたはず」
本当に始めは、ちゃんとは無理だったはずだ。
少し話すことで、それでクリアになったって感じだったはずだ。
出会って数十分で普通に会話してたような気もするけど。
「それが一番大きな違いなんやけど」
「おん?・・・???」
「わかっとらんなぁ?あのな?恭輔その辺にいる普通のモンスターと喋れんやろ」
「そらそうでしょ」
「何で?」
「何でって・・・なんでだ?」
「恭輔の能力なら、喋れて当然やろ」
「あれ・・・待て。本当になんで」
そういう物だと思って全く考えたことはなかった。
俺は、確かに普通のモンスターと喋れない。
鳴かれても、吠えられても。それが俺に伝わってくることはない。
意思が伝わらず、言葉が届かない。
これを、俺はモンスターだから当然だと思っていた。
だからこそ『テイム』して初めて会話できるものだと思っていた。
だが、すらっぴは喋れた。
・・・って、待て。俺はピッちゃんとも喋れたぞ
「じゃあピッちゃんも実は特殊個体なんやろな」
「いやいやいや・・・でも確かにスキルの数は多かったけど」
「それに普通の妖精は『無属性魔法』なんぞ持たんしな」
「えぇー今判明する驚愕の事実なんですけど」
「まぁそうだからと言って特に何もあらせんしな」
「・・・それもそうか」
最初からスキルが多いってだけで、それ以外に特に何もないか。
「ま、恭輔がわかりやすく特殊かそうじゃないかをわかるのはそれがあるからやな」
「・・・確かに俺ティラノと喋れてないな」
「勿論、中には喋れるのもいるで。精霊達はそうやろうし」
「・・・あ、象と狼か」
「せや。後は木霊やな」
「ドライアドとは話せなかった」
「女神曰く、精霊の大元はダンジョンで生まれてないらしいやん。本来は外におったから喋れるんやろ」
「・・・なんだ、規格が俺達と同じってことか?」
「ダンジョンで生まれるモンスターの基本がAとすると、外で生まれる人間や他の生き物がBなんやろ」
「特殊個体は、それがBで生まれてくると」
「それがあるから、個性的な子になるーっちゅう感じや」
「ほー・・・」
結構よく考えられてる。
てか、俺自身考えたことのない方面からの話だった。
なるほど、俺が喋れるかどうかの区別か・・・
「そういや、普段人間がダンジョンにいない時ってモンスター同士の会話ってあるのか?」
「無いと思うで。うちも観察したことあるんやけど、あいつら顔も合わせんのよ」
「顔も?」
「そもそもコミュニケーションがないんや。いや、出来ないんちゃう?」
「・・・その辺はバトちゃんとかに聞いた方がいいかな」
「せやなぁ」
・・・そういや、フィニちゃんとユニちゃんは俺と初めから喋れたな。
これは彼らがBだったってことだな。
じゃあ特殊個体であるフミ達に近いのか。いや確かに特殊なんだけどさ。
いや?むしろ精霊であるふーりんちゃん達に似てるのか?
元を考えれば、寄生型精霊だ。
あれは理性がないから会話は出来ないが。
それは極度の飢えからくる暴走だ。それがなくなりさえすれば、理性的なのかもしれないが。
いや待て、ユニちゃんはともかく、後の2匹は例外なのでは・・・
「よしやめよう」
「何考えとったん?」
「いや、ハクコちゃん達の事。あの子達はどういう部類なのかなって」
「あー・・・また例外っぽいわな」
「それに、俺の事も考えるとさらに変って言うか」
「変?」
「俺の能力なら、AだろうとBだろうと話せてもおかしくないだろ」
「・・・そうなん?」
「女神が言ってただろ。俺の能力なら、何でも話せるって」
「あ」
「なのにAとは話せない・・・これは元から話せないってのは関係ないと思うんだよなぁ」
「どうして?」
「・・・極論言うと、俺の能力は会話じゃなくて、意思疎通ができるってことだと思うんだよ」
「・・・はぁ!?」
「まぁそうなるよな」
出来ないいのは、俺が今良く使えてないだけ。
ちゃんと理解していれば、AもB関係なしに生れるんじゃないか。
それに、人間には言葉がある。国によって使っている言葉は大きく異なるが・・・
「まずはそこを超えるところからかな?」
「うわぁ・・・恭輔楽しそうやな・・・」
「そう見える?」
「めっちゃ楽しそう」
「そうか・・・ふふふふふふ」
別にいろんな国の人間と喋れるようになることに興味はない。
それに、ダンジョンのモンスター達とはむしろ喋れない方がいいだろう。
戦うことになるのなら、下手に喋れたりしたら逆に大変だろうしな。野生の世界は弱肉強食。戦いになれば、弱い生物は死んでいく。
だけど、それでも。
きっと、喋れるようになると俺はダメになる。まともに戦うことが出来なくなる。
・・・だが
「面白そうなことではあるんだよな。ほら、魚とか虫とかは今も中と外関係なしに喋れないし」
「あ、そういう方面で面白そうってことかいな」
「そそ。俺一回クジラと喋ってみたかったんだよねぇ」
俺が現在話せるのは陸に生きる動物のみ。割と狭いのだ。
これは、女神曰く俺が小さい時から周りにいた生き物の影響が大きいそうだ。
だったら、仮定の話だが小さい時から魚に囲まれていたら。
そうすると、俺は魚たちと話せるようになってたってことにもある。
それは、小さい時でないと駄目なのか。
いやいやいや。そんなことはないだろう。
人間だって、違う国の言葉を勉強すればわかるようになるのだ。
だったら、出来るようになるでしょ。
「てか絶対出来るようになるわ」
「目がマジや・・・」
「いつも通りでしょ」
「その通りやけど恭輔が言うことやないわ」
ペンギンは出来たから、そこから調整していけば・・・いや、哺乳類って共通点からの方がいいか?
ふっふっふ・・・楽しいなぁ
よろしければ評価などお願いします




