403話
「フミ」
「どしたん恭輔?」
親父に色々聞いた次の日。
ダンジョン探索はフミ達に止められた・・・正確には、俺だけ留守番にさせられたんだけど。
未来かな来たハクコちゃん達の話は、フミ達にはまだしていない。
だが、それ以前に俺は暴走しているのだ。それを心配され、深い階層に行くのは完全に止められている。
魔石集めも、フミ達が全員で協力して、俺がいない分頑張るから!と言ったから。
それでも、無理やり行こうと思えば行けそうだが、それをすると恐らく大変なことになるので行けない。
・・・まぁぶっちゃけフミだけが1人で魔石集めにボスを回れば、俺が行くより早く終わるんだけどな。
楽なのはいいが、楽をしたいわけではないからなぁ。
それに、強くなるなって言われただけで、戦うなって言われてない。
だから60台とかより下の階層に行かなければ、特に問題ないと思うだよなぁ・・・
まぁそれを言っても怒られるので言いませんけど。
そして魔石集めも終わり、フミ達は休憩中。
ニホリは家に残って家事をしていたから、今はまだそれを続けている。
フミはリビングのソファで、尻尾をたらーんと垂らしながら寝転がっている。
「疲れたか?」
「いんや?あのくらいなら問題ないで?」
「そうか・・・じゃあちょっと出かけたいんだけど」
「!!!デート!?」
「あ、いや。そんな楽しいお出かけではないんだけど・・・」
「すぐ準備するわ!!」
速い速い。
ソファから飛びあがって目にもとまらぬ速さで2階に上がっていった。
用件も聞かないよあの子。
「お出かけてここ?」
「だから楽しいものじゃないって言っただろ・・・」
俺達が来たのはとある施設。
広い広場と大きな宿泊施設。そして新しい方のダンジョンの入り口がある。
ここは、これから先に民間にも開かれる冒険者育成施設だ。
今回は、そろそろ来る外国の冒険者たちが使うってことで、俺が暇つぶしがてら見に来たのだ。
ちなみに、来月には来るそうだ。
外国の冒険者だけでなく、日本でも冒険者の募集を行い、一緒に教習を受けることになっている。
募集自体は実はもう始まっている。
今回は、前回の盛況っぷりを考えて、人を増やしたから俺たちが手伝うってことはない。
基準的には、今の新人冒険者たちが基準となっているから、似たような人たちが選ばれるはずだ。
「でも、なんで恭輔が下見に来たん?」
「一応俺も研究所所属の冒険者だしな。こういう仕事があるっていうから、どうせならって」
「なるほどなぁ。まぁええんちゃう?恭輔の休憩期間や」
「休憩ってか・・・原因不明なだけだろ」
「それでも、無茶はさせへん。そして下にも行かせへん」
「はいはい」
『昇華』が使えなくなった時も、休憩期間てことで長い事ダンジョンに潜らない時期があったが、あれは俺の気分転換が必要って話だったからだしな。
今回の俺の状態は、急激なレベルアップによる暴走。
そして、フミは伝えていない『真化』以上の力を求めない事。
この2つさえ気を付けていれば、普通に戦っても問題ないと思うんだけどなぁ・・・
まぁ、今フミにそれを言っても聞いてくれないだろう。
少し時間をおかないと、過保護モードのままだ。
いずれにせと、今暇な事にはかわりない。こういう時期に、普段しない仕事をするのも悪くないだろう。
そういう軽い気持ちで下見に来たのだ。
ちなみにここは栃木県の某所。
移動はシュルちゃんに乗って来たから30分で着いたよね。
ここは今回の教習の為に新しく建てられた施設だから、見た目も綺麗だ。
微妙に工事中の部分もあるが、凡そ快適に過ごせそうな感じなんじゃないか?
「おお!恭輔の部屋より広いやん!」
「みんないるし、本とかあるから狭いだけで同じくらいのはずなんだけどな・・・」
1部屋に2つのベッドが置いてある。
教習中は2人一組で行動することになっているのだ。
実際にダンジョンに潜る時も同じだ。2人一組での行動。そうすることで、安全性を上げるのだ。
「お湯のないお風呂って、なんや寂しいなぁ」
「まぁある物がないってことだしな」
「でもここのお風呂広いなぁ」
「・・・あれ?お前温泉入ったことあるよな」
「あそこあんな広さやないやんか」
「あー・・・今度広い所行くか」
「・・・他の人もおるんやないの?」
「大丈夫・・・貸切るから」
「ほあ!?」
なんで他の人間にフミの体を見せなくちゃいけないんですかね????
それにうちに子達も連れて行きたいしな。
アリシアとか、雪ちゃんとかも誘えば喜んでくれるだろう。
・・・そうすると雪ちゃん家の富豪パワーが全開になりそうだけど。
まぁ皆来るんだから、無駄遣いじゃないよ。ホントウダヨ
ここの施設は、近くに源泉があるらしく、そこからお湯を引っ張ってきてるらしい。
世界初の冒険者専用の教習施設。
それだけ金がかかっていると言うことだ。見栄ってやつだな。
俺が発見した物と、手に入れた魔石で国自体の経済も少し上昇傾向にあるらしいからな。
世界で一番ダンジョンの探索が進んでいる国ってことで、そう言う方面でのプレッシャーもあるんだろうさ。
まぁそれを税金の無駄遣いって言っている連中も多いけど。
俺からしたら、これは必要経費だ。
まだ日本では冒険者の死人は出ていないが、世界ではそこそこ出ている。
軍人で言うならもっと多くの死人が出ている。
それは、今のダンジョン熱を冷まさないためにあまり広まっていない情報だ。
ダンジョンは、いつ死んでもいおかしくない・・・
そんなところに行くっていうのだ。多少は贅沢してもいいだろうに。
他にも遊戯室や食堂。様々な場所を見て回った。
「どうだった?」
「めっちゃええホテルみたいな光景やったわ」
「前に雪ちゃんと言った旅行以来か」
「・・・アカン、ヨミがめっさ甘いもん食ってた記憶しかないわ」
「なんだそれ」
逆にどういうことだよ・・・
「あら?恭輔おひさー」
「あれ?姉ちゃんですわね」
「何よそのテンション。てか、リラックスしすぎじゃない?」
「いいマッサージチェアでよ?フミもこんなん」
「アハァ」
「・・・狸だけどいいのね?」
「なんかちょうどいい感じに足に効くそうですけど」
「そ、そうなのね・・・」
大浴場の入り口のところにあったマッサージチェアでくつろいでいると、何故か姉ちゃん来た。
おかしいな。下見は俺がやるって話だったはずだけど・・・?
「ふっふっふー。下見ついでに、ロケハンは私なのよ!」
「ロケハン・・・ああ、泊まるの?」
「YES!私のチーム全員で泊まるの」
「あらま」
「どうせ来月にはしばらくここで寝泊まりするわけだしね。今のうちに慣れておかないと」
「そういうもの?」
「そういうもんよ。恭輔は・・・来ないんだっけ?」
「呼ばれない限りな」
「まぁあんたが教えるのはねぇ・・・さすがにレベルが違いすぎるわ」
「姉ちゃんたちだって大概だろうに」
姉ちゃんたちが俺のレベルの事を言うが、新人や海外の冒険者と比べると姉ちゃんたちでもかなりレベルが高い。
そして、レベルの数値以上に能力が高い。
フミとの組手。そして最近は他の子達とも戦うこともあるらしい。
そんなの続けてたら、そら強くなるわな。
それで、姉ちゃんのチームがここに泊まるって話だっけ?
「なんでこんな早くから?」
「当日の動きのリハーサルも兼ねてるわよ?色々やること確認すること多くってねぇ」
「ごしゅーしょーさま」
「他人事ねー本当に。あ、そうだ。昨日うちのチームの子がスキル手に入れたのよ」
「ほうほう?」
「『伸縮化』ってスキルなんだけど、何か知ってる?」
「俺は知らんなぁ・・・ニホリかフミなら知ってるかな。フミ」
「あ”あ”-・・・ん?どじだん?」
「振動しまくってんなぁ・・・『伸縮化』って知ってるか?」
「じっどるで~」
「一回止めろ」
何言ってるのか聞き取りづらいわ。
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