398話
最近急に涼しくなりましたね
「はぁ。結局わからずじまいってな」
「しゃーないって。あの女神も良くはわかっとらんみたいやし」
「・・・まぁお前らに影響がなさそうならいいか」
フミに流れた知識も、あの女神のせいらしいし。
俺だけに何かが起きるって言うのなら、何も問題はない・・・とは言い切れないが。
何かあった場合、フミに怒られるしな。
今も俺に引っ付きながらめっちゃ観察してるし。
「むむ~・・・なんも感じんなぁ」
「・・・何を?」
「あいや。戦っとる他時はもっとこう・・・大きかった気がするんよ」
「何が?」
「恭輔の・・・雰囲気というか、体が?」
「ビルドアップもしてたのか俺」
「体が大きいというか・・・あ、あれや。皆が乗っとる感じや」
「はい?」
「コロちゃんとか、皆が恭輔の上に乗っとるんよ」」
「・・・???」
「まぁうちの思ったってことだけやから、実際に乗っとるわけやないで?」
「それはわかるんだけど・・・」
何があったらそんな印象受けるんですかね。
俺の上にみんなが乗ってる・・・割といつも通りだから特に何も思わんなぁ。
なんなら今日とかも乗られてたし。
俺に何かあったってことを勘で察知したらしい、ダンジョンから出てきたら全員で来たよね。
流石にユニちゃんは重かったな・・・あの子1トンとかあるんじゃない?
「でも、ハクコちゃんとかはおらんかった気が・・・」
「うん?」
「なんでやろなぁ」
ハクコちゃんがいない・・・ダメだ、全くわからん。
「まぁまぁええねん。今日はもう寝よ?」
「・・・そうだな。しっぽ頂戴」
「もー、今日だけやで~」
アッアッアッアッア
もふもふすりゅー
「・・・はぁ。本当に焦ったのだわ」
「お疲れ」
「そっちはどうだったの?」
「ダメだった。原因不明」
「よね~。なんで私の干渉を超えてくれるのかしらねあの子達は」
「前提条件が違う」
「わかってるわよ。あの子達が最初から特別だって」
「なら放っておくほうがいい」
「ダメよ。それで変な方向に行ったらどうするの」
「・・・行くの?」
「・・・言っといてなんだけど変じゃない方向に行けるのかしらね」
「・・・うま」
「・・・そうね、美味しいわね」
地球上のとある場所。
周りは何もない白い空間。そこに女神と人型がいた。
テーブルには昼間にニホリに貰ったケーキとお茶がある。
恭輔達の前では多少疲れた程度にしか様子を見せなかったが、その実、女神にそれほど余裕はなかった。
恭輔の成長率の高さ。それが想定をはるかに上回っている。これだけならまだよかった。
それだけなら、元の計画を少し変えるだけでいい。多少気を付ければ。問題も何もなかった。
だが、明らかに想定だけではなく。自分自身すらも越えてきた。
まがいなりにも神を名乗る身だ。それだけ実力はあるし、自分に知らない事なんてほとんどない。
地球の知識や記録、それすらも見切れる自分にわからないことなんてない・・・そのはずだった。
大門恭輔という存在を、見ても、肝心な部分は何もわからない。
始めはよかった。まだ特殊な能力を持つ人間というだけだったから。その程度なら、昔は腐るほどいた。
見なくなって久しくなった存在だからこそ、興味を持ち候補に選んだというのはある。
それがだ、自分の作ったレベルという枠を超えていないのにも関わらず、急にわからなくなる部分が増えた。
ちょうど彼が『昇華』を進化させた時あたりからだろうか、わからないことが増えたのか。
だから彼の成長にこちらの対応が間に合わない。地球の知識が彼に流れる現象だって、本当なら自分が教えてようやく使えるはずだった。
彼だけではない。彼の家族達も変わってきている。
『テイム』というスキルは、確かに特殊だ。
自分自身だけでなく、テイムした対象にも影響がある。
それは、人間がテイムした対象の気持ちがわかるのと反対に、テイムされた対象も人間の気持ちが読めるというものだ。
相互関係がきっちりと出来て、初めて『テイム』は効果を全開で発揮できる。
・・・そして、それだけのスキル。
関係を構築するだけのスキルだったはずだ。
『昇華』が、フミと呼ばれる彼女に影響を与えたことも。本来ならそれはありえない。
だって、スキルは使って初めて他に影響を与える。
使っていないのに影響が出るなんてありえない。自分の中で終わるだけなのに。
「・・・本当に、なんでかしらねぇ」
「・・・愛されている」
「本当にそれね。あの子は、文字通り何もかもに愛されている」
そしてそれは、なんて残酷なことなのでしょう。
だって、そんな存在の行きつく先は・・・
「私のせいとはいえ、ちょっと凹むわね」
「仕方ない。必要な事」
「わかってるわ。まだ止まれないわ。それに・・・」
その方が好都合であると言うことは否定しない。
地球を守るには、こうするしかなかったのだから。
夢を見ている。そんな事を考えている。
目の前には地球がある。
いや、これは・・・俺はどこから見ているんだ?
宇宙にしては他に星もないし、地球上のどこかにしては地球が小さい。
どこなんだここは。
他に見る物もないから、仕方なく地球を見る。
地上には、人々が歩いている。
探してみると、俺がコロちゃんを連れて散歩している。
・・・少し前の事だな。中学生とかの俺か?コロちゃんも小さい可愛い。
このころはダンジョンが出てくるなんて、考えもつかなかなかった。
そもそも、この時はコロちゃんと仲良くなるので忙しかったし・・・
「あん?」
遠くから、何かが俺を見ていた。
それは狸だ。てか、フミだな。
「って、なんでいるんだ?」
まぁ夢の中ならなんでもありか。
それにしたって、なんで遠くから見てるだけなんだって話だが。
あ、歩いている俺が気がついた。そっちに走ってる。
フミを抱えた時、コロちゃんが消えた。俺はそれを全く気にしていない。
そうして、次々に出てくる子達が変わっていく。
すらっぴもバトちゃんもねっさんもふーちゃんもピッちゃんもしーちゃんもユニちゃんもロラちゃんも。
出てきては消え、消えては出てくる。
そして、最後に残ったのは俺だけ。
残った俺は泣いている。
「・・・随分懐かしいというかなんというか」
ああ、なるほど、これは昔の俺か。
出てくる子達は違うが、それでも昔の俺だ。
コロちゃんが来る前、ちょうどそのタイミングで、うちから動物がいなくなった。
庭に来る野良猫達や野鳥はいたが、俺が飼っていたいた子達は皆いなくなった時期がある。
そんなことがあったのは、あの時が初めてだった。
常にうちには何かがいて、親父たちがいなくても寂しくなかった。
だから、本当に一人になったことなんて一回もなかったのだ。俺は。
・・・そうか、俺がちゃんと聞こえるようになったのはこの時か。
それまでは確か・・・
「言葉ではわからなかった・・・あれ、じゃあなんで」
俺はそれを忘れていた?
・・・そっか、コロちゃんが来たからだ。
何もない時間があって、それから来たコロちゃん。
はじめてコロちゃんに会った時、声が聞こえたのだ。
確か第一声は・・・
「なんだこいつ・・・だったっけ」
「今でも時々思ってる」
「・・・はい?」
「・・・ワフ」
「」
・・・イマコロサンシャベッタ?
「いやなんでいるんだ俺の夢に」
「ワン」
「いやそっちこそってええ・・・?」
コロちゃん的には俺がコロちゃんの夢に出てきていると?
「え、いや・・・でもいつも通りもふいなお前。夢のくせに」
「・・・ワン」
「まぁ当然か。コロちゃんだし」
「・・・うちの夢の中でもコロちゃん優先ってどんだけや恭輔!!」
「おん?」「ワフ?」
「・・・あれ?」
フミまで来たぞ
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