表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
420/567

396話

「恭輔・・・恭輔!」

「・・・」

「アカンほんま止まらへんでこれ!?」

「何とかしてください!ヨミが来るまで5分はかかるんです!」

「無茶いうな!?」


なんとか恭輔を運んでテレポート部屋まで来たところまではよかった。

だが、その時恭輔がうちを攻撃してきた。

このまま戻るのはまずいと判断し、ワープ場所を20層に変更。

ボス部屋に誘導し、ワイバーンは即殺。そこでようやく恭輔の様子をちゃんと見れた。


瞳が真っ黒だ。白目の部分がない。

明らかにただ事ではない。


ポヨネは一度ヨミを呼びに外に出た。

その間うちが恭輔と戦ってたが、厄介の一言に尽きる。


能力は、『真化』前回状態の恭輔と比べると弱い。

だが、攻撃が多様すぎて手に負えない。

大地が割れ、空は燃える。気を抜けばは凍てつき、一気に重力で押しつぶされる。

もはや魔法とかそんな領域じゃない。これは自然のそのものを操っている。


「だからって何でもありすぎやろ!?」

「私じゃ防げないんですよ!?」

「がんばれや!!」

「無茶!!」


ポヨネの結界が瞬時に崩される。

攻撃が強いのではなく、速く、多い。

あっと言う間に限界を超えてくるから、ポヨネの結界では止めきれない。


正直、『真化』なしの恭輔ならその気になれば倒せる。

それが出来ないから問題なのだ。

今の恭輔を止めるための攻撃手段・・・自分の手札の中の物は高威力すぎる。

一撃で恭輔ごと殺しかねない。

せめて『真化』が発動してるなら耐えてくれるのだろうが。


だからヨミを呼んだのだ。

ポヨネだけでは無理でも、2人いれば抑え込めるはず。

最悪、妨害だけしてもらってうちが直接押さえつければなんとかなるはず。


「その間生き残るのが厳しいんですけど!?恭輔さん『真化』なしでもこんな強いんですか?!」

「使う属性が多すぎるわ!」


黒い闇属性の球。白い光属性。それらはまだどんな魔法なのかわかってるか知っているからいい。

問題は見たことのない属性の攻撃も混じっていることだ。


光が当たった場所が崩れ去ったり、空間を歪ませて拘束してきたり。

想像は出来るが、実際には見たことのない技が多い。

もしかしたら、当たったらダメかもしれない。そう考えると一撃たりとも食らえない。

結界で防げないとなると、全部回避しかない。


これなら、ポヨネはそのまま外で待たせてた方がよかった気がするわ。


威力を絞った爆発を恭輔の足元に起こし、視界を奪い姿勢を崩す。

恭輔は後ろに飛びのくことで回避する。

まともな思考は出来ていないようだが、戦っているという意識はあるのだろう。

反射的に、こちらの攻撃に反応して動いている。


「ちょいと後ろ引っ付いてて!」

「はいぃぃぃ!!」


ポヨネが結界で自分をうちの背中に固定する。

ポヨネは食らうとマズイ。だったらうちが全部受け止めればいい。

纏めて狙ってきた時は避けなければならないが。


「しゃーない!ちょいとだけ本気や!!」


全身を獣の様に変える。

うちの『変化』の進化先・・・それの効果で見た目だけの物じゃ無くなっている。

『変化』での変身は、どうしても元の恰好の癖が残るのだ。

知らない生き物の体にいきなり入ったって感じが一番近い。それが『変化』


だが今のスキルなら、文字通り体そのものを自分の物として変えられる。

だから良い所は残して、悪い所は変えていく。


「恭輔には見せられなこれ!!」

「いやぁ。恭輔さんなら抱き着きぬくる愛されボディじゃないですかね」

「マジか!?」


今のうちの見た目は、文字通り全身獣人間。

控えめに言ってもかわいらしい恰好ではないし。何より爪も牙も鋭すぎる。

人に触れただけで切れるような状態だ。

そもそも恭輔以外には触れられないわな。

・・・なんの問題もないなぁ。


「よっし、なら恭輔に抱き着いてもらうために、はよ終わらせな」

「ファイトですお姉さま」

「ポヨネも補助くらいしてもええんやで?」

「もちろん」


結界の補助があるかないかでは大きく違う。

恭輔は抑えられなくても、うちの能力を上げることは出来る。


さてさて・・・恭輔の体力かうちの体力か。

どっちが先に尽きるか見ものやなぁ。

















ヨミが20層に足を踏み入れた時、見た光景は衝撃だった。


ヨミの中で、一番強い生物はお姉さま・・・フミだった。

恭輔は、よくても10番以内に入ればいい方。

ダンジョンの中にいる他のモンスターの中には、彼を超えるのがいくつかいると知っているから。


だが、その恭輔が今、フミと真正面から打ち合っている。

拳がぶつかり、魔法と爆発が大地を壊している。

フミは手加減している様子がない。

話を聞いた時には、本気になると殺しかねないからという理由で呼ばれたはずなのに。

今、フミは本気になっているのだ。


「ヨミ!」

「ポヨネ。なんでお姉さま本気で戦ってるんです!?」

「わかりません!徐々に恭輔さんが強くなってきて」

「強く・・・?」


急いで『鑑定』をする。

恭輔を視界に捉え、その状態が見える・・・


「・・・え?」

「何か見えたんですか?」

「・・・レベルが今上がってる?」

「え?」


レベルは、モンスターを倒して初めて上がるものだ。

何も倒していないはずの恭輔が、今レベルが上がるのはおかしいのだ。

ステータスの異常・・・だが、ヨミは、その絡繰りを理解した。


「これ、お姉さまに近づいてる!?」

「ええ!?そんな馬鹿な!?」

「目の前で一番強い存在に力を合わせてる!絶対に勝つために!」

「じゃあ止めないと!」

「わかってますよ!ええいお姉さま事ですけど仕方ない!!」


ヨミが張る結界は、ポヨネのそれとは一線を画す。

ただ動きを遅くする結界でも、効果は驚異的な物になる。


音速で飛ぶ魔法を、ほぼ止まっているかのようにすることも出来る。


「ッッ・・・ヨミ。ようやっと来たんか」

「ええ、遅くなったみたいですね・・・」

「ほんまにな・・・恭輔は」

「止まってます。ただ、抵抗力強すぎです、お姉さま込みとは言え、今にも破られそうです」

「せやろな。見たんか?」

「見ました。レベルがお姉さまに近くなってます」

「それだけやないだろうけど・・・まぁええ。気絶させんと」

「はい」


結界の範囲を徐々に狭めていく。

恭輔だけを固定するようにして、完全に動けなくしてからもう一つスキルを使う。


「・・・『催眠香』」

「・・・あ?」

「これは・・・?」

「ヨミのスキルや。わかりやすく言うと、思考能力を奪ったり出来る匂いをばらまくんや」

「何ですかそのインチキスキル。私使えないんですけど」

「やって最近手に入れたみたいやし・・・終わった?」

「・・・マジですか恭輔さん」

「え?」

「・・・まさか」

「・・・動けねぇ」

「自分で戻ってきますか。そこから」

「は?どこから?え、てか何フミその恰好」

「ふえ?あ!」

「めっちゃいい・・・」

「やった!恭輔さんが正気です!!」

「ある意味狂ってますけどね!」

「・・・恭輔ー!!」

「あ、お姉さま!?」


今恭輔の周囲は動きを止める結界・・・正確には、物体のエネルギーを停滞させる結界が張られている。


その状態で、フミが抱き着きに行ったら?


「・・・あ」

「・・・え。何この状況」

「・・・今解除するんで待ってくださいよ」


結界に阻まれ、フミが恭輔の目の前で止まる。

しかも飛び込んだから、空中で止まった。

ちなみに、この状態で解除するとエネルギーがそのまま戻ってくるから・・・


「ぐぎゃ!?」

「ふご!?」

「ああそうなる・・・」

「一回別の張ればよかったのでは?」

「いいんですよ。お姉さまがああしたいでしょうし」

















「ひっぐ・・・」

「フミ・・・」


何があった?

確か80層で戦ってたはずだ俺は。


なのに何で・・・ここは20層か?

それにフミの服がボロボロだ。体には傷はないみたいだが。


後、魔力がからっぽだ。文字通り、何もない状態だ。


「・・・何があった?」

「ああ、覚えてないんですね」

「ヨミ・・・お前がいるってことはかなりまずかった?」

「ええ、お姉様が本気になってようやく抑えられるような状態でした」

「俺が?」

「恭輔さんが・・・です。正直私だって信じられませんよ」

「何が・・・?」

「ぎょうずげぇぇぇぇ!!!」

「・・・」


フミが泣いている。

それも、狸状態で泣いている。泣きすぎてちゃんと喋れてない。

それだけ、俺がヤバい状態だったってことか・・・


「フミ」

「・・・スン・・・なんにゃ?」

「ありがとうな」

「・・・うぅぅぅ」


暫く、泣き止みそうにないな。

よろしければ評価などお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ