37話
「いよいよ今日だな」
「ワン?」
「う?」
「ぴ?」
「き?」
「ちゅ?」
「る?」
「・・・く?」
「なんでやねん」
あとふーちゃんは空気読んで首傾げなくていいぞ。
スキル『飛行』を習得し、ある程度の成長を実感。他のスキル、レベルなどのレベル上げも大方いい感じになっている。
つまり、20層フロアボスに挑もうかと思うのだ。
「それは昨日伝えたでしょう」
「うー」
「昨日はカレーがおいしくて忘れた?」
「ワン」
「散歩が楽しすぎてか・・・。あれだな、大したイベントでもないと思ってるな」
「ぴ~」
「いや、確かに随分期間あいたけどさ」
狂化オーガに挑んだレベルに比べると、今は大体倍近いか?スキルも増え、仲間も増えている。
その上、挑むのを決めた段階でかなり力を入れてレベル上げにいそしんでいた。
まぁ、相も変わらずの人不足なので素材集めやらで駆り出されたのもあり、想像よりできなかったけどな。早く藤岡さんたち来ないかなぁ。
装備品も一新・・・したかったけどできなかった。集まらなかったんだよ。ボス宝箱にも入ってなかった。
唯一手に入れたのがバトちゃんに着けた指輪。
指輪だけどサイズ的に足輪になってるけど。効果は魔法効果範囲の拡大。感覚では風の刃とかの大きさがアップした。
「何が出てくるかわからんから注意しろよ?」
「ワン」
「る!」
「そうね。ピッちゃんはまだ来てから日が浅いから、俺のそばかふーちゃんのそばを離れないようにな」
「る?」
「コロちゃんは多分遊撃で移動しながら戦っちゃうから、いざって時の守りなら俺かふーちゃんなんだよね」
「る~」
ふーちゃんの『幻術』があれば、よほどの距離じゃない限り、相手を惑わし攻撃を見当はずれの方向に向けさせることができる。近すぎると巻き込まれるから注意だが。
俺の場合は単純に壁を作るなりなんなりで攻撃を物理的に防げるので大丈夫。もちろんそれを突破されるような攻撃は無理だが、そもそもそんな攻撃をしてくる敵と戦うのは避けたいのだが。
「みんな体調はいい?」
「ぴ!」「きき!」「ワン!」「ちゅ!」「クゥ!」「う!」「る!」
「問題なしと。まぁ、昨日もバリバリ飯食ってたしな」
俺の感覚でもみんな普段と変わらない。
俺のはあくまでも今までの経験と『テイム』でのつながりから判断している物だが、今のところかなり高精度で当てられている。
この間、ふーちゃんが風邪をひきかけていた時にはすぐに気づけた。
「じゃあ行くぞ」
「ぴー!」「ききー!」「ワン!」「ちゅー!」「クゥー!」「うー!」「るー!」
「ここの敵は少なくていいなー」
「うー」
「その分強いんだけど」
「ワン?」
「うん、そうだね。コロちゃんからしたらそうでもないね」
俺も魔法を使えば楽だけど。
近接戦だとリザードマンはなかなかめんどう。前も言ったが、奴らはそれぞれのチームワークが面倒なのだ。
まぁ、魔法ならまとめて潰せちゃうから関係ないけど。
「10層の時もその階層の敵は簡単に倒せたけど、かなり苦戦したからな」
「ワン」
「頼りにしてるよ」
「ワフ」
コロちゃん達も、朝の気の抜けた感じがなくなっている。寝起きだったのか?。
「まぁ俺もコロちゃんも、初回は狂化オーガに痛い目見させられてるからな」
「ワンワン!」
「今度は無傷か。いいね。それくらいの気概で行かないと」
「ぴ!」「きき!」
「わかってるよ。二人も頑張ろうな」
はっきり言って、俺たちは狂化オーガに対して苦戦した。
すらっぴとバトちゃんは何もできなかったし。俺とコロちゃんは大ダメージを負った。
そのリベンジも兼ねている。
「気負いすぎもダメだけど」
「う?」
「今日はニホリもいるしな。いつも以上に気をつけるさ」
「うっう!」
「るーるー」
「ピッちゃんも気をつけろよ?」
「る?」
「本当にわかってんのか?」
ピッちゃんはわかってんのかわかってないのか。俺やコロちゃんの周辺を楽しそうに飛び回っている。
「着いたな」
「うー」
「強い感じか。まぁわかってたことだな」
扉の前に着いた、
ニホリもそこに着いた途端。明らかに警戒し始めた。今まではレベル差もあったのだろうが、ニホリが警戒するレベルなのか。
キッツいかな
「行かない選択肢はないけどな」
「ワン!」
「ぴ!」
「きき!」
「開けるぞ」
いつも通りの重さの扉を開ける。
中の様子は今までとは大きく違っていた。
今までのボス部屋は、どの階層も広いが基本洞窟内だった。ところどころに違う要素はあったが。
ここは空が広がっている。遮蔽物はない。本当に空が広がっているのみ。地面は土のまま。
どこまで広がっているかわからない。これじゃあ普通のフロアと変わらないぞ。
「どうなってんだ」
「うー」
「扉もない?ここで終わりか?」
「・・・グルルルルル」
「コロちゃん?」
コロちゃんが威嚇を始めた。今までにない行動だ。他のみんなもそれぞれ戦闘態勢になっている。みんなの魔法がそれぞれすでに出ている。
何かいるのか?。
そう思った時、それは空から唐突に現れた。
「・・・マジか!?」
「う!?」
「■■■■■■■■!!!!!」
目立つのは大きな口。見るからに強靭な顎だ。歯も鋭く大きい。
全身が鱗に覆われている。
しかし、一番目立つのはその爪がついた両翼だろう。
「ワイバーン・・・」
20層フロアボス。初めてのちゃんとしたドラゴンと言える。
「行くぞ」
「ワオォォォォォォン!!!」
「ぴぃぃ!」「きき!」「ちゅちゅ!」「クゥォォォォ!」
「う!」「る!」
ぞれぞれ浮かべていた魔法を一斉にワイバーンに向かって撃ちだす。
戦いが始まった。




