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390話

しばらくこのくらいの長さでいきます

「チュン!」

「・・・」

「チュンチュン!!」

「・・・」

「・・・チュン?」

「お前丸くなったな」

「チュン!?」





頭の上で丸くなる赤い球一つ。フィニちゃんです。


「チュン・・・」(ズーン

「・・・何言うたんよ」

「今回は俺のデリカシーがないのが悪かった」


やべぇな。思ったより落ちこんでる。俺の頭の上でだけど。


いや、ぱっと見はあんまり変わんないし、大きくなる年頃だからってのもあるんだろうけどな?

こいつご飯食べてすぐお昼寝して、起きて日向ぼっこしてさらに寝てっての繰り返してるからな・・

俺に言われてここまで落ち込むってことは、フィニちゃん的にも自覚はあったというわけで。


「オミちゃん的にはどうよ」

「キュ」


まぁ太ってる分には食べ物に困ってないってことで、野生歴長いオミちゃんからしたらいいことだよな。


一応全体的にフィニちゃんの教育はオミちゃんがやってるからフィニちゃんもそういう認識なのかと思ったんだけどな。

どうやら違うらしい。


これは多分だがうちの子の中でもスマートな子。

・・・わかりやすく言うとシュルちゃんでしょうねぇ。

鳥型でスマートでものすごく強い。

オミちゃんも目指せシュルちゃんとか言ってたし、その影響だろうな。

だから自分が丸くなっていると言われて、憧れと遠くなっているってことにショックを受けたと・・・


いやなら昼寝減らせといいたいが、うちにいる時のシュルちゃんは基本昼寝して無防備だからな。

そこを真似してるんだよな。まぁ寝る子は育つというし、それはいいんだけど。


とりあえず、今はこの落ち込んだフィニちゃんをどうにかせねば。


「フィニちゃーん」

「・・・」

「ダメだ聞く気もねぇ」

「むっちゃショックやったんやなぁ」

「わかる感じ?」

「そらうちやて恭輔に太った言われたら落ち込むわ」

「・・・お前太るの?」

「いや太らんけど」

「だよな?」


そもそも『変化』だしな


「あ、うちもう『変化』やないで」

「・・・ううん?」

「まぁ見れるようになってからのお楽しみや」

「・・・まだ強く成ってんのお前?」

「そらまぁな!」

「チュン・・・」

「あやっべ」


やべぇさらに落ち込んでる。どうするかなぁ・・・


根本的な部分として、まず俺は太ることへの抵抗があまりない。

そもそもそんなことで悩んだことないしな。元々太りにくい体質・・・というか、筋肉が付きやすい体質だしな。

これは親父譲りだ。


話を聞いてくれても、そんな俺では効果的なことは言えないだろう。

つまりは、ダイエットで悩んだことがあるフィニちゃんの悩みに共感できる奴が・・・いるわ












「そんなわけでお頼み申す三崎様」

「え、えーっと・・・なんで私なんですか?」

「え、姉ちゃんからそんな話前に聴いたから?」

「何話してるの!?」


三崎さん降臨である。

なんでもダイエット経験・・・というか、女性特有の痩せたい願望をお持ちとのことだったので。


ちなみに我らが姉上は俺と同じでそんなこと気にもしないので当てになりません。

余裕で夜中にラーメン食べるタイプの女ですよあいつは。

そんなこと言うと俺もそうなので人のこと言えなくなるな。やめておこう。


てかニホリに頼めば夜食出てくる環境ですし。


「そもそもなんで呼ばれたか聞いてないんですけど?」

「実はフィニちゃんに丸くなったとか聞いちゃいまして」

「フィニちゃん女の子なんですか?」

「いや?まだわかりませんけど」

「え?まだわからない?」

「鳥って、小さい時って雄雌の区別がつかないんですよ」


一般家庭で飼える鳥でそれが良くわかるのはインコだろうな。

インコは小さい時・・・特に黄色いとひよこみたいなんだけど、あの子らは生まれて数か月は雄雌がわからない。

大きくなってようやく見分けがつくのだ。

まぁ鼻の色で大体わかるって話もあるけど、それも確定じゃないしな。

ちなみに雄はよくしゃべるが、雌はあまりしゃべらない・・・らしい。俺の体感だとどっちも変わんないんだけど。

ほら、俺普通に会話できちゃうから・・・


「そんなわけで、お悩み相談していただきたく」

「なるほど。まぁ確かにそういうことなら・・・人間の考えで大丈夫なんですかね?」

「まぁ今の状態でもいいってことと、これから頑張ればいいってことを伝えられれば」

「あ、それくらいなら大丈夫そうですね・・・でもやっぱり珍しいですね」

「はい?」

「いえ。恭輔君が動物と話せない状況が」

「・・・まぁ遺憾ながら昔は結構多かったですよ」

「あ、やっぱりそうなんですね」


まぁ当然と言えるのだが。てかこの話前にもしたな。


そもそもちゃんと意思疎通ができると言ってもだ、心が読めるわけじゃないし。

相手の気に障ることを言ってしまうことだって昔はよくあった。

動物は種類ごとにそのあたりが違うし、同じ種類でも個体差はある。

まぁ人間ほどナイーブで繊細じゃないからその点は楽なんだが。


「昔コロちゃん怒らせたことありますし」

「・・・どうなりました?」

「一日中近寄れませんでした」


死ぬかと思いました。心が。


「ちなみに何故か俺の頭の上から動こうとしないのでこのまま説得をお願いします」

「・・・やりづらいです」

「諦めてください」


なんならフィニちゃんに言ってくださいそれ。

降ろそうとしても逃げるんですもん。






「チュンチュン!!!」


フィニちゃん復活。

三崎さんは見事お仕事をやりとげだようだ。ありがたやありがたや。


俺の頭の上で丸くなって拗ねていたフィニちゃんが今やテーブルの上で大きく羽を広げている。


「何言ったんです?」

「え?いや・・・これ女の子特有の物だと思うので」

「特有・・・?」

「ニホリちゃんに伝えときますね」

「う!」


次回からの励まし役が決まった瞬間だった。


元気になったフィニちゃん。

何やら元気に走り回っているが・・・


「チュン」

「ん?手?」


手を出せと言うので広げて出してみる。

すると、そこにひょこっと乗ってさらに太ももの上に着地。

そのまま服を足でしっかりつかんで俺の体を登り始めた。


「うー」

「登山感覚?なんですかね」

「・・・ああ、運動しようってか」

「チュン!」


フィニちゃんちっちゃいから俺はもはや山だよねって感じか。だから登山感覚。


太ったなら、その分運動すればいいと思い至ったのだろう。

地味に足の爪が刺さるからくすぐったいけど、これもフィニちゃんの為だ。

時々俺の服を毛づくろいの様に突くにも許そう。


「あ、耳はダメ」

「チュン?」

「くすぐったい」

「チュン」


肩まで登るとそのまま首の後ろに回る。

髪の毛は登りたくないのか、俺が顔を傾けると何故か眼鏡に足を引っかけてストップ。


「・・・」

「・・・うん?」

「・・・チュン」


降りられないんかい


「ニホリ」

「う。うーうー」

「チュン!」


ニホリの手の中に移っていった。

まぁ俺よりニホリの方が登るのには適しているだろう。


それにいきなり運動したって痩せるわけじゃないし、気長にやるのがいいだろう。















フィニちゃんが拗ねる事件も三崎さんのおかげで解決。

帰り際にニホリ印のおはぎを渡したので、今頃アリシアと一緒に食べている所だろう。

本当に忙しい時にありがとうございます。


「チュンチュン!!」

「マジ急にやる気になるじゃん」

「ほんま何言われたんやろ」

「チュン!」


そして今、テンションバク上がりのフィニちゃんが喧しい。

目指せシュルちゃんなのはわかったが、その為に強くなりたいと。

それで今俺たちに何したらいいかを聞いてきているのだが・・・


「今は大きくなることだけ考えればいいのよ?」

「そやで?まだ小さいんやから」

「チュン!」

「えぇー今から出来ること~?」

「別にうちらそういう努力はしてへんしなぁ」


フミは言わずもがなモンスター。今の姿のまま生まれてきている。

そして俺はダンジョンが出てきたから強くなってるから、努力って言う努力を小さい時から続けていたわけじゃない。

だから小さい時から出来るトレーニングと言われましてもって感じ。

なんならフィニちゃんベースが鳥だから猶更わかんない。

人間ならなんとなく調べれば出てきそうなものだけどさぁ。今から出来ることって何よ。


「炎のトレーニングとか?」

「チュン」

「確かに今もやっとるな」

「じゃあ飛行訓練?」

「チュン・・・」

「オミに止められとるんよ」

「ああ・・・じゃあないわ」

「チュー」

「んなこと言われてもなぁ」


鳥もそうだが、赤ちゃんは大体育てられるものだ。

小さいころから何かして強くなるって動物はいない。

ある程度育ったら親から狩りを教わるとか、そう言うのはあるんだけどな。

それもオミちゃんが止めてるってんなら、俺が勝手にやるわけいかんし。


後考えられるのはダンジョンに連れていくことだが、これもなぁ・・・

オミちゃんだってまだ連れてってないのだ。あとフィニちゃんまだちゃんと飛べないし。

まぁオミちゃんはそろそろ連れてく気だけど。


なにかないのー?と俺の指を甘噛みしてくるが、無い物はないからなぁ。


「フミ何か思いつく?」

「えぇ?うーん。ルミネの子とはちゃうからなぁ」

「あいつらはもうある程度育ってるからな」


うちに来た時点で既に赤ちゃんではなく子供になっていたルミネの子供たち。

だからこそコロちゃんやらねっさんやらの訓練・・・と称した遊びをしているのだ。

文字通り生まれてちょいしか経ってないフィニちゃんはそれをしたらダメだ。


人間でもそうだが、子供のころから筋トレしてると背がのびないってやつ。

今は自然に任せてスクスクと成長するのを待つ時期なんだ。

だからこそ、変なことはさせられないしやらせるわけ行かないのだが・・・あ


「一個だけできそうなのあるな」

「チュン?」

「ん?なんや?」

「魔石の魔力吸収ならいけるかと」

「おお!」

「・・・チュン?」


未知の領域と言っても過言でもない話だが。


人間の大人が魔石の魔力を吸収すると、体に影響が起こる。

まぁ大体健康になるとか、美容にいいとかそう言うことなんだけど。


これが、子供が吸収したらどうなるのか。

勿論だがこんなことをデータはない。人体実験と変わらないしな。

予測されることはあるにはあるのだが。

恐らく、大人が吸収するより効率がいいのではないかと思われる。

これは、フィニちゃんにも言える話だろう。


「ほら、子供の方が成長早いし」

「ふわっとしとるけど、大丈夫なん?」

「まぁ一応。フィニちゃん自体はもう魔力を持っているから悪いことは起きないだろうし」

「それはそうやろうな。なんか起きとるんならうちらが先やろうし」


フィニちゃんは炎美鳥というモンスターの雛。

産んだのはオミちゃん・・・オオタカだが。


つまりは、元から魔力を持つ子供が魔石の魔力を吸収することで、将来的に魔力の量が増えるのではないかと思うんですよ。

正直安全かと言われると断定はできない。なにせ試したことのない話だし。

それにフィニちゃんは常識外の子だ。今この瞬間にも何かが起きても不思議じゃない。


「それでもやる?」

「チュン!」

「・・・まぁ俺達で見てれば大丈夫か?」

「じゃあピッちゃんも呼ぼか。精霊関係っちゃ精霊関係やし」

「あと魔力の流れも重要だからすらっぴもだな」

「来てくれるやろか?」

「おやつ付きならいける」

「食いしん坊やなぁ」


我が家総出で見守ることになりそうだ。

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