389話
長くしてみました
「ほほー?活火山・・・ではあるみたいだな。煙いわ」
「ききー?」
「うんや。掃わんでもいいよ」
火山を上から覗き込んでみると、中で溶岩が動いているのがわかる。
一応生きている火山ということらしい。
これ本当に温泉あるんじゃね?っていう。じゃなきゃ沸かないだろうし。
「・・・とは言ってもこれ以上見る物ないか?」
「き?」
「いや、何か変わった物があれば拾いたかったんだけど」
「きー?」
「火山と言えば鉱石系かなーって思ってな。溶岩でも持ってく?」
内容物に関しては何か変わった物があるかもしれないからそれはそれでありだな。
ところでさっきからピッちゃんが全く喋ってないんだけどどしたの?
「どったの?」
「・・・るるー?」
「うん?・・・特に魔力は何もないと思うんだけど。バトちゃんどう?」
「・・・き!」
「だよな。何か見えたか?」
「るー?・・・るる」
「気のせいかも?うーん。ピッちゃんの何かに触れたか?」
とは言っても俺達には何も感じれない見えない。
ピッちゃんだけが何かを感じ取れているとすると・・・精霊関係か?
だけどここの階層のモンスターは全部見たしな。いるとすればそれは特殊な個体になるんだけど。
ピッちゃんはずっと火口をにらみつけるように見ている。うーむ。本当に何かいるっぽいな。
「いっそ近づくか?」
「るる!」
「ダメ?」
「るーるー!」
「敵意か・・・」
「・・・るる!」
「にゃ?」
「おん?」
「きき?」
何かを決めたようだ。ふーりんちゃんを召喚した。
そのまま何かをふーりんちゃんに伝えたら、そのままふーりんちゃんだけが火口に向かって飛んでいった。
「大丈夫なのか?」
「るー」
「見間違いじゃなきゃ相性いいって・・・ふーりんちゃんに相性いい?」
てかそもそもピッちゃんが知っている何かでふーりんちゃんと相性が良いって・・・あれ、それ一つしかないな。
『■■■■■■■■■!!!!!!!!』
「あ゛あ゛!!うるせ!っておおおおおお!?バトちゃん落ちる!?」
「・・・き~」(グルグル
火口の中から何かがふーりんちゃんに追われてきた。
それが外に出た瞬間、それから鳴き声のような悲鳴のような高音の音がした。
そういう方面に弱いバトちゃんは、防げもせずに直に影響を受けて落ちそうになるし。
うぇ。やっぱりそれだよなぁ・・・寄生型精霊。直接見るのはこれで2回目だな。
「にゃー」
「るる!」
「やるなら先に言ってくれません?」
「・・・き~」(グルグル
「ほれ、バトちゃんのお目目がグルグルよ」
「るる」
「にゃ」
「後で謝っとけよ?」
とりあえずバトちゃんをポケットにしまう。
モゾモゾしてるからとりあえずは大丈夫そうだな。
それにしても、あのクソ精霊あんな声出せんのかよ。一種の兵器だぞあれ。
目の前でスタングレネードが爆発した気分だ。食らったことないけど。
寄生型精霊はふーりんちゃんに追われて錯乱していたらしい。
それであの声なのだろうが。
火山の影響を受けているのか、体の色は溶岩のような色をしている。
見た目では寄生型と判断は出来ないだろう。
だが、不安定な魔力の形は、一度見たら忘れない。あれは間違いなく寄生型だ。
つまりは、普通なら人間の天敵だろう。憑りつかれる前に倒すのが正解!
「カルちゃんも呼んでくれ」
「るる!」
「ぐぅお!!」
カルちゃんも召喚された。
シュッシュとシャドーをしているからやる気満々。
「一回殴り倒したからって油断するなよ?」
「ぐぅ!!」
「ストイックだなぁ」
「るる~」
「何させてんだ」
お昼寝する時もしっかり布団とかかけてくれるよじゃないのよ。
後カルちゃんも甘やかすな。
寄生型精霊はようやく冷静を取り戻したようだ。
元が混乱しているような状態だから冷静と言っていいのかわからんが。
ともかくこちらに意識を向け始めたようだ。自分を追いかけた精霊猫をにらんでいる。
睨まれているふーりんちゃんはどこ吹く風だが。
「にゃ」
「毛づくろい」
首痒いじゃないんですよ。
俺がふーりんちゃんも見た瞬間、精霊の魔力が高まった。
『■■■■!!』
「るる!」
精霊の口・・・口?
口っぽいところから溶岩の塊を吐き出した。
それはピッちゃんの魔力弾げ迎撃されたが、ぶつかった瞬間にはじけ飛び、破片となってこちらに襲い掛かってきた。
「にゃ」
「ぐぅ!!」
カルちゃんが目の前に出て拳で迎撃。
ふーりんちゃんはしっぽを伸ばして残りを撃ち落とした。
「・・・お前そんなことできたの?」
「にゃ?」
「るる」
「それもそうか・・・」
巨大化出来るんだから当然でしょって・・・納得いかねぇ。
それにしても、地味に厄介だわ。
迎撃しても周辺に被害がでる。完全に防ぐにはこちらで受け止めるか、完全に消滅させるしかないか。
俺とピッちゃんの魔法だと防御の方がいいか?
いや、それよりふーりんちゃん達を攻撃優先させて素早く倒した方がいいか。
防御に回ると面倒だな。
「行ってこい!」
「にゃ!」
「グゥゥゥ・・・オオオ!!」
「・・・え」
「るる?」
ふーりんちゃんがカルちゃんの拳に纏わりつく。
そしてカルちゃんの魔力が急上昇。拳に集中される。
唸り声を上げるほど力を込められた正拳突きと共に、拳に纏わりついていたふーりんちゃんが射出。
自分の速度+カルちゃんの正拳突きの速度+魔力によるブーストになって音速を超える。
寄生型精霊は、溶岩のような塊のような形をしていたが、その塊の中心部に穴が開いた。
高速でふーりんちゃんが飛び、撃ち抜いた。
・・・え、何今の攻撃。
「ぐぅ」
「え、何々?ふーりん砲?え、やめてよいきなりそういう技撃つの」
混乱するわ
ふーりん砲とか言うおもしろ技は一旦置いておこう。
今は精霊の様子を見なければ。
とは言うが、あれだけ魔力の籠った一撃で体を抜かれたら流石に倒れると・・・
「思ってたんですがね」
「るるー?」
「いや、生きてるともいえないかありゃ」
完全に胴体に大きな穴が開いている。
体の中心部に綺麗にだ。さらにふーりんちゃん達の魔力が周ってさらにダメージになっていることだろう。
体を魔力で構成している存在に対し、外部から無理矢理魔力を入れているのだ。
本来なら死んでもおかしくないはずなのだが、まだ生きている。
苦しみうごめきながら、まだ生きているのだ。
「・・・ふーりんちゃん。止め頼んだ」
「にゃ~」
ふーりんちゃんの巨大な爪が、精霊にとどめを刺す。
体を保てない程に細かく切られ、完全に消滅した。
流石というべきか。
元より自分だけては生きられないからと別の生物に寄生するほどの生きることへの欲求。
それに伴う生命力の高さ。
魔力の有無は命の根本にかかわることであるからどうしようもないが、それ以外でならばなかなか死なない。
出来ることなら、あまり戦いたい敵ではないな。
火口にあった違和感はそれだったようだ。
ピッちゃんが見ても、今は何もないらしい。
なら帰るか。フミ達も待っている。
「ところでふーりん砲って何さ」
「るる」
「にゃ」
「ぐぅ」
「そうじゃない」
見ての通りってそういうことじゃないんです。
何故にあんな技を思いついたのかと。
家帰ったら聞くか。
あのままボスに挑んでも良かったのだが、今日のところは帰ることに。
地味に嫌な予感がするんだよな。なんかこう・・・めっちゃ熱いと思うんですよ。
「それで?あれ何?」
「るるー」
「にゃ」
「ぐぅお!」
「だからそうじゃない」
このやり取りはついさっきやった。
「切っ掛けから行こうか」
「ぐぅ」
「遠距離攻撃?」
元々は、カルちゃんが遠距離攻撃を持っていないことから始まったらしい。
確かにカルちゃんは肉弾戦も肉弾戦。拳で戦うタイプだ。
遠距離攻撃はピッちゃんのイメージから使うことも出来ない。
ふーりんちゃんと違って、自由自在に体を変形させられないってのが原因だな。
そこでピッちゃんとふーりんちゃんとカルちゃんで考えた結果があのふーりん砲らしい。
「るる?」
「にゃー!」
何故その技になったか。
先ず、大前提として、ふーりんちゃんとカルちゃんはピッちゃんの召喚精霊ということだ。
つまり、戦力としてカウントするなら3匹で1つだ。
ならば、個々で全部出来る必要はない。
ちょうどふーりんちゃんの悩んでいた部分の解消にも繋がるとのことで、ちょうどよかったとのこと。
「ふーりんちゃんの悩み?」
「にゃ~・・・」
「火力不足・・・?」
どこがだと思わんでもないが。
だが話を聞くとそういうことらしい。
ふーりんちゃんは変幻自在。体を大きくして無理やり押しつぶすってことも出来る。
だが、足りていないらしい。何がって、火力だ。
一撃で何でも倒せる切り札的な技がないらしい。いわれてみればそうだな。
攻撃力の高い攻撃というのはあるが、それは力技で必殺技じゃないってことで、何か欲しかったらしい。
悩みの類が贅沢。
「それ結果ふーりん砲と」
「にゃ!」
「ぐぅお!」
ふーりんちゃんの変幻自在で弾を作る・・・弾になる。
それをカルちゃんのパンチ力で撃ちだす技。合体技が出来上がったと。
「ピッちゃんは何してるの?」
「るる!」
「あー・・・あの魔力はピッちゃんのか」
通りでカルちゃんの魔力が増えたわけだよ。
召喚主であるピッちゃんは、呼び出した精霊に魔力を送って強化が出来るそうだ。
それを利用して、一撃の威力を上げることだけに注力していたそうだ。
何気にふーりんちゃんが形状を変えれば貫通弾だったり爆発だったりとどんな効果でも出せるらしい。
そしてカルちゃんも高火力の一撃必殺タイプ。連打を意識した連発タイプの2種類を使い分けられるらしい。
練習では、ふーりん砲散弾バージョンも出来たとか。
「ふーりんちゃんばらけるの・・・?」
「「にゃー」」
「ちっさくなった!?」
なにそれ俺知らない。
目の前にはちんまいふーりんちゃんが2匹。自分を細かくして増えてる・・・のか?
なんでもありかおい。
だけどサイズを保ちながら増えることは出来ないらしい。そこは『分身』みたいにはなっていないな。
それに増えてもふーりんちゃん自体は1匹なので、同時に動けないんだと。
今みたいに一緒に鳴くか、カルちゃんの腕に纏わりつくかくらいしかできないらしい。
「ああ、それで散弾」
「「「「「「「「「にゃーんにゃん」」」」」」」」」
「うわゆるキャラみたいだ・・・」
手にいっぱいのふーりんちゃん(極小)が・・・
い・・・いかんぞ。普通につぶしそうだこれ・・・
「・・・戻って下さい」
「にゃ?」
「・・・うん。やっぱり普通サイズが一番です」
「にゃ~」
首の下の撫でると目を細めて気持ちよさそうに体を擦りつけてくる。
・・・こういうところは猫なんだよなぁ。
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