387話
健康診断が近づくと色々面倒になるタイプです。予め準備しなければいけないので・・・
魔法講座は週に一回行われることになった。
メンバーは魔法スキル、またはそれに準ずるスキルを手にいれた人から参加することに。
初回の目的として、俺の普段意識していることとかは伝えられた。次の講習で2人がどれくらい伸びてくるかによって俺の指導力が問われるというわけだ。
まぁそこで高評価だったところであれなんですけど。
俺が教えるのは日本の冒険者だけだろうし。海外の人たちについては藤岡さん達に任せた。
さて、そろそろ俺の本業に戻ろう。
ダンジョン探索。新しいダンジョンが出てきたことで少し注目が薄れる前のダンジョン。
そちらの探索が俺のメイン業務になりつつある。これは前も言ったな。
メインと言いつつも、何気に最近やらなきゃいけないことは増えているので、探索の回数自体が減っている。
週に1層分更新出来ればいい方だな。
だから62層トリケラトプス階層を突破して次の階層に行くのも63層。
こっちのダンジョンはボスを毎回倒すから宝箱はいっぱい出るんだが・・・問題はそのボスの多様性よ。
ここのボスはワニだったな。なんていうんだこれ。こういう恐竜いたよな・・・?
青白い鱗に俺たちをまとめて丸呑みできそうなくらいの大きな顎。そして水のブレス攻撃。
ぶっちゃっけここ最近で一番強かった敵・・・だと思ったんだけどな。しーちゃんとの相性が良く無さ過ぎた。雷で痺れてしまうからタコ殴りですよ。
それを乗り越えての63層。
ボスで出てきたモンスターが普通に跋扈しているのが次の階層。
そして場所が海って言う。
「なんで」
「ワニやから・・・」
「うー・・・」
「ぴっぴ!」
すらっぴは大喜びだよ。
久しぶりだな海階層。22層は海岸って感じだったが、ここは完全に海だ。しょっぱいし。
陸もところどころにあるみたいだが、今いる階段の下の場所を含めても数か所。
こうなると非常に良くない。すらっぴと俺以外まともに戦えない。飛んでる子は飛んでるけど海に攻撃しにくいし。
ちなみに珍しく2種類目のモンスターもすでに見つけている。てかこっち来てね?
「・・・カモメ?」
「毒吐いてくるから気いつけてな」
「うい・・・毒?」
「あ、お姉さまニホリ。こっちですよ」
「うー♪」
「ちょい・・・毒・・・?」
え、何気に普通に毒攻撃してくるのって初めてじゃない?
解毒ってロラちゃんの薬でどうにかできっかな。
・・・あれだな。安全に行きましょう。カモメとの距離は結構離れている。
「皆、一斉によろ」
「ぴ!」
「きき!」
「るる~」
「めぇ」
「クゥ」
「魔法組一斉攻撃最大火力ー・・・行けやオラァ!!」
俺達の魔法にはそれぞれ特徴がある。属性ごとの特質ともいえる。
そしてそれは魔法の使い方にも現れる。だから魔法もそれぞれバラバラだ。
だが、それでも共通する魔法が一つだけある。
圧縮と解放だ。
炎の赤、風の緑、水の青、雷の紫、土の茶色、無属性の白
それぞれの色の魔力の塊がカモメの群れに飛んでいく。まっすぐに、素早く。
それは特定のカモメに当たることはない。塊が中心部に辿り着いたその瞬間。
強烈な衝撃が俺たちに向かってきた。
「防空壕ってな!!」
地面を叩いて、俺たちのいる部分を凹ませる。
強烈な風は俺たちの頭上を取りすぎていく。時々煽られた海の水が流れてくるが、それをすらっぴがその場から取り込んでいく。
風はすぐに収まった。
「・・・どうよ」
「・・・ききー!」
「うしうし。戻すか」
もう一度地面を叩き地面を戻る。
上空には何もいない。特定の属性を帯びた圧縮された魔力の塊がカモメの群れの中心部で爆発。
それもそれぞれが属性を持つ魔力。つまりは、ふーちゃんの爆発は鉄が一瞬で沸騰するほどの熱があり、それが爆発する。
それと同規模の魔法が6個。63層だろうとなんだろうと跡形もなく消し飛ばす。
問題は威力が高すぎて普段使いは出来ないってこと。
爆発の影響で、海にも穴が開くくらいだ。
「いや危ないですから言ってくれませんかね!?」
「あふん」
結界を張っていたポヨネにドツカレタ。
「急にあんなの使わないでくれますかね!?」
「でもなぁ、毒って言ってたし」
「毒を吐いてくるってだけなんでバトちゃんだけで圧勝できるんですけど!?」
「ああ、そうなの」
「きき?」
「そうだな。次はやろうなぁ」
「きき~」
うん。まぁオーバー火力だったのは認めよう。まさか跡形もなくなるとは・・・思ってたけど。
てか海水飲みすぎてすらっぴが膨れとる。
「ぴ~」
「デブったなぁすらっぴ。吐き出していいぞ?」
「ぷえ」
そんな声出るのかお前。
すらっぴからじょうろみたいに水が出ている。なんかかわよい。
ただその勢いだとめっちゃ時間かかるから一気に小さくなれんのか?
「ぴ?・・・ぶえ」
「濁点着いた」
5分ほどで元のサイズになった。うんうん。これが一番可愛い
だが忘れていた。ここのモンスターはワニだったことを。
「ワン!」
「あん?」
「ぴ?」
「恭輔さん!!」
「・・・!?」
俺達を海中から見ている目が複数。
それも目だけで俺と同じくらいの大きさ。恐竜で言うならデイノスクスなのだが、それよりでかいだろう。
ぶっちゃけ怪獣かなんかだろこれ。
「ギガントダイルが7体です!!」
「ふぇ~」
「いや余裕!?」
「まぁ余裕やろうなぁ」
「うーうー」
確かに巨大なのは強さだ。
透き通っている海だからその体が良く見える。
普通なら死を確信する状況だが、ぶっちゃけ余裕だ。他のモンスター・・・ティラノに囲まれた方が慌てるかもな。
弱点が雷であることを呪うがよい。
「しーちゃん任せた」
「めぇ!!」
しーちゃんからバチバチ音がする。
見ると紫の光がところどころに奔っている。
俺は俺でかなり広い範囲を指定して魔法を行使する準備を進める。
『真化』も出来る範囲の最大稼働で。
今から7体のワニを全部空に持ち上げる。
「大規模ちゃぶ台返し!!!」
逃がさないようにワニを全て壁で囲む。
海底の土も含めて全部を纏めて持ち上げる。
いや重いなこれ。
だが成果は十分だ。ワニを含めて広い範囲の地面が持ち上げられる。
しーちゃんの準備も整った。既に雷が空に撃ち込まれている。
「行くぞ!!」
「めぇ!!」
すぐさま土を操作して水とワニだけにする。
次の瞬間、雷がすべてを消し飛ばした。水は蒸発し、ワニは雷が直撃した部分は残っていない。
雷の殺傷力は電圧でなく電流で決まる。
アンペアが高くないと、電気が流れても人間は死なない。
しーちゃんの雷は、電圧電流共に規格外の数値を叩きだす。そしてその雷は、当たった対象を焼き尽くして次の標的に向かう。
触れただけで水は蒸発し、肉体は焼き消える。そのあまりに速さに、対象は当たったことを認識できない。
なにせ当たったら死んでるからな。微妙にワニの体が残っているのは、強すぎて体に電気が回る前に突き抜けたからだ。
だから持ち上げた際に下にいた個体は体が残っていない。すべての雷が集合した結果、全身が焼けたのだ。
「だからやりすぎだと言ってるですよ!!」
「おっふ」
「むめ」
「なんで持ち上げる必要あったんですか!?なんで跡形もなく消し飛ばす必要あったんですか!?」
「・・・そらぁな?」
「めぇ」
「・・・なんですか」
「ストレス発散」
「めぇ」
やりたいだけ。
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