386話
「これが魔力・・・」
「青い線がいっぱいです・・・」
「うぃ。成功ですね」
「恭輔君はこれを見てたんですね」
「あれ?藤岡さん見えてなかったんですか?」
「こんなにはっきりとは見えてなかったですね。もっとこう・・・あいまいというか」
「ふむふむ」
やはり魔法と使うだけではダメみたいだな。
魔法を使えて、さらに自分で意識してようやくちゃんと見ることができると。
じゃあこれの練習も無駄じゃないってことだな。見れるってだけで結構魔法の練習に役立つし。
「それじゃあ、今度はその状態で自分の魔法を見てみてください」
「「はい!!」」
文字通り目に見えてわかりやすいのが出てきたから、先ほどより返事も力強い。
こうして魔法の練習してるとのめり込んでいくんだよなぁ・・・
先ほどとは違い、魔力が見える状態で魔法を扱う3人。
こうすることで、自分が今どれくらいの魔力を使おうとしているのかがわかる。
朝木さんは先ほどより洗練されてきたし、今井さんは無駄な魔力が徐々に減ってきている。
だが風の勢いは変わっていない。うん。イメージもちゃんと出来てるな。
「どうですか?」
「全然違います!」
「まぁ今井さんはそうでしょうね。朝木さんはちょっと差を認識しずらいでしょうけど、これを続けるといいことがありますよ」
「いいこと?」
「まぁ単純に、魔法の威力を上げやすくなるってだけなんですけど」
「そうなんですか?」
「ええ、少ない魔力の運用を覚えると、普通の魔法を使う時の効率が良くなるんです」
これは俺の実体験だ。より少ない魔力で大きな魔法が使えるようになる。
今の時点でもこの成長は続いているから、実質は無限に効率は良くなるものと思われる。
俺の場合はスキルもあるから猶更ってのはあるかもしれないが。
「藤岡さんもどうですか?」
「・・・驚きました。こんなに違うんですね」
「まぁそうなりますよね・・・藤岡さんはちょっと変わったこともやってみましょうか」
「はい」
「手の火を腕に纏わせられます?腕に魔力を纏わせるイメージで」
「・・・熱くないですかそれ」
「クゥ?」
「・・・大丈夫なんですね」
「なんか自分で生み出した魔力だけなら熱くないんですよね」
正確には、自分の体から生み出した炎なら、体から離れるまでは熱くないってことなのだが。
これはふーちゃんが自分のしっぽに纏わせているのを見て聞いて判明したことだ。
ふーちゃんはしっぽの上の火を浮かせて使っていたが、それは火が熱いからって思っていた。違ったんだけど。
「・・・へぇ。こんなことも出来るんですね」
「その状態で殴ると燃えますよ」
「・・・まぁ機会があったらで」
「残念」
理屈的には俺のアイアンナックルと同じことができる。
巨大な炎を拳状にして敵を殴る。威力は本人の腕力に依存する部分は出てくるが、割と効果的なこともあるのだ。
「ちなみにそれ続けるともっと自由に炎が動かせるようになるのでオヌヌメです」
「・・・ヌ?」
「忘れてください」
俺のテンションが上がってきているな。変なこと言ってる。
「朝木さんも今井さんも、当面の目標は規模の大きい魔法の行使ではなくこういった感じの細かい操作ですので」
「大きいのはやらないんですか?」
「やらないってか・・・意味ないんですよね」
「意味がない?」
「イメージ次第で使える巨大な魔法はイメージ次第で使えちゃうんですよね」
問題は魔力の消費だ。そこをカバーするのに操作性と効率が必要ってことで。
だからやるべきことはその一点に尽きる。
「まぁ意味がないは言い過ぎかもしれないですけど、あんまり練習として見るなら効率は良くないですね」
「なるほど・・・」
「はいはい!」
「ハイなんですか今井さん」
「大門先生の一番強い魔法って何ですか?」
「・・・何だろう」
「え?知らないんですか?」
「知らないってか・・・自分の魔法って大体範囲が広いかどうか何で」
威力に関しては・・・重さと密度に依るのか?
だからどの魔法でもある程度の威力は最低限出る。てか、サイズ大きくすれば全部同じに出来るし。
最初からは荷が広いって言う意味なら・・・鉄器流星かな。派手だし。
「みたいです!」
「・・・実はここに動画が」
「何で?」
なんで藤岡さんがそれ持っているのだろうかという疑問。
・・・ああ、もしかして親父が2人に見せるために送り込んできた感じ?
「あと魔法の研究ってそんなにしてなかったんでちょうどいいかと」
「なるほど・・・?」
まぁだから腕に纏わせるとかやったことなかったって話か。
そら普通要らんしなそれ。ぶっちゃけ効果的な場面はあれど普通に火の球ぶつけてた方が速いし。
俺だって色々魔法作るけど意味ないのもいっぱいあるし。
最近だとゴーレムとかな。理論上は派手で強いんですよ・・・意味ないだけで。
「えぇ・・・じゃあ見ます?」
「見たい!」
「僕も見たいですね」
「じゃあ見ますか・・・ちなみにいつのですこれ」
「ティラノのやつです」
「割と最近じゃないっすか」
初お披露目ここかよ。
「・・・こんな魔法僕たちも使えるようになるんですか?」
「まぁ世界最強の魔法ですから、かなり先の話ですけど・・・」
「出来ますよ。めっちゃ使い込めば」
「クゥ!」
事実だ。
俺は『真化』込みでの魔法の威力。ふーちゃんは素の魔法の威力だが、その実態的に実はふーちゃんとの差はほとんどない。
まぁ『真化』の影響が身体能力の方面に大きいってことがあるから魔法での恩恵を感じにくいってだけなんだけど。
ふーちゃんは魔法組の中でも魔法特化。しーちゃんに並ぶ魔法が得意な子だ。
特に範囲攻撃という面については俺ではかなわないだろう。いつも俺たちを巻き込むからって手加減しているが、本気で戦わせるとまた森が消えることになる。
すらっぴは『溶解液』とのコンボに特化。バトちゃんも広範囲の魔法はあるが、一番得意なのは高機動戦。
しーちゃんは雷による速攻。そしてふーちゃんの高火力広範囲の特化だ。
ピッちゃんは特殊なので分類しにくいが・・・しいて言うなら汎用特化だ。なんでもできる。
この特化している面に置いては、『真化』込みでも俺は魔法では勝てない。
最近魔法を使う機会が減っているのはそういう面もある。俺がやるより効率的だからな。
ちなみに今の動画ではふーちゃんの本気魔法・・・ニホリが狐火と名付けた魔法が映っているの。
その魔法は九つに増えたしっぽの先から圧縮された紅色の炎が相手に向かって撃ちだされる魔法なのだが・・・着弾の瞬間に大爆発する。
当たるとドロップ品事消えるので使用は禁止してるけどな。
それを見た今井さんは、ふーちゃんを撫でていた手が止まったくらいだ。
撫でてくれないの?と言わんばかりにふーちゃんが今井さんを見つめてたらまた撫で始めたが。
「ていうか・・・ふーちゃんさんも強いんですね」
「うちの古株ですし。キャリアで言うなら藤岡さんとほぼ一緒ですし」
「・・・そういえばそうなんですよね」
「ええ!?」
「・・・大門先生は、一体いつからダンジョンに?」
「えーっと・・・ダンジョンが発生してすぐだから・・・もう1年経ちますね」
「間違いなく世界で一番長くダンジョンに潜ってる人ですからね」
「最近はどうなんでしょうね。ちょっと忙しかったんで」
「そうなんですか?」
「まぁ訳ありの子のお世話とかしてたので」
「ああ・・・」
「「???」」
藤岡さんは事情を知っているので理解してくれたが、他の2人には流石に教えられない内容なのできょとんとしている。
まぁ仕方ないわな。もっと強くなって、世界中で冒険者が増えていったら、話すこともあるかな?
それより前に俺の夢が叶うかな?さてどうなることか。
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