373話
朝起きてインコと戯れると一日機嫌がいいのが僕です
俺がうちに出入りする猫たちに相談してるところを見られてからハクコちゃんが心なしか優しくなった。
結果オーライとはこのことか・・・
ところでハクコちゃんの種族なんだが、考えた結果白念虎と呼ぶことにした。
念動力のように物体を浮かせることができる白虎ってことで名付けた。
割と気に入ってくれたようで、聴かせた時は少し笑顔だった。
さて、そんなハクコちゃん。
うちにくるまでに俺が大いにやらかしたわけだが、お咎めは特にない。
俺からは特に言っていないが、親父も・・・てか、ダンジョンに関わっている人間なら大体想像しているだろう。
間違いなく、俺がやったと。
だからといって何か出来るわけではない。悲しいことに、俺の実力が人間に発揮された場合にどうなるかが証明されたからだ。
これ以上俺の気分を害したらどうなるか。ハクコちゃんという、先日まで知ることすらなかった子ですら研究所が一つ消され、少なくない死人が出た。
人間を殺すのは初めてだったが、特に何も思わなかった。
ていうか、死んで当然だと思ったから殺したのだ。何かを思うはずがない。むしろスッキリした気分だ。
ハクコちゃんにしていた研究自体は、研究所と共に地面の中に沈んだ。
その時に破壊した物をいくつか見たが、使われ方を考えただけで、今俺の手が届かないと思っている人間も殺しに行きたいくらいだ。
ハクコちゃんの体には、いくつか傷があった。
今はロラちゃん印のお薬(最上級)を飲ませたので跡も残らないが、それを見た瞬間、頭が沸騰した。
『真化』が本来の性能を超えた。あの時は、恐らく今までにないほどに魔力が膨れ上がった。
その結果が研究所の消滅。巷では何か危険な研究をしていて、その失敗の結果だとか言われているが・・・まぁあながち間違いでない。
俺を怒らせるって意味では、危険な研究だからな。
まぁそんなわけで、ハクコちゃんに関しては問題ないのだ。
親父もうちに来たハクコちゃんを見て、察したのだろう。特に何も言わなかった。
正直、人を殺したことに関しては何か言われると思ったが・・・これも何もなかった。
親父は先生から先に聞いてたから、俺が知ったらそうするだろうと予測していたのか・・・それとも、親父が俺に教えるように先生に言ったのか。
どちらでも構わなんだけどな。むしろ褒められたくらいだ。
その事件から2週間。
ハクコちゃんの様子を見ながらダンジョンに潜り、新しい素材を発見してを再び繰り返す生活になってきたころ。
ようやくうちの人間が安全で信頼できることがわかったのだろう。母さんや親父に対しても擦り寄るくらいにはなった。
良きかな良きかな。
「うわ、恭輔さんから人間の文字がなくなってる」
「まー?」
「・・・あ、出てきた」
「なんだそのふわっとしたの」
ポヨネに俺の事を『鑑定』してもらった結果、何か俺の人間離れが進んだようで。
まだ余裕があると思っていたが、一回本気でぶちぎれた結果急速に進んでしまったようだ。
能力の上昇が、俺に対して影響を与えるとは知っていたが、まさかここまでとは。
だからと言って特に変化はないのだが。
そもそも人間の方が少ないしなうち。母さんに言ったら
「あら~?恭輔は妖精さんだったのね~?」
とか言われたし。
己の母親ながら何かこう・・・飛んでるよなって。
・・・え、俺妖精なのかな。
「まぁ妖精ではないやろけど、実際何になるんやろな」
「俺の種族ってこと?」
「せや。名前が決まってないことになるーいうことはないやろ?」
「何でですか?」
「やってあの女神直々に恭輔に手を加えた結果がこれなんやろ?やったらあれの考えた何かになるんやないんか?」
「あ、なるほど」
「言われてみれば何になるんだ俺」
「それが私にももうわからないのー」
「おおおおおお!?!?」
「みゃぁぁぁぁ!?!?」
なんっ!!・・・後ろに出てくるなアホ女神!!
「危ないのだわ!!明らかに殺す気の一撃だったのだわ!!??」
「びっくりした!めっちゃびっくりした!!」
「・・・なんや前のこんなん見た気がするんやけど」
「そうなんですか?学べばいいのに」
女神が気配の察知は全く出来ないので本当にわからない。
後ろに出てこられたら本当に驚く。
考えても見てくれ、自分の後ろには何もいないと確認していたのにだ、急に背後に自分の命を軽く取れる奴が現れたら驚くだろう!?
本当に反応できないんだからな!?後魔力もデカすぎてビビる。
ちなみの、撃ちだしたランスはフミが高速で移動して破壊したので周辺に被害はなし。
あざっすフミさん。
お互いに落ち着いたところで話に入る。
「え、何しに来たの・・・?」
「あ、貴方の反応が変わったから様子を見に来たの・・・だわ」
「本当に落ち着けてますこれ?」
「まぁ本人たちがええならええやろ」
落ち着いてます。
「反応が変わったと言うのは、人間ではなくなってきていると?」
「そうなの。元から予定より早かったのにさらに早くなってるのだもの」
「原因は・・・まぁわかってますよね」
「ええ、本当の意味で『真化』を使ったから、こうなるのは当然なのだわ」
「本当の意味・・・?」
「怒りに任せて、感情を暴発させて使う。今足りない物を強引に補うのが『真化』・・・強くなるというと、ちょっと違うの」
「・・・ああ、人型と戦った時みたいに使えないのはそういうことか」
「そう。あの子と戦う時は、あの子に今のままでは勝てないとわかっていたから使えたの」
「今回は、全部潰そうとして足りないと思ったからってことか?」
「正解。実を言うと、あれくらいの被害を出すなら十分足りていたのだけれど・・・徹底的にって思ってたでしょ?」
「・・・思ったわ」
「その気持ちに反応したのね。まだ植物を自由自在には操れないはずなのに使えたでしょ?」
「そうなの?」
「え?覚えてないん?」
「研究所を沈めたあたりで意識があいまいでな・・・」
正確には、魔法を発動させていた感覚はあるのだが、それをちゃんと操っていた記憶がないのだ。
目の前の光景を引き起こしたのは自分であるという自覚はあるが、どことなく映画を見ているような感じがあった。
「めっちゃ正確に使っとったで」
「そうですね。近寄る人間を選んで殺してましたし」
「選んで?」
「ハクコちゃんだったかしら?その子に関わっていた人間で、ダメな人間をあなたが選んでたのだわ」
「はぁ?どうやって」
「知識が急に頭に流れてくる」
「ッ!!」
「それも始まってるのね。本当にあなたは・・・」
「・・・知ってるのか?」
「知ってるも何も、それ私も同じ現象が起きるし・・・」
「・・・うん?」
「あ!今のなし!!」
「いや無理では???」
そんなこと聞かされて無しってのはできませんよ?
だが女神は完全に無しにする気のようだ。
顔を背けえて口笛まで吹き始めた・・・上手いのむかつくな。
仕方ない。無理やり言わそうにも実力差がありすぎて無理だ。
ここはあきらめるべきだろう。
「ヒントはいいんじゃない?」
「ヒント・・・まぁいいのだわ。知識が流れてくる現象。あれは、知識を知っている何かがないと成立しないのだわ」
「・・・?」
「知っている何か・・・?」
「なんやそれ?」
「まだ秘密なのだわ~」
知識が流れてきた結果、女神曰くダメな人間が判別できて、その人間だけを殺したと・・・
だがなんだ?知識を知っている何か・・・恐らくそれから俺に流れてきている。または無意識にその知識を見ているって考えていいんだろうが。
肝心の何かってのがわからない。
それに女神にも同じ現象が起きると・・・うーん。全くわからん。
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