367話
前書きに追加することでもないですが、うちにインコが来ました。
大門家ではなくうちに。
「キュワ」
「やっぱり爪で捕らえるやり方だよな」
「キュ」
「んーそれでもいいんだけど・・・それだと大きい敵とか・・・まぁオミちゃんだけで戦うってことはほとんどないと思うけどさ」
オミちゃんと話ながら色々確認中。
俺だけで考えてもすぐ詰まるしな。
確認することは主にオミちゃんの戦い方について。
今の今まで狩りをしていた時、どうやって狩りをしていたかを聞いている。
大体が上空から隙を見せた獲物を爪で捕まえて絞め殺すってやりかたが多いらしい。
要するに一撃必殺。場合によっては鋭い嘴でつついたりも出来そうだが。
まぁやっぱりダンジョン内で単独で戦い続けるのが向ている子ではないな。
そもそもそういう野生動物の方が少ないんだけど。
「となるとやっぱりチーム組まなきゃダメか」
「キュ」
野生の世界では、群れを組んだとは言え狩りが成功する確率は低い。
それは獲物が逃げるからであって、ダンジョン内のように敵が向かってくる場合なら話は違うのだが。
オミちゃんの場合、浅い階層なら大丈夫だろうが、知能が高いモンスターと戦った場合に能力の差とか関係なしに負けかねない。
天都さん家のモンスター。クロンちゃんと同じ不意打ち特化と言える。
正面からの戦いが苦手だと、途中で躓く。
「まぁお前らはそこまで下に来なくてもいいんだけどな?」
「キュ?」
「だってあくまでも必要なのは稼ぐことで、それだけならそこそこで止まればいいし」
魔石と素材だけ回収できれば後はなんでもいい。
そして下に行けば行くほどその2つは良い物が手に入るが、そんなに下の物はいらないのだ。
まず、使い道がない物はいらない。
需要の低い物もまぁいらんだろうな。それは人間がやった方がいい。
つまり、俺の目標を達成するためには需要の多い物を大量に人間がいなくても手に入れられる階層で戦えるようにすること。
新しいダンジョンなら今のところどこでもいいだろう。人がいないと手に入らない物がある階層はなしだが。
前のダンジョンだと・・・いくつかあるが、一番いいのはオークか?
肉なら自分たちでも食べられるし、売るのにも上手い肉だから需要はあるだろう。それなりに強敵になるだろうことが予測されるが。
「そこは俺次第かな」
訓練次第。俺抜きでも、問題なく戦えるくらいにすればいい。
最初のうちは俺同行で戦って、ある程度強くなったら俺抜きで。そして最終的にうちに来た子達にみんなが教える。
この流れを目指す。
「んで、そこの先駆けがオミちゃんとフィニちゃんなわけ」
「・・・キュ?」
「んー・・・まぁ強く成ろうってことだけ覚えといて」
「キュ!」
納得してくれたようで。
そもそもだ、無事にフィニちゃんを生むってことを考えてうちに来たのだオミちゃん。
初めから完全に俺の世話になる気はなかったらしい。
むしろ自分で食べる分は自分で獲るという考えが染みついている分、そうじゃなくなった時に違和感がすごいんだそうだ。
産卵の時は逆に面倒見てもらわないと問題だからいいみたいだったけど。
この話はルミネにもしている。
ルミネは元から人間に飼われていた子だから、その辺とのギャップがあるかなとか思ったけど、うちには飼い犬・・・飼い狼の癖にバリバリ戦うコロちゃんがいるから何ら問題なかった。
むしろああいう狼が普通だと思ったのか?だとしたら声を大にして言いたいが違います。
現代日本であんな戦う狼はコロちゃんだけです。
「その辺わかってる?ルミネ」
「・・・わん?」
「いやかっこいいんだけどさ」
「キュワ~」
あれぞ目指すべき野生の姿じゃないんですよ。
ちなみに、今オミちゃんとルミネがどうなっているか。
オミちゃんは俺の部屋に置かれた新しい止まり木に止まって翼を毛づくろいしている。俺がやりたい。
ルミネはゴロゴロしながら手の届かないところを舐めている。そういうところを撫でてあげると喜ぶ俺がやりたい。
・・・・・・・・
「わん?」
「キュ?」
「うーうー・・・う?」
「いや我慢出来なくって」
片手にルミネ、片手にオミちゃん。
両手でお世話してる俺・・・無敵か?
「う」
「はいすいません」
話すすんでないだろと言われましたその通りです。
ニホリがお茶とお菓子を持ってきてくれた。
紅茶とクッキーだな。
ただ
その量は明らかに多い。ニホリと俺含めて多い。そもそもカップは3つある。
つまり・・・
「お邪魔します」
「うー!」
そうです人型です。一番ニホリに餌付けされてる存在ですはい。
ちなみにフィニちゃんの事も知っている。その時の返事は、そう・・・の一言のみ。
視線はその日のおやつにしか向けられてなかったよ。
実のところ、俺の目標を叶えようと思えばすぐにでも叶うと思う。
この人型に頼めばいいだけだ。
てか、あっちからそれを提案された。
俺のやろうとしていることは、最終的に彼女たちの目標の達成に繋がるらしい。
だからこそ、俺に対する助力は惜しまないとも言われた。
だが、俺はそれの返事を保留にした。
その時は返事は保留にしたが、ぶっちゃけ今返事しても問題ないのだろうが・・・
「まぁ・・・俺の最後の目標だろうからな」
「う?」
「ううん。何でもないよ」
「・・・うー」
俺の人間を完全にやめる日は、徐々に近づいてきている。
『真化』を使わなくても、俺の能力は上がっている。それは、違う種族に近づいていると言うことになるからだ。
これは俺だけの話だから、他の人間が冒険者になって同じ能力を手に入れても何も起きないらしいが。
最後というのは、そういうことだ。
俺が人間として最後に達成する大きな夢。
それも自分のエゴで行う物だ。ぶっちゃけ、俺がこんなことをしても、世界中の動物を助けることは出来ない。ルミネの様に、人間に虐げられる子もいなくならない。
少しだけ、世界からそういった子達を減らせるくらい・・・やる意味なんてそれくらいだ。
けど、やらなきゃいけないと思ったからやるのだ。
人間のうちにやりたいのは意地のようなものだ。最後に、成し遂げたい。
そして、これは親父たちに対する恩返しでもある。
俺を生んでくれた、彼らとの生き方を教えてくれたあの人たちに受けた恩。
それを、皆に返すんだ。きっと喜んでくれると思うから。
「・・・」
「う?」
「美味しい。大丈夫」
「うー?うー」
「・・・問題ない。ちゃんと叶う」
「う?」
「うん?」
「・・・なんでもない」
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