おまけすらっぴ
これは、ダンジョンができてから、少し後の話。
「ぴぴー!」
「ええ、外でたいのー?」
「ぴー?」
「そりゃダメでしょ」
「ぴー!」
「そういわれてもなぁ・・・」
この日、すらっぴはごねていた。外で遊びたいと。
理由は簡単。ダンジョンで恭輔にテイムされてから数日。その間、ダンジョンに潜ることはあれど、それ以外は特になし。
ダンジョン内は延々と洞窟が続く。いくら元の住みかと言えど、窓から見える明るく、暖かそうな庭の光景が広がる外の誘惑に精神年齢子供なすらっぴが耐えられるはずもなく。
恭輔的にも、まぁ今日は休もっかなぁと思っていた矢先のことだった。
「いや、遊ぶのはいいんだけどね?」
「ワン?」
「だって、スライムだもんな・・・」
大門家の庭はそれは大きい。家にいる動物たちが退屈しないようにとかなりのサイズがある。
それでも、道路から全く見えないようになっているかというとそんなわけでもない。道路に繋がる方に庭に直行できる門があるのでそこから見える。
「庭に水まんじゅうが飛び跳ねてたらびっくりされちゃうでしょ?」
「・・・ワン」
「ぴー!」
「うーん、言わんとすることはわかるんだけど・・・」
外に出て遊びたいという点については問題ない。
ただ、やはり近所の人に見られる可能性があるという一点が問題だ。
ダンジョンに関することは秘匿事項。そのために、すらっぴの存在は隠さなければいけない。
「きき~」
「あ、おはよ」
「ぴっぴー!」
「き?・・・ききー」
「ぴー!」
「バトちゃんはインドア派っと・・・」
バトちゃんは別に外じゃなくてもいい模様。まぶしいしね。
話を戻す。
ようするに、周りから絶対に見えなければ庭には出れる。
問題は、その方法だ。
「どっちにしろいきなりはできないという」
「ぴ?」
「いやね?。うちの庭の構成上、ただ壁があればいいってわけでもなくてな」
そもそも、庭のコンセプトは動物が退屈しない空間だ。
これは、大門夫妻のこだわりが強い。そのため、恭輔が勝手にいじくるわけにはいかない。
「あら?。別にいいわよ~」
「マジか」
「ぴ~」
あっさり許可が出たため問題が一つ消えた。
まだ問題はある。この家の庭は木が多い。それもそこそこなサイズの木だ。それの成長に影響が出ないようにしないといけない。
「あ、これ門自体を別のに変えればいいけい?」
「ぴ?」
何も問題はなかった。
最後の問題。それは、この庭の利用者だ。
庭にいる動物は多くいる。今の大門家にいる先住動物はコロちゃんだけだが、周囲の野鳥、野良猫など、様々な動物が遊んでたり、場合によっては住んでいる。
彼らの許可なしに、勝手に改造するのは恭輔的NG。
「そこんとこどう?」
「ニャー」
「うーん。問題ないのかぁ」
「ワフ」
「なんか思ったより簡単だな」
こうして、すらっぴの為の庭改造が始まった。
4時間後
「できたわ」
「ぴー?」
「これでいいでしょう」
「ただいまー。ってなんだこれ!?」
「わかりやすいリアクションありがとう」
庭の改造内容。
庭を囲うように存在しているフェンスの高さを上げ、どうやっても見えないように。
「見るためには脚立が必要です」
「そんなことして見るやついないわ」
「ぴぴー!」(ピョピョン
門も、スケスケで中は丸見えだった。
それを全く先が見えないタイプの物に変更。
「下には猫用の出入り口」
「これ門じゃなくてドアだな」
「ニャー」
「ぴー」
「この通り」
「いやそこはいいんだが」
すらっぴがどういった遊びをしたいのかわからなかったので、はやりのDIYで軽く遊具を制作。
「久々にやったわ」
「・・・滑り台?」
「ぴー!」
「ワフー」
「細かいとこの装飾はできなかった」
「いや要らんだろ」
なんとなく余った木材でバトちゃん用の止まり木制作。鳥も泊まれるよ!
「きき?」
「まぁ君は家の中だよね」
「ぴ?」
「きき~」
「ワン!」
「き?きき~」
「使ってくれるそうで。感想は?」
「・・・」
「ならよし!」
父親視点では、声も出してない鳥に話しかけ勝手に納得している息子の図なのだが、いつもの事なので何も思わず。
「これすらっぴも自由に遊べるぞー」
「ぴぴ!」
「ん?。もう遊んでいいぞ?」
「ぴ!」
「・・・我?」
「ワン」
「・・・俺と遊びたかったの!?」
「ぴー」
「きき?」
「いや、てっきり遊べれば何でもいいのかと」
実際、すらっぴは外で遊びたいとしか言っていない。
これは子供によくあることで、言いたいことが多くて結局あまり伝えられないあれだ。
「なるほど、外に俺と出たいって意味だったか・・・」
将来的に、完璧に意思疎通ができるようになる。
しかし今の恭輔ではそこまではできない。言っていることの8割を把握するのが限界だ。
なので、本来は口に出さずとも伝わることも今はまだわからない。
「まぁ遊ぶのはいいけど、なにするの?」
「・・・ぴ?」
「・・・よく考えたら外で出来る遊びって知らないよな」
すらっぴ、初外出。知識ほぼゼロ。
「ワン?」
「うーん。フリスビーとかはあんまり・・・。あ、ボール遊びとかは大丈夫かも」
「ぴ!」
「きき~」
「ああ、バトちゃんは戻ってていいぞ。まだ眠いでしょ」
「き~」
「じゃあボール遊びするか!」
「ぴー!」
「コロちゃんもやるでしょ?」
「ワン!」
「にゃんさんは?」
「ニャー」
「オッケー」
ここで覚えたボール遊びは、のちに来る仲間たちにすらっぴから伝えられていく。
基本はボールを飛ばしたり転がしてパスするだけだが、レベルが上がるにつれ規模が拡大。
庭に被害が出そうになった段階で恭輔が止めることになるのだが、それを知るのは先の話。
すらっぴ
好きな遊び
お手玉。
「パス関係ないじゃん!」
「ぴ?」
「・・・なんでもない」
「・・・ワフ」




