363話
生れてきた子供の羽根は、炎の様に揺らめいていた。
それでいてしっかりと実態はあるし、触っても生物特有の温かさしかない。
「羽根が魔力で覆われてるんやな。ほれ、よく見てみ」
「・・・マジモンの炎を纏ってるのか」
「そうみたいやね。でもまだ熱出とらんな」
「火力が出せないのか、自分で調整が出来てるのか」
「自分が生きていくうえで、本能的に上手い事出来とるのかもしれんね」
「・・・」
「・・・」
「「・・・可愛いなぁ」」
「チュンチュン」
「キュ!」
私の子だぞ!とオミちゃんに隠された。
取る気ないって。でも可愛いんだもの。
鳥の雛ってのは、親にご飯をねだって鳴いたりするんだけど、この子は俺達に対しても鳴いてくる。
甘えられる存在であるとわかっているのだろう。
でもだ。そんなことよりだ。巣の中をぐるぐる回ったり自分の羽根を動かしてみたりと、好奇心旺盛な感じで非常にいい。
なんかこう・・・全身から可愛いがあふれてるっていうか。
「キィ!」
「おっふ」
「ふふふ。大丈夫やで~。恭輔はとったりせぇへんよ」
「・・・キュ」
「まぁ目はマジやな」
「何の話だ」
「恭輔の目の話」
一体何がマジだというのか。マジだとこうなる。
「こうなる」(クワ
「うわ」
「キュ」(ササ
「チュン?」
子供隠された。
うん。おふざけもこの辺で。
この子は恐らく炎を最初から使えるモンスターであることは間違いない。
それも、俺たちの様に魔法を持っているのではなく、シルフバードのような感じだろう。
その存在自体が大きな属性の力を持つ。この子の場合は炎の力だ。
これがあるから何かってわけじゃないんだけど。
大きくなって力が強くなってくると調整が効かないかもしれない。魔法ならともかく、そうじゃない力は俺達では教えられない。
シュルちゃんに教えてもらわないとな。
まぁあの子はモンスターだから練習とかしたことないだろうし、その辺は手伝うけど。
「まだ調整できんくなるとは限らんやろ?」
「念のためだよ」
「チュンチュン!!」
「キュ」
オミちゃんから餌を食べさせてもらってる雛。
この子にも名前を決めないとな。
「この子、なんの子なんだろう」
「んー・・・似たようなのは知っとるけど、それがこの子かどうかは」
「え?炎美鳥ですよねその子」
「えんび?・・・炎になんだ?」
「美しいです。大きい個体は羽が非常にきれいでして」
「へぇ・・・あ、おはよポヨネ」
「おはようございます。無事に生まれたんですね」
「おう。めっちゃ健康だぞ。ほれ」
「どれ・・・ああ、やっぱり炎美鳥ですね」
「どこにいるんだ?」
「いえ。ロラちゃんと同類です」
「ああ、レアなのか」
「んー・・・でも、種族は炎美鳥なんですけど、こんな風だったっけ?」
「ん?」
「ああいえ。もっと炎な感じがあったと思うんですけど・・・」
「まだ雛だからじゃない?」
「まぁ・・・そうですね。成長を見守りましょうか」
「だな。・・・ユニちゃんの例だと急成長するけど」
「あ、せやな」
「キュ?」
「ユニちゃんいるでしょ?あの子大体数か月であのサイズ」
うそでしょ見たいな顔で見られてるけど、そうなんです本当に短期間で大人になってるんです体は。
まぁ精神的にはまだ子供だから、雛もしばらくオミちゃんに甘えることだろう。
それを伝えると、安心したように再び餌を与え始めた。
親にとっては大事な話だよな。
ニホリが反抗期とか来たら俺と母さんは多分死ぬ。
皆起きてきて、雛が大人気になっているので少し抜けてきた。
皆来ると思っていたが、あの子だけ来ていないのだ。
「おう。起きてはいたかユニちゃん」
「!!」
「おおう。なんだなんだ。今日は甘えん坊だな」
ユニちゃんだ。
オミにちゃんに休むように説得した功労者。
なんでユニちゃんがそんなことをしたか。多分それは・・・
「重ねちゃった?」
「・・・」
「まぁ、本当の意味でお前の同類なのはあの子だけだしな。だったら、母親はいてほしいと思うのは当然だよな」
「・・・」(スリスリ
ユニちゃんは生まれてすぐは母親。梅子に面倒を見てもらっていたが、少しするとうちに来ることになった。
時々会いには行ってるが、それでも毎日は会えない。
ユニちゃんの心が子供だからこそ、寂しさはやはりあるのだろう。
しかし、あの雛の子は違う。
確かにユニちゃんと同じ存在なのだろうが、親は近くに入れる。
俺が梅子を引き取らないのは、あの子があの動物園の子だからだ。それから急にうちに引き取ることが、絶対にいい事ではないから。
オミ達は野生な上に、元々住んでいた場所から逃げてきたと思われる子だ。だからこそ、うちに来るしかない。
そういう子を優先的に保護するということもある。梅子は引き取れない。
「まぁ・・・なんだ。もうちょい待ってくれ」
「?」
「何。がんばってみるから。俺も」
「・・・?」
今の俺は、余裕はあるが自由にできる範囲が少ない。
世話する時間は大丈夫なんだ。ただ、全員を養うのは不可能だ。
今引き取れるのは、ダンジョンに潜れる可能性の高い子達だけ。その子達なら、俺がいなくても自分でダンジョンに潜り、稼ぐことが可能だ。
俺の今の目的は、そこなのだが。今の時点では無理なことだ。
何もかもが足りてない。
・・・だけど、もしそれが実現できたら。
「梅子もうちに来れるかなぁってな」
「・・・!」(ゲシ
「うえ・・・なんだー?」
「!!」(フンス
「・・・へへ。そうか。よし!会いに行くか!」
「!!!」
本当に、この子は梅子に似ている。
今の話聞いて、俺に寂しくないもんと言える。
本当にいい子だ。
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