362話
「調子は・・・あれ」
「ん?・・・動いとる」
「キュ」
おはようと挨拶してくれるオオタカ。
昨日俺が少し寝るまでは確かに卵を温めていたのだが・・・
「え、代わりに・・・お前か」
「キュル」
シルフバードのシュルちゃん。帰らないなって思ったらそういうことか。
だが、よく温めてるな。俺たちが言っても動かなかったのに。
「何かしたのか?」
「・・・」(フルフル
「ん?頼まれた?あの子に?」
「・・・」(フルフル
「ん~?」
違うらしい。だがそうなると誰に頼まれたんだか・・・
オオタカの母親がご飯と水を食べているのを見つつ考えていると、後ろから何かにすりすりされた。
まぁ気配的にわかってた。ユニちゃんですね。
「あらユニちゃんおはよう。早起きやな」
「!!」
「え?卵?・・・あ、もしかしてお前か?」
「!!」(フンス
「キュ」
「??」
「キュキュ」
「♪」
「何か言ったのか?」
「!」
「えー秘密なのー?」
ユニちゃんとオオタカの間で何かあったみたいだ。
それも俺たちが少し眠ってた時にってことだろうが。シュルちゃんもそれに手伝ってるあたり、よほどのことがあったのだろうが。
けど、なんで温めてるのの代わりがシュルちゃんなんだ?
確かに魔力持ちでサイズも自由自在。重さも同じだから代わりにはぴったりなんだろうけど。
いや、むしろこいつ以上の代わりはいないな。他の子じゃ確かに危ないか。
体調の変化もあるしな。
シュルちゃんはこちらを見ながらなごんでいる。
モンスターは卵産まないから、そういう知識はないだろうに、鳥の本能なのだろうか。
そんなシュルちゃんに見られながら、俺は俺で卵のチェックとオオタカの母親のチェックを・・・
「名前つけよう」
「唐突やな」
「だって言いにくいし」
「あー・・・え?飼うん?」
「てか面倒見ないとまずいでしょ」
「確かに・・・言われてみればそうやな」
卵が普通の動物でない時点で野生に返すという選択はない。
この子も子供から離れる気がないのなら、俺が面倒を見ないといけないだろう。
フミもその事情を言うと、納得したように頷いてくれた。
別に俺が新しく飼い始めることに反対ではないんだがな。増えるとその分自分との時間が~とか考えると複雑なんだろ。
皆の事は関係なしにフミとの時間はちゃんと確保するから無用な心配だな。
事実、この子の面倒を見てる時も2人きりがほとんどだが、少しの休憩時間は一緒にお昼寝したり、俺がフミをブラッシングしたり。
でもお出かけは減ってるんだよな最近。今度行くか。
「よし。とりあえず問題なしと・・・名前何にするか」
「・・・うちが決めてええ?」
「お?珍しいな。いいけど」
「ほな。この子はオミちゃんや」
「オミちゃん?」
「この子、自分の子供のために頑張ったんやろ?うちもそうなりたいなぁ思て」
「だから似た名前に?」
「うん。うちの事はお姉ちゃんでええで?」
「キュ」
なるほど。フミも思うところがあったのだろう・・・ん?
「えまって。うちもなりたい・・・???」
「へ?・・・あ!ちゃうちゃう!!そうことやない!!」
「・・・本当に?」
「ホンマやって」
実は自分も妊娠してましたとかだったらうれしいけどもはやどうなるかわからなくなる。
そういうことがあったからこそ余計に~だと思ったわ。
「まぁ将来的に?ええやんそれでも」
「いや、何も文句はないけど」
「それに。恭輔が未来でお世話する子達の親代わりーいうんもありかなー思たんよ」
「フミ・・・」
「恭輔・・・」
「・・・キュ?」
「キュル」
「!!!」
それから1週間が経った。
凡そオオタカの抱卵の期間は1月を超えるのだが、卵の中の魔力の高まりが収まりつつある。
そろそろ生まれる可能性が高いとか、『鑑定』で見たポヨネの言葉だ。
1週間ほど俺もフミも、ほとんど寝ないで様子を見ていた。そんな俺たちの様子を見て、うちにいるみんなが卵の事が気になり始めたらしく最終的にみんないろいろ手伝ってくれた。
そのおかげか、オミちゃんも体調を崩すことなく済んでいる。
ただシュルちゃんが卵を温まめる行為に嵌ったのか、時々オミちゃんの隣に座っている。
「うー」
「え?違うの」
「う」
違うんだって。
ともかく、無事に成長していたのだろう。その時は唐突に来た。
オミちゃんがいつものように卵を温めていると・・・
「・・・キュ!」
「どうしたーオミちゃん」
オミちゃんが大きな声で俺を呼んでいる。
急いで駆けつけてみると、そこにはシュルちゃんと一緒に卵のあった場所を見ている。
・・・もしかして。
陰にならないように横から覗き込む。
すると、卵が割れて、中から顔が出ていた。
赤い小鳥だ。見た目は鷹の赤ちゃんのままだが。
・・・問題は、この子が親の言葉がわかるかどうかだ。ユニちゃんは、魔力を持ち俺の影響を受けた結果自分の母親、梅子の言葉がわからなくなった。
近くに俺と言う存在がいたから、この子も影響を受けていると思われるが・・・
赤ちゃんがオミちゃんを見る。まだ目がちゃんとは見えていないみたいだが、残った殻を自分で破ってオミちゃんの方にゆっくりと進んでいく。
そして・・・
「・・・チュン」
「喋った」
「シュルゥ」
「お前が泣くのか・・・」
「・・・キュ?」
「チュンチュン」
ちゃんと聞こえてるみたいだ。オミちゃんの言葉に反応している。
それはそれでなんでそうなったのかわからないけど。今はいいだろう。
「フミ達に知らせてくるわ」
「シュルゥ」
「だからなんでお前が泣いてるんだ」
シュルちゃん感情表現豊すぎでしょ。
器用に羽根で目をぬぐってるよ。
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