360話
最近続けて感想や作品の予想とかをいただいて嬉しいです!
ありがとうございます!!
一匹狼という言葉がある。
この言葉は自体の意味というより、今大事なのは狼が一匹だけの状況がどういった状況かってことだ。
狼は群れて生きる動物だ。だから、基本的に一匹しかいないということはあまりない。
だが、こんな言葉があるくらいだからそういう時もあるのだ。
年老いて群れを追い出されたとか、新たな群れを作るために出ていったとかそう言うこと。
そしてもう一つ。上記2つ以外の理由だと少々気分がよろしくない物もある。
今回のこのオオタカの場合、恐らくは・・・
「何かしらが原因で魔力を子供が持ったのか」
「それで?」
「雄の方が逃げたってことはないと思う。だけど、周囲の生き物は違うでしょ」
俺の最初の推測通り、この子は生きる場を追われて来たと考えていい。
魔力を感じる。これは普通では出来ることではない。それを可能にするためにはダンジョンでモンスターを倒す必要がある。
だが、実はもう1つだけ魔力を感知させる方法がある。
「この子、もしかして・・・」
一度体を見せてもらう。
見える所だけではなく、俺の魔力を通して全体に異常がないか確かめる。
すると、やはりあった。
「足の付け根が硬いな・・・だけどそこまで進んでない?」
寄生型精霊。
先日ソフィアさんから取り除いたのと同じ症状がある。
最近寄生されたのか、そこまで大きな影響はないみたいだが・・・
俺が感じた魔力はこの魔力じゃない。
お腹の中にいる子供・・・ユニちゃんと同じ感じなのだ。
生まれながらに魔力を持って生まれてくる。その子から感じる魔力で、精霊自体は全くこの子に憑りついていない。
親の体に、本当に少しだけ影響を与えているだけだ。精霊の魔力もほとんど感じない・・・自力で寄生をどうにかしたのか?そんな方法があるとは思えないが・・・
すると、再び俺の中に知識が入ってきた。
「ッ!!・・・ああ、そうか。そういうことか。俺が認知してなかっただけか」
ユニちゃんが生れた時。俺はその原因を俺だと思った。
俺が持っていた魔力をそのままにしていた結果、梅子の中のユニちゃんに影響が出たのだと。
だけど、違う。これはそんな簡単な問題じゃない。
そうか、寄生型というのはこういう性質を持つのか。
「精霊が、子供と一体化したんだ」
「恭輔~?」
俺達がその存在を知ったのが最近というだけで、もっと前からいたんだ。寄生する精霊は。
そしてそれは梅子にもいた。だけど、魔力を持たない動物である梅子に憑りついたところで魔力何てかけらも得られない。
その結果、生き残るためにどうしたか。
子供と一体化することを選んだのだ。そしてその影響を受けた結果、生まれてきた子供は普通ではありえない子として生まれる。
ただの馬から、ユニコーンが生れる。つまり・・・つまりだ。
「この子の子供も、多分そうか。追われたんじゃなくて、逃げてきたのか」
自分の子が、異質な存在であるということをわかっているのだろう。
そしてそれがバレると、その子がどうなるかわからない。
だから逃げ出してきたんだ。番いとなる雄の元から逃げても、自分の子を生かすために。
オオタカに、そんな性質・・・というか、基本的に生まれてくる子供をそうしてまで守るという行動がとれる動物はいない。
番いとなる存在から逃げるなんて、人間だって難しい話だろう。
それを、この子はやったのだ。何故か?
「・・・魔力の影響。お前も受けたんだな」
「・・・」
魔力の影響を深く受けると、生き物は何かしらの変化が起きる。
まずは魔力の感知能力。そして、レベルという形で表れる能力の上昇。
これは、思考能力・・・知能の高さも同様だ。
人間の様に、初めから高い知性を持つ生き物だと実感しずらいし、元から頭のいい動物ってのは、人間以外にも割といるものだ。
恐らくはそういう子も、大きな変化は起きないだろう。
じゃあ、鳥はどうだ。確かに頭の良い種類はいるし、躾をすればちゃんと言うことを聞くくらいの能力はある。
だけど、それはあくまでも誰かが教えた結果だ。
野生の個体は、絶対にそれは出来ないと言ってもいい。
つまり、このオオタカ。魔力の影響で思考能力が強化されている。
その結果、察してしまったのだろう。自分の体の中にいる子供の異質さに。
そしてそれを理解してもなお、無事に生み育てようとしているのだ。
今、俺の手の中で完全に体をゆだねて撫でられている。
俺が安全な存在。むしろ、子供にとって最高の存在であることを理解している。
苦労という言葉では片づけられないほど、様々なことがあったはずだ。
偶々うちに来たんじゃない。俺を探してたんだ。自分の子と同じような存在を育てている存在を。
各地を聞いて回って、変わった存在を探した。その上で、俺のところまでたどり着いた。
・・・母親と言うのは、強い者だな。
「・・・そういう仕組みやったか」
「ああ。現象として少ないのも当然だ。そら寄生型精霊の数が少ないんじゃそうなる」
「まず生まれることが難しいんやっけ?」
「難しいと言うか、条件が厳しいんだ」
検査をした、その日の夜。フミと部屋で今日の事を話すことに
寄生型・・・というか、精霊が生まれる条件。
魔力の濃さだ。これが一定値を超えないと行かない。
そこにプラスで、環境によって何かが足されていく。寄生型は壊され、飲み込まれ、失われていく自然の影響を受けている。
だから、失った分を人間・・・正確には魔力を奪えれば何でもいいのだが、それに求めるのだ。
故に何かに寄生する。
だが、憑りついた先の個体が魔力を持たなかった場合はどうなる。
魔力を持つようになった人間は、肉体が変質していると言っていい。
魔力がなくなっても、魔力を生み出す土壌が肉体には残るのだ。これを一滴残らず搾り取ろうとした結果、体が植物に変化するという現象が起きる。
つまり、オオタカにその現象は起きない。または起きる量が少なくなる。
どれだけやっても、魔力を得られないからだ。その結果、生き残るために子供に宿る。
身ごもっていない場合は、恐らく外に出ていくと思われるが・・・
「外でも偶に生まれるみたいだな」
「その場合は?」
「・・・外には逃げれない。だって、生まれてすぐ死にかけてるから」
ダンジョンの外の魔力だと、生まれることはごくまれにあるだろうがその先はない。
薄すぎて、自分の存在すら保つのが難しくなる。
だから、一度寄生した精霊は外に逃げられない。逃げた瞬間に死んでしまうから。だから子供と1つになることで死を回避するのだ。
それは、精霊としては死ぬが、魔力は残る。
精霊は、魔力の塊であると言える関係上。死んでないともいえるが。
「それにしたってすごいのはあの子だ。よくここまで来れた」
「そこまでなん?」
「体の異常は少ないけど、中に異物がいるようなもんだぞ。それに、そろそろ生まれてもおかしくない」
その状態で、一体どれくらいの距離を飛んできたのか。
今はピッちゃん達が作った果樹園の巣に急遽家を用意してそこにいてもらっている。
とても疲労していたのだろう。少し病院から連れて帰り、家を用意したらすぐに寝てしまった。
俺も体を触ったからわかるが、下手すると明日にでも生まれる可能性がある。
「・・・ギリギリやな」
「本当だよ。てか、今この瞬間だって・・・生まれたな」
「ホンマやな。でも、何か閉じこもっとらん?」
「鳥は卵生だから卵で生まれるんだぞ?」
「・・・卵生」
「あ、お前そこ知らないのか」
まぁダンジョンに卵生のモンスターとかいない・・・そもそも生まれ方違うか。
モンスターは生まれるというか、発生するだろうし。
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