352話
「いいかルミネ。基本的に相手が複数いる場合がほとんどだから、基本は動き回って囲まれないようにするんだぞ」
「わん」
「危なくなってもコロちゃん達はいるけど、油断はダメ。絶対」
「わんわん!」
「噛みついても、ひっかいても体当たりでもなんでもいいけど、無理はしないこと。OK?」
「わん!」
「よしなら行くか」
ルミネを連れて新しいダンジョンへ。
3日の間。コロちゃんとポヨネに頼んでダンジョンでの戦い方について教えてもらってた。
こればっかりは、俺が教えると微妙に伝わらないことがあるからな。表現の違いというか、説明に対する説得力の違いかな。
俺が2足歩行で戦うのと、コロちゃん達が4足で戦うのとじゃ違うからな。
まぁコロちゃん自体は目に見えない速度で走りながら魔刃で切るって戦い方がメインだから、普通とは言い難いが。その部分はそこまで心配してない。普通にも戦えるしな。
流石に深くまでは行かない。
今日は1層メイン。余裕があったら2層にもいくかなって感じ。
まぁねっさんに比べたら小さいネズミだし。余裕の可能性は十分あるんだけど。
それに、ルミネには少し試したこともあるし。
「ニホリ」
「う!」
「・・・わん?」
「うー」
ルミネが子犬たちの親と言えど、年齢的にはまだまだだ。コロちゃん達に比べちゃうと子供に見える。体はちゃんと出来上がってはいるんだけど。
だがやはり素の身体能力だと少し心配になる。そこでまず、ニホリの『強化』を使うのだ。
このためにわざわざニホリには『強化』の調節が出来るからどうか試してもらった。そしたら一応出来るみたいなのだ。気を抜くと一気に全開まで行っちゃうみたいだが。
そしてもう1つ。いままでやってたこともある。
魔石の吸収だ。正確には、魔石の中にある魔力を吸収した場合にどうなるかってことだ。
ダンジョンが発生した当初。そのころに1度だけ母さんに魔石を渡したことがあった。すると、時間はかかるが、身に着けていると魔石の魔力がなくなった。
その魔力はどこに行ったか。そう、母さんの中だ。そして何の作用か知らないが、母さんの肌がもちもちになった。
だがこの魔石の魔力吸収に関するデータは、現在ほとんど存在していない。
理由は簡単。そちらに回す魔石がほとんどないと言うのと、本当に人体に悪影響がないのかわからなかったからだ。そこがはっきりとしない限り、人で試せない。
まぁ問題ないとわかったところで魔石ないんですけど。
そんなに使うのかと思われるだろうが。めっちゃ使うらしい。砕いて水に溶かした場合とか、回路に組み込んだ時にどうなるかとか、カットしたらどうなるのかとか、試すことはたくさんある。
それにプラス。魔石を利用した発明とかがある。その実験で魔石は次々に消費されているからな。俺だけじゃ間に合わないってのは、そういうことだ。
今はだいぶ解消されてきてはいるが、大きい魔石に関してはやはり俺だより。てか、俺しか手にれられないんだけど。
ともかくだ、その魔石吸収。ほとんどデータがないのにルミネで試したのかお前と思われるだろう。
だが俺には家に入り浸る生きるダンジョンがいるのでさらっと聞いてみると。
「問題ない」(モグモグ
とのこと。
だから人体には問題ないらしい。
これがしっかりとデータで纏められれば、冒険者になる前に魔石を吸収するっていうのが出来るかもと思った。
実際に強くなってるのかはこれから見るんだけど。
「強化率はどれくらいだ?」
「・・・う?」
「20か。まぁそんなもんでしょ」
「わん!」
「わかったわかった。ねっさん!どこか近いの!」
「ちゅ!」
さてさて、初めての実戦はどうなるかなっと。
懐かしいなー。俺のはじめての時って・・・ああ、すらっぴにコウモリ上げて餌付けしたわ。
「おお。ちょうどいい」
「ちゅ」
「ぐるるるる」
「「チュー!」」
ねっさんが案内してくれたところには2体のネズミが。相変わらず小さいな。
相手もこちらに気がついていたようだが、数が多いから警戒しているようだ。
ルミネのやる気。基殺る気も十分。今にも飛び掛かりそうだが・・・
「まだダメだぞ」
「ワン」
「わん!」
すぐにとびかかってはダメだ。狩りの基本。相手の隙を伺うこと。これは戦いでも基本だ。
故に、見つけたからと言ってすぐに攻撃などもってのほかです。
「わかってますその辺?」
「ぴ?」
「わかってないねぇ」
すらっぴはすぐに攻撃しちゃうけどな!
まぁ確殺する攻撃だからそれはそれでいいんだけどさ。
円を書くように、ルミネとネズミたちが動きながら一定の距離を保っている。
相手は複数。ルミネは1匹。1体を攻撃したら、残りの1体に攻撃されてしまう。この場合、距離を保ちながら、相手の集中が切れた一瞬の隙を狙うべし。
または、早く動き隙を無理やり作るのがいい。コロちゃんの教えを受けたルミネなら、取る方法は決まっているのだが。
「わん!!」
「チュ!?」
「おお。考えた」
「ワフ」
ルミネは、1度吠えると走り出した。
相手に向かうのではなく、相手の横をすり抜けるように。動き自体は、『強化』もあるルミネの方が断然速い。
ネズミたちは急に走り出したルミネを追いきれない。
自分の動きに着いてこれてないと判断したルミネは、横を通り過ぎる間に爪で一閃。
何度もそれを繰り返す。だんだんとネズミたちがルミネの動きに慣れてきたと判断したら
「ガァァァ!!」
「「ヂュ!?」」
首元に噛みつき、もう1体に投げつける。
完全に翻弄しているな。
「・・・この調子なら、2層でもいいか?」
「うー」
「ワン」
「だな。これは、魔石での強化は成功か?」
ニホリの『強化』だけでは説明がつかない強さだ。
恐らくルミネ自身の強さが大きい。飼われている犬は、猟犬としての犬種でも飼われているうちに色々忘れる。
狩りの本能とも呼べるものは残るが、やはり動けなくなるものだが。
これは、ルミネがコロちゃんによく教わった証だろう。それに毎日自分より速いのを相手に追いかけっこしてるからな。その分鍛えられている。
判断力の高さも、一瞬でも間違えると捕まるからな。特にねっさんが分身した日には、常に集中してないとあっという間に囲まれる。
あ、だから多対一に慣れてるのか。
戦闘はその後無事に終了。
1発も貰うことなく、一方的に倒しきった。
課題がないこともないが、それは今後の課題だ。今の戦闘だけど見るなら、十分合格点だろう。
「おつかれさま」
「わん」(スリスリ
「水飲めよ~」
「わん!」
息を荒げているが、興奮しているのだろう。まだ体力的には問題なさそうだ。
ちゃんと水分も取らせて、体を確認をする。
・・・うん。怪我はないな。それに、変に筋肉がこわばっていると言うことも無し。
しいて言うなら、やはり爪か。今はまだ問題ないが、そのままで攻撃させるのは少し怖いな。
割れたりしたら痛いし。良くないばい菌とか入ったらまずいか。
攻撃力と、それに伴う本体の損傷。
今後の課題はこれだが・・・研究所で作ってもらわないと駄目かな。何かグローブ的な物を・・・
確かコロちゃん用に作ってもらった物があったような。それを少し調整してもらうか。
あ、そうだ。どうせなら何かしらのモンスターの爪とかに付け替えてもらうか。




