348話
「とは言ってもふーりんちゃん連れてけないから面倒」
「にゃ?」
「いや、いた方がどこらへんで出会ったかを」
「恭輔ー。あなた、子猫ちゃん知ってるわよね?メスのマンチカンで・・・あら~?」
「タイミング完璧かよ」
最近飼い始めた一家の猫ちゃんだったようだ。
とりあえずプライドの高いお嬢様猫だってことを教えて家から出さないようなやり方を教えたからもう大丈夫なはず。
「つまり、精霊はダンジョンに関係ないと?」
「本来はなかったが正しいかな。今は住んでるし、あそこで生まれてるみたいだから関係あるけど」
「・・・それに、環境破壊が原因で生まれた精霊か」
「人間を恨んでいるのか、それともただ目についただけか」
「もう1度生まれる可能性は?」
「ある。1回生まれたなら、どこのダンジョンだってあり得る」
精霊関連の話を親父に伝えたところだ。
問題はやはり、あの人間に憑りついて魔力を吸い続ける精霊について。
あれがこの先どれくらいの頻度で人間に出会うか。そこが問題だ。
「倒し方自体は、他の精霊と変わらないんだな?」
「ないね。結局は精霊だし。ただ、接近するのだけはダメだ。近づかれたら憑りつかれて終わりだよ」
「厄介な・・・」
「これはすぐにでも広めないとまずいよ」
「わかってる。こんなの隠してたと思われただけでアウトだ」
それだけ厄介な存在なのだ、あの精霊は。
今回はソフィアさんの魔力が高く俺のところに来るまでなんとか生きていてくれた。
だが、途中で死んだ場合は?周りの人間に再度憑りついたりしないか?
女神もそれは知らなかった。なにせ、最近生まれたばかりの精霊だ。どんな影響を持つかもわからない。
その精霊で他の国で被害が出て、情報を日本が隠してたとしたら。間違いなく国際的に袋叩きにあう。
親父もそれを考えたのだろう。俺の話を聞いてから深くなってた眉間の皺がさらに深くなった。
「それにしても、そんな存在の魔力を吸収して問題ないとは・・・どうなってるんだお前」
「知らんよ。俺が聞きたいくらいだし」
「だよなぁ・・・はぁ・・・よし!暗い話題はここまでだ!」
「なんかあるのか?」
「いや何。『鍛冶』のスキルを覚えた鍛冶師の話なんだが」
「お?」
「モンスター素材を使った武器や装飾品を作ることに成功したぞ!」
「おお!!」
それは明るい話題だ。
今まで武器と言え普通の鉄製の武器が宝箱で手に入れるかの2択しかなかった。
それが変わるかもしれないのだ。俺は武器関係なくなってきたけど、俺以外にとっては有用なはずだ・
「でも何の素材だ?使えそうなのなかったと思うんだけど」
「まずはこれだな」
「・・・ネズミの尻尾?」
こんなドロップあったか?
「新しいダンジョンの方のネズミだ。ごくまれにしっぽを落とすんだ」
「へぇ。知らなかった」
「まぁあまり長い時間あっちに潜らんからなお前は」
「んで?どんな効果が?」
「動きが速くなるそうだ。まぁわずかだけだが」
「・・・それ、どうやって効果試したの」
「ヨミさんに見てもらったのと、作った本人は効果がわかるそうでな」
つまり、俊敏強化(極小)みたいな感じか。
俺の使ってる装飾品・・・アクセサリーがそういう風に効果が出るのか知らないけど。
だがまぁ実際のところは使ってみないとわからんよな。
この様子だと、既にそれはやったんだろうから俺が試すってことはないだろうけど。
「じゃあ武器は?」
「これだ」
「・・・え、なにこの凶悪そうなナイフ」
材質は骨だな。間違いない。
軽いし、軽く触れてもそんな感じがする。
何が凶悪って、感じる魔力だ。もちろん、俺とかが持つ魔力と比べると大したことはない量だ。
ただ、武器から感じる魔力としては間違いなく今までで一番の物だ。
それになんか、形状も心なしか悪そうな感じっていうか・・・
「それ、魔法の補助に使えるらしいぞ」
「ナイフの意味は!?」
「その用途もあるぞってことらしい。両方使える優れものだそうだ」
「耐久性は?」
「なかなか高いぞ。なんてたって22層の骨だからな」
「羊ちゃんじゃないモンスターなんて・・・ああ、いたわ。炎骸骨」
「忘れてたのか・・・」
最近戦ってないからな・・・22層に行っても遊ぶだけだし。
いやてか、22層のモンスターの素材でこれか。ひょっとすると、俺がいるような階層のモンスターならもっと良い物が・・・
「まだスキルが弱くて扱えないそうだぞ」
「チッ」
「武器要らないんじゃないのか?」
「それとこれとは話が別だ」
修学旅行で木刀買っちゃうのと一緒だよ。かっこいいでしょ。
俺だって剣の1本や2本欲しいよ。
「壊すのにか」
「それを言われると・・・」
飾るくらいしかないかなぁ・・・使うと壊れるし。
・・・いや待てよ?人の作ったやつなら修理も簡単なんじゃないか?
俺が武器を壊すまで使う原因の1つは修理が出来ないからだし。フミから貰った斧も、コロちゃん達から貰った大剣も、全部壊してないけどあと1回でダメになるってところまで来てる。貰い物だし、大事にしたいからしまい込んでるけど。
「まぁどっちにしろお前がいる階層で使えそうな武器はしばらく無理だろうとのことだ」
「少し悲しい・・・ん?下の素材見せたの?」
「ティラノの骨とか見せたぞ。めっちゃ喜んでた」
「多分それ素材への歓喜じゃないわ。ティラノだからだわ」
「ぶっちゃけ俺もテンション上がったしなあれ」
「てか研究所が盛り上がっただろあれ」
「やっぱり恐竜なんだよなぁ・・・テイムしても世話出来ないのが残念だ」
「流石に無理でしょ。ラプトルならまだ・・・」
まぁどっちにしろテイムする気ないんですけど。
恐竜は確かに好きだけど。俺は普通に動物の方が好きだよ。
「ところでスナネコまだー?」
「お、来週予定付けられたが、そこでいいか」
ニホリにまた魔力が多く来たぞ!と怒られた。
「ちな。魔力がいっぱい来るとどうなるの?」
「うー!」
「なるほど。申し訳ない」
料理中に来るとあやうく指を切りそうになるくらいにびっくりするそうです。
本当に申し訳ない。




