346話
夜分です
女神と呼ぶことになったあの人から精霊に関する情報を聞いた次の日。
俺が治療・・・?憑りついていた精霊を駆除したあの女性が目を覚ましたとのことで会いに行くことに。
まぁずっと昏睡状態だったから、長い時間は話せないし起きていられないにみたいだけど。
とりあえず行きがけにメロンでも買ってお見舞いの品ということで・・・
「いや、お前はお見舞いってか診る側なんだが」
「いいっていいって。変んない変わんない」
「うーうー」
「お気持ちってやつですね」
「そういうこと」
何か手ぶらってのも寂しいでしょうよ。
結局俺が駆除を行ってから、急遽病院へ搬送されたみたいだ。
まぁ研究所だったしな。病院寝かせておくのには色々不足でしょう。あの時はあそこじゃないと駄目だったてのがあるからな。
メンバーは俺とニホリ、フミとポヨネ。本当はコロちゃんも連れてきたかったけど、狼犬のお世話するってことで残ったのだ。
何か教えてるみたいだけど。何を教えてるのやら。悪いことじゃないみたいだしなんでもいいけど。
今は親父の運転で病院へ向かっている。病院てかまぁ・・・結構極秘な感じのやつだから普通の人は知らないところだけど。てか俺も知らないし。
「そういえば、お前が教えてくれたあの薬なんだが、正式に魔力回復薬として決まったぞ」
「おお。そうなの。でも量産できないよなあれ」
「まぁロラちゃんの薬が必要だしな。使う薬のランクで出来も変わるみたいだぞ」
「へぇ。まぁ俺は赤いの混ぜたのしか使わないだろうけど」
「お前は個人でストックしてるからな・・・どうにかしてもう一つ『薬品生成』を手に入れないとな」
「ずっとロラちゃんだよりってのもな」
「もしかしたら、新しいダンジョンで違う魔力回復薬の素材が手に入るかもしれないがな」
「だといいっすね」
「他人事だな。探すのお前だぞ」
「わかってるわ・・・てか、いつになったらスナネコの赤ちゃんに会えるのでしょうか俺は」
「気が早いわ。まだあちら側のスケジュールが合わないんだよ」
「会えんならいいよ」
「・・・砂猫?猫砂やなくて?」
「誰がトイレの話したよ」
「あ、そういう動物なんですね。私てっきり体が砂のモンスターの話かと」
「うー」
何だと思ってるんだお前ら。
禄に外の景色を見てなかったから、既にどこら辺にいるのかわからない。
だけど親父曰く、そろそろ着くみたいだ。大きな建物の中に入っていく。ここは駐車場だな。隣の建物か。
・・・想像より普通だな。
「何を想像してたんだお前は」
「もうちょい秘密基地的な物を」
「そんな物あったら逆に目立つだろうよ」
「・・・確かに」
なんてロマンのない現代社会なんだ。
見た目は普通だったが、中はしっかりしてた。
セキュリティーもしっかりしてるし、面会する・・・あ、違うのか。俺が診察するからあんなに待ち時間が長かったのか。
待っている間。ロビーで待たされるのではなく別室に通されたし。ジュースとか出てきたし。
「ここだ、すまんが俺は入れなくてな」
「うぃ。すぐ終わらせるわ」
「中にチャールズ教授もいらっしゃるから、丁寧にな」
「わかってるよ」
「フミさんも、恭輔のこと見張りお願いします」
「任しといてください」
「見張りて」
「うっう」
この扱いには抵抗させていただきたいがそれは後ででいいか。
渡されたカードをかざして部屋の中に入る。
ベッドの上には、金髪で髪の長い女性が。手入れはされているみたいだ。起きてからしたのだろうか。
チャールズ教授はベットの隣で椅子に腰かけている。俺が入ってきたのには来るのを待っていたのだろう。既にこちらを向いていた。
「先日ぶりだね。恭輔君」
「こんにちわ教授」
「こんにちわ」
「わん!」
「う!」
「おや?ずいぶんとかわいらしいお嬢さん方だ。恋人かな?」
「嫁さんですよ。フミです」
「よろしくお願いします」
「フミは、俺以上に魔力の操作が上手いので、今回連れてきました。ポヨネはまぁ、前回もお会いしましたよね」
「ああ。彼女がソフィアの体を見てくれるんだったね。頼りにしているよ」
「・・・う?」
「お前がいないと最悪精霊の種類がわからんだろうよ」
「うー」
「・・・今のでわかるのかね?」
「まぁそういう能力ですので」
「君のお父さんから聞いたよ。動物の声がわかるんだったね」
「ええ。なんでかは知りませんが」
「うらやましい能力だ。君はいい学者になれるよ」
「・・・」(チョンチョン
「ああ、すまない。娘のソフィアだ。今はまだ喋れないのだよ」
まだ首元に人間では存在しない部分が残っている。
中の精霊の残滓はほとんど力がないから、あれはまだ元に戻ってない部分だ。いくら元凶を取り除いても、すぐに元に戻るわけではないからな。
「首元がまだ戻ってないんですね。まぁ数日中には治るかと」
「本当かい?」
「わんわん」
「・・・本人の魔力不足と、精霊の魔力がまだ残っているからだそうです」
ポヨネの鑑定で出てきた結果がそうらしい。
魔力欠乏に、魔力浸食状態:弱と見えるらしい。
早速取り掛かろう。とは言っても、やることは単純。
ソフィアさんの中に残っている魔力を取り除くのではなく、俺の中に入れるのだ。
あの女神曰く、あなたならあの程度の精霊の魔力なら100倍あっても何も起きないと。これは俺の強さに起因するものではなく、俺の体が変質している結果だそうだが。
フミの役目はこの間のカルちゃんの役目。俺が魔力の残滓を取りこぼした場合のみ魔力を潰してもらう。
ニホリは一歩離れたところから見て、モンスターが出てきたら浮かせて拘束する役目だ。
まぁ基本的に保険だから、俺が頑張ればいいってわけだ。
「じゃあ行きます」
「こっちもええで」
「う!」「わん」
「・・・」
青い瞳が、不安そうにこちらを見つめている。
まぁ何も知らない人だったらそうに決まってるわな。何が自分の体に起きるかわからないわけだし。
でもまぁ・・・一瞬で終わるけどな。
「・・・!」(ビク
「・・・捕まえた」
「うちも見つけた・・・けど、ほとんど残っとらんな」
「まぁそれだけふーりんちゃんが本体を追っかけるのが上手かったと・・・ん。大丈夫そうだな」
「全く変化ないな・・・拍子抜けやわ」
「簡単でいいじゃないの・・・はい。終了」
「・・・?」
「あ、終わりましたよ」
「・・・もうかね?」
「はい。首触ってみてください」
「・・・!!」
「まさか!・・・本当だ!」
首の変化が既に始まっている。
精霊の魔力が完全に抜けたから、元に戻り始めたのだ。触ると、木のように堅かった部分が柔らかくなっている。
てか、首だ固くなっててよく呼吸で来たよな。まぁそれは精霊側が何かしていたんだろうけど。
憑りついた対象がすぐ死んだら取れる物も減るしな。
ソフィアさんは何度も首を触っている。恐らく、意識を失う前も既にそうなっていたのだろう。
それがようやく治るのだ。感動もひとしおだろう。
チャールズ教授もそれを実感して涙ぐんでいる。
・・・俺たちはお邪魔だな。
「静かに退室」
「はいなー」
「うーうー」
「わn・・・違和感なくなってきたなぁ」
「ポヨネ静かに」
「・・・わん」




