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35話

「そういや、トレントから取れた木材の検査結果がでたけど、聞くか?」


「おもしろい?」


「お前にしたら微妙かもな」


「遠慮したい」


「まぁ、聞いてもらうんだが」


「なんで最初に無駄な質問を・・・」



今日は都内某所にある、親父と母さんが働いている研究所に来ている。

時々来てたから新鮮味はまったくない。ダンジョンが出てくる前から来てるからな。研究員の人とも、事務の人とも知り合いだよ。下手な人よりベテランだよ。



「まず前提として、トレントが何の木かってことだな」


「は?あれ地球上にある木なの?」


「ああ、ケヤキだ」


「ケヤキ・・・ピンとこないけど」


「そうだな。神社とかに使われている木だな」


「ああ、小学校とかにあったかも」


「そういうところも多いな」


「それで、それがどうしたの」


「ああ、今回調べた木材は全部ケヤキだったんだよ」


「じゃあ、トレント=ケヤキと」


「そうなるな」


「・・・それがわかってなにがあるん?」


「かなりいい事なんだがな」



ケヤキの木は神社に使われているといったが、要するに代用ができるのではないかという話らしい。

調べて完全にケヤキなのだからどこで育ったものだろうと関係ないって話なわけだ。



「育てるの大変だからか?」


「神社の建て替えは金がかかるからな。材料費だけでもかなりの額だ。

 年に何回もあるものじゃないが、それでも税金が使われているわけだしな」


「それの節約になると」


「これができるようになれば、あのダンジョン専門で一般から潜る人物を募集する話も出るだろうからな」


「そんなにか?」


「お前が一人で全部やってくれるなら話は別だが」


「ごめん被るわ」


「だろうな。新しい雇用にもつながる。悪い案ではない」


「それってオークにも言えない?」


「あれか・・・。あれは流石に一般受けしにくいからなぁ」


「木の化け物も大概だろうよ」


「自分たちで食べないからいいんだよ」


「そこかよ」



うち結構好んで食べてるじゃんか。時に親父とコロちゃん。いい年で肉大好きだからな。長い間元気でいられるらしいしいい事なのか?



「正直、素材の回収とか他に任せたいんだけど。先に進めない」


「そんなに時間かかるのか」


「かかるかかる。いちいち各層走り回らないといけないし、レベル上げようにも長く入れないから」


「それで、先に進めないと」


「スキルも使えないこともあるし。それに、進んだとしてもまた行くとこ増えるじゃん」


「ああ、やみくもに進めても手に負えないと」


「そういうこと。一応20層はそろそろ突破するけど」


「その辺もいい加減考えないとな」


「自衛隊の人たち何してんの?」


「自衛隊は今、ほとんどダンジョンに潜ってないそうだ」


「・・・はぁ!?」


「潜っているのは藤岡さんたちのチームのみらしい」


「姉ちゃんのところか。でもなんで」


「簡単だろ。危険じゃないからだ」


「???。十分危ないと思うけど」


「中に入らなければいいだけだろ」


「・・・入り口をふさいでるだけ?」


「そういうことだ。うちの近くの山のダンジョンの自衛隊員なんて暇そうだぞ」


「マジかぁ・・・」



そりゃ人が育たないし、素材の収集依頼が日に日に増えるわけだ。

自衛隊も別にダンジョンに潜って戦うことが仕事じゃないしな。彼らの仕事は災害時の人命救助とかそういうことだし。

ほっといても問題ない物にいつまでもかかりっきりになるわけないのか。



「え、じゃあもっと忙しくなるじゃん」


「このままだとそうだな」


「うぇぇ」


「こっちも考えてはいるんだけどな」


「あん?なんで親父が考えてるんだ?そういうのって研究職の人間がやることじゃないでしょ」


「・・・そうだよなぁ」


「え、何。押し付けられた?」


「ダンジョン関係で二番目に偉いのが俺だよ・・・」


「一番は?」


「政府の人間だ。かなり理解のある人でな。ロマンも理解できる」


「いい人ではあると」


「それ以上に俺の仕事が増えてる」


「お疲レインボー」


「本当疲れたよ・・・」



まさかそんなことになっていたとは。知ったところでなにもできませんけど。

母さんはテンション高めなのに、親父が低くなってたのはこういうことか。

あ、母さんは今はうちの子たちの面倒を見てる。検査って名目で遊んでるだけだろとか思う風景だけど。それでもちゃんとできているらしい。優秀なのかわからん時が多いんだよ母さん。



「何か人員不足を解消できる画期的な案はないのか・・・」


「俺の方?親父の方?」


「両方だ・・・」


「親父の方はスポンサー様に言ってくれ」


「すぐには難しいそうだ」


「言った後かい」


「あちら側も理解はしてくれているんだが、いかんせんダンジョンに関われそうな人間は少ない」


「関わりたい奴は多いだろうな」


「山ほどいるだろうさ」



特に実際に入りたい人間は多いだろうな。問題はそのほとんどが使い物にならないって話で。

正直、俺だってたまたまスキルを手に入れて、すらっぴと出会えたから今があるのだ。なんにもない人が入ってすぐ活躍できるほど甘い場所じゃない。

最低でも、今の時点でレベル持っている人間って前提が必要・・・



「あ、」


「どうした?」


「いや、藤岡さんたちって引き抜けないの?」


「・・・」


「あっちだってダンジョン潜ってるってことはやる気はあるんだろ?

 でも自衛隊自体はダンジョンに積極的じゃない。ならこっちにもらえない?」


「・・・恭輔」


「はい」


「今日の夕飯は豪華にしてもらう」


「いえい」



とっさの案で夕飯が豪華になったようだ。ピザがいい。



「そういえばそうだ。あちらから引き抜きができれば少なくともお前の負担は減らせるな」


「最低でも姉ちゃんはこっちに貰おうか」


「そうだな、自衛隊にいるより給料もいいしな!」



俺も今貰ってる金額だと軽くサラリーマンの平均年収超えるし。

未知の素材と、新しいエネルギーになるかもしれない魔石の買い取りか価格とかすごいことになってるし。


魔石は今や間違いなく世界中で注目されている素材だ。

なんせ、一般企業にも販売することで新しい活用方法を見出そうとしているのだから。

今の主流は、魔石の魔力を使った発電方法の確立だ。今あるのだと大した量を作れないが、それをどうにかしたいらしい。その研究に魔石が大量に、それもできる限りでかいのが必要だそうだ。

俺の時間を大きく取っているのはこれだ。なんせ各フロアのボス全討伐しなきゃいけないし。

レベル上げるだけならボス以外のモンスター倒してた方が効率いいんだよな。数が多い所がベスト。



「よし、少しだけだが光明が見えた!」


「肝心の部分全く解決してないけど?」


「それをいうなよ・・・」


「しゃーないでしょ。人いないんだから」


「俺も研究に回りてぇよぉ」


「ご愁傷様」

















「あら恭輔。お話終わったの?」


「大した話じゃなかったけどね。あ、今日はピザがいい」


「そうなの?じゃあピザにしましょうか」


「ぴー!」


「ポテトも食べたい?」


「じゃあデリバリーね~」


「即決まるじゃん・・・ん?ニホリは?」


「あそこよ~」



母さんが指さしたそこには。

女性研究員たちに着せ替え人形にされているニホリとピッちゃんの姿が。

周りは大変にぎわっている。ニホリ達も大変盛り上がっている。



「ああいう、フリフリのお洋服がお気に入りみたいよ?」


「普段ずっと和服だしな。なんか新鮮だわ」


「うー?うー!」


「おお、気づいた」



ニホリは服を来てくるくる回っていたが、こちらに気づいたようだ。こちらに駆け寄ってくる。

こうして見ると、本当にただの子供だな。和服状態ならまだ人形みたいな印象もあったんだが、あれは日本人形のイメージが先行しているのだろう。

白いレースのフリフリ・・・名前わかんねぇけど。それが似合ってる。髪もロングでそのままだったのをポニーテイルに。こんなにも変わるもんか。



「う!」


「似合ってるぞ。でも突撃は辞めような?」


「う?」


「転んだら危ないだろ」


「うー」


「本当に恭輔がすきなのね~」


「すぐにそっち行っちゃいましたね」


「いいなぁ、恭輔君。うちの子もああなってくれれば・・・」


「そこは俺知らねぇっす」



研究員の中には既婚の女性も何人かいる。てかうちは母さんがいるせいか、女性の割合高め。他の研究所に比べて華やかだ。

年齢は幅あるけど。弟扱いから孫扱いまでなんでも受けてきたぞ。



「お前もこれからそうなるぞ~」


「う?」


「もうそうなってるか・・・。ピッちゃんは・・・?」



よく見ると、そこにはピッちゃんサイズの椅子に座りながらくつろいでいるピッちゃんが。周囲には同じようなサイズの家具、そして家が。

・・・これ、あれだ。CMで見る森の中の家的なあれだ。



「・・・似合ってるな」


「う!」



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― 新着の感想 ―
[一言] 「俺も今貰ってる金額だと軽くサラリーマンの平均年収超えるし」 サラリーマンの平均年収と比較するような額しか貰ってないんや。低いね
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