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342話

爆走する子

「あ、そうだそうだ。もう一個聞きたいんだけど」

「何?」(ムニムニ

「あんたってなんでフミさんの事好きになったの?」

「・・・スゥー」

「あ!うちも気になる!!」

「聞いたことないし。フミさんも知らないし・・・てか、そういうのはちゃんと伝えなさいよ」

「・・・マコトソノトオリデ」


あーいやー・・・確かに言ったことないなぁ・・・。

そもそも、ちゃんと考えたことなかったていうかなんというか。


「え?最初っからってこと?」

「いや最初は違う。フミも違ったはずだし」

「せやなぁ」

「あー。最初って怖がられてたんだっけ?」

「まぁ警戒はされてた」

「めっちゃ警戒しとったわ。雰囲気がこんなにもわからん存在がおるんかって感じ」

「わからない?」

「なんていうんやろ・・・人間なのに、絶対にそれ以上の何かみたいにも見えるっちゅう感じ?」

「えぇ?」


まぁわからんだろうよ。そもそもが俺に何かしたって言うあの人・・・ダンジョンを作り出した女の人の失敗のせいなのだから。

この時の俺の、フミ曰く不気味な雰囲気については2人で考察している

まぁ基本的にわからなくね?ってことになったんだけど。大体の推測として、俺の体に起きていた変化・・・俺も気がつかないくらいの細かい変化にフミが気がついたってことだと思う。

人間にしては、明らかにおかしい何か。それがフミと直接会う時には見逃せない物になっていた。

だが結局それの正体はわからないため、フミは警戒していたと。大体そんな推測になった。


まぁ姉ちゃんに言ってない話なので秘密なんですけど。

フミ、上手く誤魔化せ。


「あー・・・人間にしては強すぎたんでなんかあるんやないかって思たんです」

「あー。確か恭輔の人間離れはおかしかったわよねー」

「なんだその共感」

「んで?そっからどうやって今のご関係に?」

「・・・自然と」

「途中からはうちがアピールしたんですわ!」

「え!どんな風に?」

「今の姿で擦り寄ったり、尻尾で包んだり」

「・・・」

「お腹触らせたり、一緒に寝たり」

「・・・狸で?」

「そらもちろん」

「・・・あんたはそれで惚れたと」

「待て違う」


とんでもない勘違いをされている気がする。間違いなくされている。

その言い方だと、俺が動物にってことになる。


「いや、普通に人型でも出かけたりしてただろ?」

「それ、大体うちが好き言われてからやん」

「・・・そもそも言ったのって『昇華』の時で合ってるよな」

「大体合っとる」

「時期は覚えてるのね。で?」

「・・・なんで好きになったか・・・ええ?」


なんかこう・・・特にこれと言ったエピソードはなかったような・・・。

確かに『昇華』の時は結構ドラマチックだった気がするけど、そもそもそれ以前にそうなってた気もするし・・・


「いや、本当にこれといった物はない気がする」

「ええ?」

「なんか、こいつの隣は俺がいいなぁって気がついたら思ってたし。それが当然だと思ってたし」

「ほほう?」

「・・・まぁいつも一緒にいたから、そうじゃなくなるのが嫌になったんだと思うけど・・・って、何俺は真面目に考えてんだ」

「はー!いいなー!私もそういう恋したいなー!!」

「そういう年じゃないだろ姉ちゃん」

「ああん?」

「思ったんやけど。キレかたとかやっぱ似とるわ」

「そら姉ですから」

「弟だからなぁ・・・」

「ま、弟の話はつまらないのがわかったから、フミさんの話を聞くか」

「やめろ恥ずかしい」


なんで俺のどういうところが好きかの話を人にしてる話を本人が聞かなきゃいけないだ。











フミが人型に戻って、姉ちゃんと一緒に俺の話をし始めたので急いで離脱した。

それと一緒に暇だとのことでロラちゃんも一緒についてきたのでそのまま散歩でもするかってことに。


新しいダンジョンでの発見。古いダンジョンの方でも俺が攻略階層を地味に更新してるので、今もまだ忙しい。

むしろ、新人冒険者の募集には関係ない連中が多いから、その分今の方が忙しそうだ。

まぁ研究するのがメインだから間違ってないんだけど。


「てか暑いから外出たくないな」

「」(ブラーン

「楽しい?」

「」(タノシイ

「そうですかい」


何故か散歩だと言っているのにロラちゃんは腕にぶら下がってきている。

高い高いに似てるんだと思う。反応一緒だし。

俺のいた部屋が研究所の3階。地下含めて7階層のこの建物でいうと真ん中あたり。

中心が吹き抜けで、一階の部分がテラスになっているので、窓から他の階層が良く見える。

ボケーっと眺めていると、反対側の人が歩いているのが見える。

すると、一つ上の階の廊下に見慣れない人が。外国人みたいだけど。


「ん?なんでいんだ?」

「」(ドシタ?

「まぁ俺に言われてないだけで客って可能性も・・・」


まぁまず不法侵入の類はないだろう。目立ってるし。そもそも案内人と思われる人と一緒にいるし。

あ、理系さんじゃんか。じゃあ客なのか。

俺に何もないってことは、まぁ俺には関係ないって話なのかもしれないけど。


向かってるのは。あっちだとどこだ?

4階は確か・・・薬品研究の部屋があったよな。

理系さんが案内してるのはたまたまか?


「」(ジー

「・・・んー?」

「」(ダッ

「んー・・・ん?ロラちゃん?」

「」(タッタッタ

「おおおおお!?!?」


ロラちゃん何故に全力ダッシュ!?


ロラちゃんは決して強くない。元々レベルも低いし。

だが、唯一と言っていい強いステータスがある。速度だ。それも、逃げる時の速度は速い。

コロちゃんやフミ。俺の全力時には流石に及ばないが、うちの子の中でも上位に入る速度だ。


だから、戦闘状態じゃない。先に走られている状態だと俺でも追いつくのは簡単ではない。


「ロラちゃん!?」

「」(タッタッタ


階段を軽やかにジャンプして越えていくから、普通に上がってたんじゃ追いつけない。

俺もジャンプして跳び越える。追いついたのは、俺が3階から見ていた4階の廊下だ。


「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ロラちゃん。急にはやめてよ」

「」(ジタバタ

「おおん?どうしたんだ本当に。どこか行きたいのか?」


そう聞くと、急にロラちゃんの動きが止まった。本当にどこか行きたいところがあるようだ。


「どこ行きたいの?」

「」(ココ

「ここ?・・・客入ったところだよな。マジで薬品室だったし」


正確には402号室って名前だけど。

~室っていうのは、俺がわかりやすく言っているだけだ。


ここの中・・・と言っても、薬品室は複数ある。

回復ポーションと一言で言っても、いくつか種類がある。

難病すら治すロラちゃん印の薬。ダンジョンで採れた薬草で出来た回復ポーション。

今はまだ作れていないが、素材がそろい次第さらにポーションは増えていく予定だ。それに、藤岡さん達が独自に見つけた何かも入ってるかもしれないし。

だからこそ、ここに入れる人間は決まっている。

研究の内容が内容だから、うちの研究所の中ではトップクラスのシークレットルームだ。

研究所の部屋はそれぞれ電子ロックで管理されている。ここの部屋のロックの開錠権限はかなり高い。


「・・・入りたいの?」

「」(コク

「・・・ハァ。後で怒られような」

「」(ワー


俺も本当は自由に入れないんだけど。研究の内容的に俺が深くかかわっているのもあるからな。

こういう時の為じゃないけど、俺のIDカードの権限は高いんだ。

カードをかざして、部屋に入る。

普段なら研究している時間だから、研究員達がいたりするし、机の上には道具が置きっぱなしになってるんだけど、今日はない。

代わりに、親父とここの部屋の責任者。それに、見た目のままの英国紳士みたいな人がいた。


「ん?誰だ」

「あー俺俺」

「恭輔?どうしたんだこんなところに」

「所長、こんなところて」

「いや、俺じゃなくてロラちゃんが」

「」(ダッ

「ロラちゃん!?」


再び俺を振り切り脱走。苦しくないようにふわっと抱えたのが裏目に出た。

そのまま薬品に直行。それを手に持ってさらに奥の部屋へ。


「マジで何してんだ!?」

「ッッ!!止めろ恭輔!」

「わかってるわ!!」


あの薬自体は大したことはない。確か、薬草で出来たポーションとロラちゃんが作った薬の合成だったはずだ。

効果はわからない。最低限体力が回復するのはわかっているが、それ以外何もわかっていない。


ロラちゃんを止めるべく、普段外では使わない全力でロラちゃんの前に出る。

捕まえようと手を伸ばすが、ロラちゃんはスライディングしてこれを回避。そのまま勢いのまま俺の足の間を抜けていった。


「なにぃ!?」

「」(イソゲイソゲ

「急げ?」


ぴょんと飛んでドアノブを捻り、奥の部屋に入って行ってしまった。

俺も続いて入っていくと、そこには目を疑う光景があった。


人が、手術台に寝かされていた。周囲には数人の研究員。

問題は、寝かされている人だ。眠っているようだが、その魔力がおかしい。

異質な魔力がほとんど、少しばかり普通の魔力がある。この魔力は・・・


「精霊?」

「」(ドケ

「うわ!!」


どこで覚えたのか、速度に乗った綺麗な回し蹴りを決めるロラちゃん。

研究員をどかして、寝かされている人の上に乗っかり、持っていた薬を口にぶち込んだ。


「ちょ」

「」(セーフ

「何がセーフ!?」


一体全体何をしてるんだロラちゃんは!?

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