ポヨネのおまけ
ポヨネの話。
私が実体化してから、早1週間が過ぎました。
とは言っても、特に何か変わるわけもなかったのですが。
何故って、元からねっさんとヨミの協力と、恭輔さんが認めてくれていたから、私は、私たちは普通の家族の様に生きてこれました。
それが、本当の意味で生きることができるようになったというだけです。元から私は、ずっと分身のままでもよかったのです。
今でさえ幸せなのに、これ以上となるとどうなってしまうのか。
なにより、恵まれた私です。これ以上何を望むことがあるというのか。
それを、恭輔さんがあっさりと私の事をあの存在にお願いして、それが叶ってしまいました。
私的には、一生のうちで叶うことはなく、ありえないと思っていた奇跡があっさりと。
それをおこなったのはあの遠い存在のあの方ですが、それを引き寄せた恭輔さんはなんなんでしょう。幸運という言葉では足りない程に、恭輔さんは・・・
その幸運を、私に分け隔てなく与えてくれる恭輔さん。
そんなあなただから、私はどんなお願いごとだって叶えてあげたい・・・かなえてあげたいんですが・・・
「あふん」
「スゥー」
ま、毎日お腹あたりを吸われるのは流石に恥ずかしい。
元々、これが始まったのは猫吸いなるものに恭輔さんが興味を持ったから。
いや、興味自体は元からあったようなのですが、それが我慢できなくなってうちに来る猫ちゃん達でやろうとした時。
その時に私から志願して吸われるようになったのだけれど、何故私が志願したか。
・・・言うのも恥ずかしいんですが、元の感情は嫉妬です。
猫ちゃん達とは仲良くさせてもらってますけど、だからと言って恭輔さんにそれをされるのは違うでしょう!
ここは、大門家の一員として、恭輔さんの欲望は自分たちで発散させてあげなければ!
そんな言い訳共に志願した結果、ほぼ毎日のように吸われているのですが・・・
「ポヨネ~」
「はい~」
「どこか痒い所ないか?」
「大丈夫です~」
別に吸われるのが癖になったとか、その後恭輔さんに撫でてもらったり毛づくろいしてもらったマッサージしてもらったりするのが楽しみにしてるわけじゃないんですからね!!
・・・誰に言っているんでしょうか私は?
「うーうー」
「はい?どうしましたニホリ」
「う!」
「わかりました」
一日の日課(ポヨネ吸い)が終わったら後は自由です。
今日は何をしようかと思っていたら、ニホリに倉庫の整理を手伝ってと言われました。
ニホリはスキルで重い物も浮かせて簡単に運ぶことはできますが、一人では時間がかかります。
物を運べて、『倉庫』を使えばいったん物を仕舞って整理することもできる私が適任でしょう。
「う?」
「あら?そうですか。じゃあ・・・えい!」
庭に大きいテーブルと、ばーべきゅうー?用の道具を出すからとのことで、ポメラニアよりは人の方がいいとのことだったので『変化』で人型に。
今の私は、ヨミの姿をしなくても人型になれるんですけど、まぁ別段ヨミの姿で困ることもないのでそのままに。
ただ、ニホリとピッちゃんが髪型くらい変えたら?というので、私は基本ポニーテールにしています。ヨミがストレートなので、そこで見分けが付きますね。
恭輔さんはそんなことしなくても普通にわかるみたいなんですけど。
「ところでばーべきゅーってなんですか?」
「うー?」
「あらま。珍しいですね」
「うーうー。う」
「味?お菓子?」
変な話ですね。ばーべきゅー味のお菓子はあるから、何かの料理だと思うとは。
料理ならニホリが知っててもおかしくないと思うんですけど。
まぁ頼まれたからには運び出しますけど。
倉庫は現在2つ。そのうち片方はダンジョンの入り口があるので、大体の物は新しい方に移動しています。
今回のは、古い方にあるとのことなのでそちらですね。
中にはほとんど物がない・・・と思っていたのですが。
「・・・結構ありますね」
「・・・うー」
「ああ、そういう」
恭輔さんが後回しにしてたから請け負ったけどやめればよかったとは。まぁこれを見るとその気持ちも分からなくはないですが。
「ともかく、ばーべきゅーの道具を見つけなければ。どんなのです?」
「う!」
ふむふむ。銀色で4つ足。網がついてて箱のようだと・・・となると・・・
「いまニホリが寄りかかりそうになっているそれでは?」
「う!?・・・うー!」
いや私に言われても・・・聞いたの今ですし。
ともかく、これを運び出すと。・・・これなら別に私いらなかったのでは。
そう思っていたら、まだ他にも出さなければいけない物は多いらしい。椅子とか、テーブルとか。
むむ。いくつかの物は不要な物の下敷きになってますね。仕方がありません。さっさと終わらせましょうか。
物をすべて運び出したら、ニホリは恭輔さんに呼ばれてキッチンへ。代わりにお姉さま・・・フミさんが出てきました。
「お疲れポヨネ。はいどーぞ」
「ありがとうございます」
渡されたのはお茶です。私はベースの姿こそポメラニアンですが、その実態はモンスターと変わりないので食べる物は人と変わりません。
麦茶だろうが緑茶だろうが何でも飲めるんです。あ、でも炭酸はちょっと・・・
冷たいお茶が、喉を通り抜ける感覚が気持ちいい。
分身だったころも、食べたり飲んだりすることできましたが、必要なかったのですることはあまりなかったです。
だた、断ると恭輔さんがすごく残念そうな顔をするので、それが忍びなくて何回かは・・・ってかんじです。
そもそも、分身の状態は五感の感覚も一部を除いて鈍くなります。これは、ねっさんの分身の使いかたによるものですが。簡単に言うと、視覚と聴覚以外はかなり鈍い状態でした。
だから味と言っても薄くしか感じなかったんですが・・・
「ふぅ。おいしいです」
「ポヨネは本当においしそうに食べたり飲んだしするなぁ」
「はい!ようやくみんなと同じ感覚なんですから、何でもおいしいく感じます!」
「それ、絶対に恭輔に言ったらあかんで?」
「わかってますよ。そもそも自分の意思で隠してたんですから」
「隠せいうんやないけどなぁ。なんというか、恭輔めっちゃ凹みそうやしなぁ」
「そうですね」
だからこそ、五感の鈍さを隠してたのだ。
自分が無理やり付き合わせてたと思われたら、恭輔さんの事です、絶対に凹みます。長い間引きずります。絶対にそれはいやです。
「ふふ。ありがとうございますお姉さま」
「いやええんやけど・・・」
「どうしたんですか?」
「・・・いつまでお姉さまなん?」
「嫌です?」
「嫌ちゅうか・・・いや、見た目はヨミやからまだええんやけど・・・」
「違和感すごいと」
「そんな感じや」
恥ずかしそうに頬を掻いているお姉さま。
だけど、この呼び方は私が私として確立した時には既にあったものですし。
元がヨミだからというのももちろんあるしょうけど、私的にもしっくりくる呼び方なんですよね。
確かに、ヨミの分身ではなく、新しい個体として確立したのですから、新しい呼び方でもいいとおもうんですけど・・・
「面倒だからこのままでいきますねお姉さま」
「うがー!ヨミがめっちゃおしとやかになった感じがしてむず痒い!!」
「うふふ。早く慣れてくださいね?」
「クゥーっ・・・なんやそういうところだけヨミのもん受け継ぎよって」
「便利ですからね♪」
まぁほとんど犬の状態だと思いますけど。
だって、犬じゃないと恭輔さんに抱っこしてもらえませんから。




