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336話

職場の冷房が寒い

さぁ夏本番って時期になってきた。

つまり、ダンジョンが発生してからちょうど1年経ったってことになる。

俺とすらっぴの出会いから早1年と考えると感慨深いものがある。


「だからと言って何故俺の頭の上に?」

「ぴぴ?」


いや確かにいつもの事なんだけどさ。

そういえば、なんのきっかけで頭の上に乗るようになったんだっけか。


「ぴ!」

「あれ?そうだっけか?」

「言われてみると、俺もバトちゃんが最初だった気もするな」

「マジか」


すらっぴと親父曰く、一番最初に俺の頭の上に乗ったのはバトちゃんだとのこと。

飛行し続けるのは疲れてしまうから、とか言う理由だと思われる。

いやー本当になんでだ?


「まぁそこは今度でもいいだろ。大事な話がある」

「お、急だ」

「・・・ぴ?」

「・・・まぁいいけどさ」

「ぴぴー♪」


なんか難しそうだから遊んできていい?とか聞かれたよ。まぁ好きにしてとしか言いようがないけど・・・


「あ、だったらコロちゃんも一緒にね」

「ぴ?」

「・・・ワフ?」

「いや、念のため?」


コロちゃんも部屋で話聞いてても寝るくらいしかないだろうし、一緒に連れてってもらいましょう。どうせ俺にしか関係しない話だろうしな。

まぁ確かにと、コロちゃんも納得してすらっぴと一緒に部屋を出ていった。

近くにふーちゃん達もいるみたいだし、暇にはならんだろう。


「んで?何の話?」

「前に、さらに新しい冒険者を募集する話をしたのは覚えてるな?」

「流石に」

「それの続きだ。時期が決まったぞ」

「お!・・・ってことは?」

「ああ、他の国の冒険者相手にするって話も決まった」

「おおー」


ダンジョンを探索するにおいて、もっとも難題なのは冒険者の育成だ。

まず第一に、今世界各地でダンジョンに潜っている人間はほぼ軍属になる。そもそもダンジョンの管理は国がやっていることがほとんどなので、当然なのだが。

だが軍人は軍人で仕事があるのだ。ダンジョンにばかり構ってられない。

日本だって、藤岡さん達が自衛隊からうちの研究所に来たしな。

つまり、冒険者は数が少ない。そうなると、新しい人が来ても教えることができる人間が少ないと言うことになる。

一般人を募集するにしても、今まで戦うことをしてこなかった人が入って成果を上げられるかというと微妙だ。

1層とか2層とかで戦い続けて絶対に安全なレベルにまでなれれば下にも行けるが、時間がかかりすぎる。

さらにいうと、新しいダンジョンが出てきて、そこで手に入れられる物は十分に価値のある物だ。

そこを探させるのにさらに人が必要になっているがまぁ足りないと。

そこで日本みたいに新しい冒険者を募集して、ダンジョンを探索させようとする動きはどこの国にでもある。

問題は、誰が教導をおこなうのかってことだ。

今潜っている人たち・・・藤岡さん達以外は20層前半で止まっているのが大体だ。

むしろ、藤岡さん達がおかしいと言える。今もフミと組手を偶に行っているのは伊達ではないということだろう。

俺?例外中の例外らしい。そもそも俺の事を知っている人は俺の事を他の冒険者と同じには見ていないのだ。


「それで、藤岡さん達が一回他の国の冒険者に教えて、その教えを受けた人たちが自分の国で教えるとかそんな流れだっけ?」

「その通りだ。その際に、お前も手伝ってもらう」

「・・・まぁいいけどさ」


いろいろ自由にさせてもらってるから、そういう仕事はいいけど。


「まぁ手伝うと言っても、直接誰かに教えるってことはしないがな」

「あら?そうなの」

「ああ。そもそもお前向いてなさそうだし」

「ぐうの音も出ねえな」

「実のところ、他の国の連中にちゃんと釘をさしたいってのもあるんだが」

「あん?」

「最近。また他の国がうるさくてな・・・」

「俺の事で?」

「そうだ。お前が手に入れた成果をごまかしてないかーとか、彼が例外なのだがら日本だけがその恩恵を受けるのはおかしいだとか」

「はぁ?俺の見つけたやつって隠してるのか?」

「隠すわけないだろ。隠してるのは研究所での研究成果だ」

「ここのと、もう一個のか」

「そうだ。発見した内容については隠してない」

「だから疑われるんだよ」

「だろうがな」

「んで?それがなんで俺が手伝うって話に?」

「ああ、それはだな」


うるさい連中というのは要するに、俺が日本にいる現状が気に入らないと。

まず日本から離して、ある程度時間が経ったら自国に引き込めばいいという考えであろうと予測しているらしい。

俺の実力は、これから先さらに上がっていくだろう。それは、どこの国よりも先に新しい発見を、新しい何かを見つけることが約束されているのも当然ということだ。

日本ではなく、俺のいる国がだ。


「簡単な話、お前をどうこうできると思われているのが原因だ」

「・・・ああ、勧誘できそうだなってことか」

「そういうことだ。大体間違ってないだろ?例えば、日本がコロちゃんなんかを害そうとしたらどうする」

「滅ぼす」

「そういう情報を与えて、印象を悪くして自国の印象を少しづつ良くしていく。すると?」

「俺がその国に所属する可能性が高くなると・・・えらい遠回りな」

「そうでもない。お前は10年20年先まで間違いなく最強なのが確定しているからな」


高評価をいただいているようで何よりだこと。


「んで。今は日本が俺に対してのそういう行為を止めてるから日本から離そうとしてると」

「そういうことだ。ぶっちゃけ、これに関しては打開策がない」

「は?」

「だって相手は日本にお前がいる状況そのものが気にくわないだけだからな。言い分もまぁわからなくもない」

「だからこそ余計に何も出来ないと」

「そういうことだ。今のところあちらさんの思い通りにはならないと思うが、先のことはわからないからな」

「だから釘を刺しておきたいと・・・どうやって?」

「簡単な話だ。お前を抱え込むことのリスクを見せてやればいい」

「・・・ん?」


完全に悪いことを考えている顔だ。・・・何を考えている?

そもそも、俺を抱え込むことのリスクってなんだ?ダンジョンがある限り、俺は新しい発見はするだろうし、他の国とは比べ物にならないほどの量の資材を手に入れるだろう。

まぁ他の国からやっかまれるのはあるだろうけど。それくらいじゃないのか?


「まぁ自分の事だからわかりにくいだろうがな」

「だから何なのさ」

「・・・お前、自分の危険性についてどれくらいの認識だ?」

「・・・あー」


そういうことか。確かにそれはリスクだ。それも特大の。

どれくらい戦力を投入すれば止められるのかわからない存在なんて危険すぎる。

いや違うか。親父は既に俺たちを止められる物がないと考えているのだろうな。


「ヨミさんから聞いたんだが、あの人の張る結界は理論上何でも防げるそうだ」

「俺の防壁、フミもなんか隠し玉持ってるだろうしな」

「そうだ。街を更地に変えたとしても、お前らは倒せないだろうな」

「はぁー・・・そういや俺危険人物だったな」

「ミサイルだろうとなんだろうと防げる。なのにそっちからは一方的に攻撃できると」

「流石にミサイルの射程には勝てないわ」

「お前はな?フミさんは?」

「そもそもあいつは多分ミサイルより早く動けるぞ」

「・・・聞かなかったことにしていいか?」

「俺は構わん」

「よし」


何がいいんだ。

一端お茶を飲んで一呼吸。


「そこで、我々は考えた!」

「おお」


腕を大きく広げて、俺に語ってくる。


「お前の危険性!それを伝えるにはどうするかを!!」

「・・・一応自分の息子が危険物扱いされていることへの感想を一言」

「マジクソ」

「OK流石お父様」


良いおやじ様です。


「まぁ危険物扱いはともかく、お前が制御できないと思われればいいんだ」

「まぁそれはわかったけど・・・何するのさ」

「簡単な話だ。お前、ちょっとお前が行ける一番低い階層で戦ってこい」

「・・・お?」

「出来れば狂ったような演技があると尚良い」

「待てい」

「ほらあれだ。お前が初めてテレビに出たあんな感じで」

「やっぱりあれか!!!」


皆さまは覚えていらっしゃるだろうか。俺が初めてテレビに出た・・・まぁマスクして顔隠してましたけど。

そこで、俺の推しアイドル『マーリル・メープル』と一緒にダンジョンに入ったあれを。

ニホリの『強化』の効果で、精神状態が高揚し暴れたあれです・・・


「あれと同じことをしろと!?」

「日本に来た冒険者が、お前に対して危険を感じたらどうすると思う?」

「・・・国に報告する」

「正解だ。可能なら、日本も制御しているわけじゃないと思わせたい」

「ああ?いいの?」

「構わんよ。雇い主がうちなら問題ないと仰せつかっているからな」

「だからこそ、本気でやれと」

「そういうことだ。ほら、最近新しい方ばっかりでストレスもたまってるだろ」

「完全にそれ後付けだな」


まぁ確かにストレスというか、もうちょい歯ごたえ欲しいなとは思うけど。

今現在だと、58層になる。

新しいダンジョンが生えてくるまでは56層まで攻略してて、そこからは少ししか進んでない。

まぁ優先順位あるしな。仕方ないことだけど。


「58層だとあれだろ」

「あれだな」

「そこでやってくれ」

「・・・戦うのはいいけどまた見世物かぁ・・・」

「まぁ嫌なのはわかるが、すまんが頼むよ。ここで一発決めておけば、お前がフリーになった時も安心できるだろうからな」

「・・・しゃーないか。先行投資として諦めてやるか」

「今度何か埋め合わせはしてやるからな」

「ほう?何?」

「スナネコの赤ちゃんに会わせてやろう」


家にいたニホリ曰く、この時の俺から伝わってくる魔力が爆発的に増えて何事かと思ったとのこと。

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