海の日的なおまけ2
「・・・疲れた」
「・・・うー」
「・・・ウゴケナイ」
「はいはい。そこで倒れてると溺れますよ」
「運んじゃいましょうか」
「やれやれ」
ボールで遊んだり、水掛け合ったり、ちょっと潜ってみたりしてたらあっという間に疲れ果ててしまった。
あれ?ダンジョン潜ってるからもっと動けるかと思ったのに、雪ちゃんとほぼ同タイミングで倒れたよ?
「そりゃ、ニホリちゃんは普段浮いてるから歩いてないじゃないですか」
「ああー。言われてみると」
「そもそも、人形って体力増えるんですか?」
「疲れること自体意味不明というか」
「・・・うー?」
「イワレテミレバ」
そういわれると、何故私たちは疲れるのだろうか。
ヨミたちに運ばれながら考えてみるけど全く分からない。
軽くタオルで拭かれた後で広げられたシートに下される。すると、恭輔も戻ってきた。
「そら、魔力が体力の代わりというか、ともかく消費するものはあるんだから仕方ないだろ」
「あら。デートは終わりで?」
「いや、今お昼やん。食べたら後でってことや」
「なるほど。で?消費するものがあると疲れるんですか?」
「まぁあくまでも俺の考えだけど、体が魔力を消費する感覚に慣れてないんだろ」
「でも、スキルで浮かせたりしてる時は疲れてないですよね」
「使う意図によって、感じ方が違うんだろう。俺たちも慣れないことをした時の方がつかれるだろ?」
「ああー納得です」
な、なるほど・・・
「・・・あれ、結局ニホリが運動不足なことに変わりないんじゃ」
「そうだな」
「そうやね」
「・・・うー」
「ワタシモ?」
アリシアは既に座れるくらいには体力が戻ったみたいだ。
・・・え、私まだ動きたくないんだけど。
「アリシアも微妙にそうなんだろ。まぁ子供なんだからそんなもんと言えなくもないけど」
「ニホリは二人とちゃってダンジョン潜ってるんのに歩かんから二人とおんなじくらいになっとるわけやなぁ」
「ジャアイイヤ」
「雪ちゃんは、逆に毎日お散歩してる分体力も結構ついてきましたね」
「えへへ~」
もうちょっと歩こうと決心した夏の日。
恭輔の作ったツリーハウスに上るとかやってみようかなぁ。
「あ、いきなり難しいのやるなよ。辛くて続かないから」
「まずダンジョンで歩くところからでいいんじゃないですか?ニホリ」
「うー」
「飽きるって・・・」
ダンジョンは景色が変わり映えしないからやー
普段なら手足をジタバタしてやるんだけど今は疲れるからできない。
命拾いしたな!
「何言ってんだお前・・・とりあえず飯食うか」
「うー」
恭輔にしか私の心の声が聞こえないからまったく反応がないぞわー。
まぁ何を言おうと今の私が体力のない置物・・・人形であることに変わりはない。
お昼の準備だって恭輔とポヨネがやってるし。
そういえば、今日のメニューはポヨネが作ったんだよね。何作ったんだろう。
「そういや。俺も知らないな」
「いえ。海に行くとのことだったので、海っぽい物を」
「海っぽい?海鮮系?」
「そういう方面ではなく。海で食べる物ってことです」
「うん?なんでしょう。この私が全くピンともこない」
「・・・あー。そういうことか」
「ナニナニ」
「これらです」
そう言って、ポヨネの倉庫の中からいくつかの鍋を取り出した。は?いくつかの鍋?
「・・・う?」
「カレーとラーメンですね」
「う!?」
このクソ暑いなかカレーにラーメン!?何考えてんの!?
「あーうんうん。だと思ったわ」
「え?人間は夏の海でこれを食べるのが常識?」
「てか、海の家で食べるんだよ」
「海の家?」
「海中に家がたっとるん?」
「そういうのではない」
要するに、お祭りで言うところの屋台的なものらしい。
そこで出される微妙においしいのかまずいのか判別のつかないカレーとかラーメンを食べるのが海に来た時の風物詩らしい。
はぁ・・・だからカレーとラーメン・・・
「・・・う?」
「ああいや。そこまで再現は」
「あれは予算を低く抑えながら雰囲気で利益あげる感じだからなぁ」
「普通に作りましたよ。普通に」
流石に微妙な美味しさの再現まではしなかったのか。されてたら疲れてようが何だろうが飛び蹴りしてた。
ポヨネがお皿にそれぞれ盛り付けている間に、コロちゃん達も戻ってきてお昼ご飯タイム。
一杯走り回ったのか、かなりハァハァしてる。暑いからね。
でも、私はその後ろにあるヤシの実を飲んでしまえばよかったのではと思うんだ。
「ワン」
「うー」
恭輔に持ってきたのに飲んだら意味ないだろって、コロちゃん何してたの?収穫?
まぁそんな恭輔大好き狼の事は今はいいだろう。
どっちにしろ冷やした方がおいしいし。ポヨネ~冷やして~
「ん?ああ、ヤシの実ですか。じゃああそこに入れといてください」
「う?」
「カキ氷用の氷です。結界で遮断して色々やってるので冷たいままですよ」
「うーうー」
そんなことできたの?
ヤシの実を指定された場所・・・正確には保冷バッグの中なんだけど。
なんか大きいのあるなぁとか思ってたら、これも『倉庫』の中に入れてたのか。バッグを開くと、中には大量の氷とスイカが。
「うー?」
「スイカは後で~!」
「うーうー」
らしい。
ヤシの実を仕舞ってと。
氷を一つ頂戴して口に含む。ちゅめたーい。
「何食ってんだ」
「う」
「知っとるわ。もうよそい終わってるぞ」
「うー」
「・・・なんか甘えん坊だな」
だっこだっこーとせがんだらしてくれた。やったぜ。
シートの上まで運ばれて、隣に下される。
改めてカレーとラーメンを見てみよう。
カレーは夏野菜カレーというやつだろう。ナスなどの普段家のカレーには入ってない野菜がゴロゴロしている。
ルーのとろみも申し分なし。恭輔の好みに合わせたのだろう。恭輔はスープカレーよりかはパンなどに乗せやすいトロッとしたカレーが好みなのだ。白米だけじゃなく、バケットも用意してあるみたい。これは市販品だな・・・
「流石にパンまで作れませんよ・・・」
「まぁ行くって言ったの昨日だしな」
確かに、それは仕方ないか。そもそもポヨネってパンの作りかた知ってる・・・いや、調べればいいのか。カレーもそうだっただろうし。
あ、パン生地こねる機械欲しい。
「お、じゃあ今度買うか」
「うー!」
やったでおい。
よし、続けてラーメンを見る。
醤油味だと思う。匂い的に。中太麺にチャーシュー。海苔とメンマ、ネギとオーソドックスな具だ。
うーん。流石に食べないとわかないなぁ。
「麺とかはニホリが作ったやつですよ?」
「う?・・・う」
そうなのか。だったらまぁスープの出来次第ってところだろう。
場合によっては皿を投げる。
「こわ!?」
「ニホリが良くわからなん料理の評論家みたいになってる」
「シェフを呼べ!ってやつですね」
「それやると本当に来るんですよね・・・」
「やったのかお前・・・」
「マナーだと思ったんですよ・・・」
雪ちゃん家でそれをするのは流石にあれだ。リスキー。
これはあくまでも、我が家の料理当番的なあれだから。
「対抗心だな」
「対抗心やね」
「ワフ」
「いや、頻繁に作る気ないんですけど・・・」
「うー」
それはそれ。これはこれだ。
では早速・・・実食!
「あ、普通においしい」
「美味しいですよポヨネさん!」
「ウマイ」
「よかった・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・ニホリ?」
「・・・うー」
・・・セーフ。




