329話
夜分
「『調合』?」
「うん。ヨミが言うのはそれがないとわからないって」
「薬を作るのならロラちゃんの『薬品生成』じゃないのか」
「みたいだわ。実際、ロラちゃんに薬草見せても全く何もわからないみたいだったし」
「うーむ。・・・ロラちゃん本人がわかってない説は?」
「割とあるけど、何してもスキルが反応しないみたいだから完全に範囲外みたい」
「そうか・・・少し楽ができると思ったんだが」
「俺も思ったわ」
薬草やら手に入れた物を研究所に送って、ヨミに色々聞いたり、ポヨネに見てもらったりしてたらあっという間に1日くらいたってしまう。
まぁ研究所の方1日でわかるものではないので、俺がヨミから聞いたことを伝える感じになった。
ポヨネの鑑定結果は既に書類で渡しているし。
そこで問題になったのは、『調合』ってスキルが必要になるということだった。
ヨミにも鑑定してもらった結果、どんなスキルが必要かがわかったのだ。
俺も最初は、薬を作るのなら『薬品生成』でいいんじゃないかと思ったんだけど、ダメらしい。あれは完全にロラちゃんが生成するためのスキルで、薬を作るものではないらしい。
まぁ生成するのと制作するの違うか・・・
「多分『鍛冶』に近いと思うんだよ」
「あれか」
「ちなみに『鍛冶』の人っていまどうなってんの?」
「まぁあんまり進展ないな。どうにも魔力の浸透率とやらが高い材料がないとめぼしい物をつくれないみたいでな」
「・・・ほ?」
それはタイミングよかったな。
今回手に入れた銅は魔力浸透率とやらが高いらしい。
「ポヨネの鑑定だと普通のより高いらしいぞ」
「本当か。だったら少しは何かあるといいんだが」
「何か必要なのって他にないの?」
「後か・・・モンスターの素材があるといいらしいんだが、何かわからないんでな」
「わからない?」
「ああ。表のような物が浮かび上がってくるらしいんだが、そこには影しか映ってないらしい」
「それ、その人がモンスターの素材見たことないだけだぞ」
「何?」
「ああいや。これは人型から聞いたんだけど」
相も変わらずうちに入り浸る人型に、この間少し気になったので聞いてみたのだ。
その結果、『鍛冶』を始めとした生産スキルと区分されているスキルは、スキル保持者が必要な材料を全て見ないとレシピ通りには作れないとのこと。
もちろん、別の材料で代用することも可能な物もあるらしいが、その場合は制作方法が変わるため個人の技能次第になってしまうそうだ。
「ていうのを昨日聞いた」
「タイミングいいな恭輔」
「まぁヨミに『調薬』の話聞いて思い出したんだけどな」
それまで一切思い出さなかったわ『鍛冶』
まぁともかく。スキルスクロールを手に入れないと話にならない。
そこから『調薬』を引かないといけないので余計に確率は低い。
「・・・やっぱり俺たちだけじゃそろそろ限界じゃね?」
「だよなぁ・・・」
最初はよかったんだ。わからないことしかないから、とりあえず手を付けられるところから手を付けていく形で。
今は、少しずつ何が足りなくてわからないとか、進展がないとかそういうのが増えてきたせいでそろそろ本当に間に合わなくなってきている。
ヨミとポヨネの『鑑定』とか、割と有用なスキルを持つ子がいてくれたからごまかせたけど。それも限界だ。
まずスキルを増やすにも母数が足りない。
ボスを倒して宝箱を開ける回数を増やさないと手に入る物も入らない。
俺と藤岡さん達だけじゃ無理。新人12人は安全を考え新人のみでのボス部屋突入を許されていない。
まぁ俺たちが一人で入っていけばその分は数を増やせるけど、それだってまぁ限度はある。そこまで数増やせないし。
「だが今すぐにはどうしようもないぞ?」
「だよねぇ」
「ヨミさんとかは持ってないのか?」
「手に入れたら俺に渡してくれるってことになってるけど、そもそもヨミはボス部屋入らないし」
「それもそうか。最近は割と大丈夫とはいえ、雪ちゃんから離れるわけにもいかんしな」
「結局俺達と藤岡さん達しかいないか。はぁつっかえ」
マジどうしようもないな。
「なんかこう・・・スキルスクロール湧いて出ないかなぁ」
「無理だろうなぁ・・・」
「「・・・ハァ」」
これがフラグだった。
「恭輔」
「おん?」
あの話し合いから2日後。我が家にて帰ってきた親父に話しかけられた。
その表情は無表情。
「・・・なんかあった?」
「あった」
「いい事?」
「・・・いい事だな」
「・・・ならなぜ真顔」
「・・・いや、世界ってすごいなぁって」
「何があった!?」
何があったらその感想が出てくんだおい!?
親父は持っていたカバンの中から、一枚の紙を取り出す。
「・・・紙?」
「そうだな。なんて書いてある」
「・・・調薬・・・調薬!?」
「なんか貰った」
「はい!?」
貰ったって何!?
話を聞くに、どうにも恩返しで貰ったとのことで。
「前に、オーク肉で自国の食糧問題を解決したいって国があったのを覚えてるか?」
「そんな話だったかは覚えてないけど俺のダンジョン攻略本を渡したのは覚えてる」
「その国から貰った」
「・・・いやなんで」
「何でも、我が国よりうまく使うことができると思ったとかなんとかで・・・」
「・・・また役人がぽろっととかではなく?」
「なく。本当に、めっちゃタイミング良く手に入ったとかで」
「・・・世界ってすごいな」
「本当にな・・・」
本当にポロっと湧いて出るもんなんだな・・・
「え、でも誰が使うの?うちの子じゃダメだろ」
「使う人間は決まってるんだ。薬剤師の資格を持った人に頼むことになっている」
「ああ。ちゃんとそういう専門の人に話通してるのね」
「元はスキルに頼らないで作ることを目的にして声をかけたんだがな」
「まぁ結果オーライってことで」
それにしても、恩返しとは言えスキルスクロールくれる国ってどこだよ・・・結局聞いたことなかったし。
後日
『恭輔!すまんがあの薬草を大量に採ってきてくれるか!?』
「あん?いきなりなに?」
『『調薬』持ちに相方の素材を見て貰ったら、ダンジョンの素材じゃなくても問題なさそうでな。効果もかなり高いことが分かった』
「ははーん?つまり、あれだ。・・・備蓄するから量をよこせと」
『ああ!ポーションと比べるとあれだが、数を用意できる分あっという間に広められるぞ!!医者先生も大喜びだ!!』
「・・・試しに効くけどどれくらい必要?」
『・・・可能な限り頼む』
「・・・新人借りるぞ」
『任せた!!』
数日間、ダンジョンでの草むしろが確定した。
 




