328話
どうせ出かけませんけど雨だと気が落ちますね
その辺で採れる薬草に続いてその辺でモンスターから魔石が手に入るって?
これ本当に今までと仕様が違う・・・違うんだけど・・・
「ちっさ」
「ミニマムサイズや」
「うー」
ビー玉かと。石だから別に透き通ってはないんだけどさ。
そう、今までのダンジョンで手に入る魔石に比べてあまりにも小さい。1層ボスで手に入る物より小さい。
これだと手に入れても意味ないとは言わないけど・・・
「ちょいと困るっていうか・・・」
「ん~何に使えばええんやろこれ」
「うー?」
「・・・恭輔さんが作った即席魔石棒くらいにしか」
「だよな」
ゴーストとか物理攻撃が効かないタイプにダメージを与えるために作った棒。
作ったっていうのもおごがましいレベルだけどさ。先端にくっつけただけだし。その棒の先端部分で突くとゴーストとも戦えるっていう。自衛隊にも何十本と渡したよ。
これだと魔石を何個かまとめてくっ付ければ可能だな。逆に言うと、今までみたいなサイズじゃないから研究にも使いにくいし、この先世界全体に広まるであろう魔石を使った発電などの様々な産業の需要に対応できないだろう。
「・・・え、これ取るくらいだったら今までのでええやん」
「そうなるな」
「結局一番の問題が解決しないんですね」
「魔石をいっぱい手に入れられるようなダンジョンって要望は通らなかったか」
まぁ薬草とか採れるし、魔石も小さいけどあるだけ増しか。
それに、必要によって使い分ければいいだけだしな。
魔石が欲しければ今までのダンジョン、その他の素材ならこのダンジョン。
まぁ俺たちのこの先の探索結果次第なんだけど。
「このままここで話してても仕方ないか。ねっさん。下の階段見つけた?」
「ちゅちゅ!」
「おお、流石」
あんまり1層ごとに時間かけてもいられないしな。さっさと行こう。
その日は、とりあえず5層まで進んだ。
モンスターの弱さっていうのも一気に進めた理由ではあるんだけど、もっと単純に攻略に必要な時間が短くなっているからこうなった。
「まさかボス部屋がないとは・・・」
「うー・・・」
「スキルスクロール手に入らんやんか!」
なんと、ボスがいないのだ。これでは宝箱が出てこないから、スキルスクロールは手に入らないし、ダンジョン産の武器も手に入らない。
素材特化?素材特化なのか?という感じだ。
実際、かなりいろいろな素材は手に入った。
まず各層のモンスターのドロップはあるとして、ダンジョンの地形と環境によってそれぞれ手に入る物があった。
1層薬草、2層何かの鉱石、3層木材、4層木の実、5層はなし。
なしっていうか、それっぽい物がなかったってだけなんだけど。
まぁ本当に色々手に入ったわな。
「鉱石の方は銅だと思います」
「思いますって・・・確定じゃないのか?」
「普通の銅と比べて、魔力の通りがいいので銅て言っていいのかどうか・・・」
「何か成分が違うのか?」
「その辺までは・・・」
「んーでも確かに。普通の銅と性質が違うならそれは銅ではない・・・のか?」
魔力の通りがいいだけしか変わらないと言えばそうなんだけどさぁ。
ただ、魔力の通りがいいからって何なんだって話はある。それで形が変わるわけじゃないし、硬くなったりするわけでもない。
本当に、通りがいいだけだ。現時点ではこの特徴を活かせない。
まぁダンジョンの地形から採れたものだし、尽きない資材って見方をするのなら有用か。
「木材と木の実は?」
「木材は杉で、木の実は多分どんぐりかと」
「・・・多分」
「それがですね・・・」
ポヨネやヨミだ物を鑑定した場合、こんな感じに見えるらしい。
名称 銅鉱石
重さ ~グラム
大きさ ~センチ
含有率 ~グラム
魔力浸透率20%
大分省略したけどこんな感じ。
これの他にも、花だったら開花から何日とか、肉とかだとどの部位とかもわかる感じ。
情報量は『鑑定』の強さによる。
それが、どんぐりらしきものを鑑定した際にこんな一文が追加されていたそうだ。
「何かと混ぜるとよい?」
「はい」
「何かって・・・何?」
「さぁ・・・薬草にも同じ分があったので、恐らく薬とかそういうのを作るときに他の素材と混ぜるってことなんでしょうけど」
「その何かはわからないと」
「私の『鑑定』の不足なのか、そもそも見れないのか、私がもう一つの素材を知らないからなのか」
「原因は不明なわけだ」
「ごめんなさい・・・」
「謝ることないって、あの連中のことだ。俺に潜ってほしいんだけどちゃんと探索してほしいんだろう」
そうやって解明した結果を世間に示すことで、ダンジョンの有用性を示して行けと言うことだろう。
俺の力を試すような事は今まで何度もやられて来た。今回もそういうことって可能性が高い。
元とは言え、ヨミの分身体としての能力を持っているポヨネが力不足ってのは考えにくい。
「見れない。相方を知らないって方だろうな」
「うーん、確かに私が見れないとヨミでも見れませんし・・・それだと、私たち以外が『鑑定』を持ってても使い物にならないですね」
「便利なのは確かなんだけど、いくらなんでもそれは難易度高いからな」
フミはおろか、ヨミのレベルですら見えてないのが俺だ。
そんな彼女たちの『鑑定』はそれ相応に強いというか、育っている。
それで力不足ですなんて言われるようなものだと、人間だといつ追いつけるかって話になる。
「んまぁ、とりあえずこれはどんぐりでいいか」
「いいんですかね?」
「いいでしょ。モンスターリスだったし」
攻撃方法は木のみを撃ちだすと噛みつくだったよ。撃ちだすっていうか、指弾的な感じだった。
結構厄介なんじゃないかあれ。普通に数いたし。
とりあえず、今見てもらった物は梱包して研究所に送る。
いつも通りの専用車両をうちに呼んで持ってってもらう。その際に俺の報告書も渡すので、今のも聞きながら書いていた。
本当はこういうのって一日くらいかけてやるんだけど、明日はまた下に行かないといけないし、ワープ部屋が見つかってないからその分早く家を出ないといけない。
やることは早めに済ませて寝ないと。
「それにしても、一気に忙しくなりましたけど。大丈夫ですか?」
「ん?俺?」
「はい。最近お姉さまともお出かけしてないみたいですし」
「あー」
ダンジョンに潜れなかったのは、自宅待機をしなければいけなかったから。
いつ探索許可が下りるわからなかったし、それに備えておかなきゃいけなかった。
そのせいで、新しいダンジョンが出てきてからは出かけられていない。買い物で少し外に出たくらいで。
だけどまぁ・・・
「庭で走り回ったり、木の上の蔓ハウス改良したりとやることはあったしな」
そこまで暇してなかった。コロちゃん達と遊ぶのでもいいし。
フミと二人になる時間もあったし・・・何言わせんだ。
「そういうポヨネは大丈夫だったか?散歩も行けてなかったし」
「へ?私は全然大丈夫ですよ?」
「うん?」
いやに軽いというか・・・本当に何も思ってない感じだな。
コロちゃん達も結構ひまだーとゴロゴロしてたのに。
「私の場合も恭輔さんと一緒ですよ。やることはありましたし」
「あれ。そんなになんかあったか?」
「結界の更新とか、うちに来る野良ちゃん達のお世話とか、ユニちゃんとロラちゃんとおしゃべりしたり・・・」
ポメラニアンのポヨネが、指で数を数えるように手を見ているが、全く指は曲がっていない。
それでもちゃんと1個1個と数える姿に俺が悶える。顔にも出さないし、全く身動きしないけど心はグネグネしてる。
アハァーカワイイ
「あ!それに時々恭輔さんに吸われたり!」
「待って」
「はい?」
「それってすることなの?」
「???しないとモチベーションが落ちるって恭輔さんが」
「・・・言ったな俺」
だから最近毎日来てくれるのか・・・
ポヨネも吸われるのが癖になったのかと。
「・・・嫌だったら言っていいのよ?」
「え?私もうれしいんで全然」
「あ、そう」
よかったぁ・・・
「あ、でもお姉さまもコロちゃんも時々吸われたがっているのでやってあげるといいですよ」
「ウィッス」
コロちゃんはともかくフミは・・・ちょいと恥ずかしい。




