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325話

夜分です

「お邪魔します」


「・・・」


「・・・ダメか?」


「いや、ダメじゃないけど・・・暇なのか?」


「時間は空いている」



50層を越えて以来、結構な頻度でうちに来るようになった存在。

俺たちがダンジョンの人型と呼んでいるその存在は、遠くから見たら人間だろう。近くで見れば、違和感しかないのだが。なんというか、本来その形ではない物を無理やり人間の形に押し込んだかのような違和感。

だから俺たちはこいつを人型と呼ぶのだ。名前も知らないしな。


そんな人型は、ニホリのお菓子が大好きだ。

お菓子全般が好きなようだが、ニホリお菓子は特にって感じ。非常にヨミに似ていると思った。

お菓子を食べるために我が家に足しげく通い、しまいには庭の野良猫達になつかれる始末。まぁ座ってお菓子食べてたら膝に座られるようになったって感じ。警戒はされなくなった。

動物たちの方が、人型の違和感を正確に感じれていたようだったが、何もしないことがわかったんだろう。



「・・・」


「う」


「おはよう」


「うーうー?」


「なんでもいい」


「うー」



じゃあバームクーヘンねーって待てニホリ、それ作ったのか?

うちにバームクーヘンを作るための道具があるのか????



「う」


「あるの!?」


「私が送った」


「何してんの!?」


「興味があった」


「作ったのか」


「購入した」


「・・・どうやって?」


「同士に頼んだ」


「・・・どうし」


「う」



そうかーヨミカー・・・いつ知り合ったんだお前ら。


まぁこんな感じに、割と好き勝手やってる。別に悪い事してるわけじゃないし、物貰ってるからいいっちゃいいんだけど。

なんか色々ともやもやするものがあるよね。


今も出されたバームクーヘン食べてるし。



「・・・」(モグモグ


「う?」


「おいし」


「う~」



どんだけ好きなんだよお菓子・・・



「そんなに好きなら、自分で作ればいいだろ」


「・・・?」


「う?」


「・・・作れるの?」


「うー」



そんなこと考えたこともなかったって感じの反応だな。それも作れないじゃなくて作れるのかどうかわからないって。



「そもそも料理できるのか?」


「・・・料理?」


「お、そこから?」


「う?」



相変わらず変なズレ方してんな。料理そのものを知らない・・・?

なんか違和感が・・・



「今お前が食べてるものは?」


「バームクーヘン」


「大きく言うと?」


「・・・甘味」


「そうだな。じゃあ今ニホリは何してる?」


「・・・何かを手で押さえている」


「うー」


「・・・握っている?拳を作っていない」


「うーうー」


「・・・おにぎりは知っている」


「ああやって、ニホリがやっていることを料理って言うんだよ」


「・・・動詞?」


「名詞ではないな」


「う」



確かに大きく言うと食べ物は大体料理だ。それを作る行為を料理するっていう。



「つまり、俺は料理ができるって聞いたから、何か食べ物作れますかってこと」


「・・・不可能」


「生み出すのはできる?」


「設定すれば」


「え・・・それすればダンジョンでケーキを生やせると?」


「可能・・・あ」


「おう、絶対やるなよ」



なんだダンジョンに生えてるケーキって。

そのいいこと言うじゃんみたいな顔すんな。


クソ、話が進まない。



「お前が料理できるのかって質問でなんでこうなる」


「うー?」


「これがデフォなのも困るんだが?」


「うー」


「料理はできない」



ああうん。それだけでよかったんだよ。

無駄にこんなこと聞いたわけじゃないんだから。



「何の意図がある」


「いや、お前が料理を覚えればいつでも食べられるぞって思っただけ」


「うー!」



いい考えだ!とニホリも喜んでいる。

まぁニホリは基本的に暇な時間に作り貯めしてるから、趣味みたいなものなんだけど。

自分でほとんど食べないしな。



「どうせなら、ニホリに教えてもらえば?」


「・・・いい?」


「う!」



任せろ!と胸を張るニホリ。

ニホリも料理に関しては既に一流と言ってもいいだろう。まぁ問題なく教えられそう。



「今から」


「う!」


「何故に?」



今から教えるから、恭輔おにぎり握っといて!と何故かご飯を炊いた鍋ごとこちらに渡された。

あ、うちは炊飯器は使わずに鍋で炊いてる。割と簡単だぞ・・・って違う。

ああ、なんか俺の前に海苔と塩、鮭の身をほぐした物、おかか、昆布、小さい海老天が広げられた。



「・・・全員分握れと」


「うー!」


「・・・ご馳走様。今行く」


「・・・えぇ」



言い出したの俺だけど、その日のうちに始まって仕事任せられると思わないじゃん。

てか、このおにぎりって今日の昼飯か?海老天とか何時揚げてたよ。


まぁ任されてしまったからには仕方ない。黙々と握り続ける。

俺の好みで、具を多めに入れていくつかは塩結びにしておく。これがバーベキューとかやった時にあると便利だ。そのまま食べてもよし、焼いて焼きおにぎりにしてもよし。

塩結びは何でも合うし、素晴らしいよな。



「ただいまー。あれ?ニホリはどしたん?」


「人型にお菓子作り教えてる」


「うん?どっからつっこんだらええん?」


「とりあえず握るの手伝ってくれ」



手が熱い。






















フミが買い物から帰ってきたから、軽く事情を説明しておにぎり作りは手伝ってもらった。

その間にもニホリは人型にお菓子作りを教えているようだ。時々うー!って聞こえる。

あ、もっとこねるのだー!って言ってる。



「んで出来たのがこれと」


「う!」


「・・・」



出されたのは普通のクッキーだ。

少し形が崩れているのは、慣れていないからだろう。ニホリ、本当に全く手伝わなかったんだな。

だが全く焦げてないし、持っても崩れることはない。初めてにしては、なかなかいい出来なんじゃないか?



「う!」


「・・・いただきます」


「いただきまーす」


「うわー人型の手料理て、むっちゃ貴重なもん食おうとしとるうち」


「慣れろ。恐らくこの先何回か同じことあるぞ」


「・・・違和感すごいわぁ」


「ニホリが乗り気だからあきらめろ」



こうなったら止まらんからなぁ。悪いことじゃないのが猶更止められない・・・あ、これって人型と同じだな。似てんのかな二人。


とりあえずクッキーを食べる。

食感、味ともにニホリの物には及ばない。まぁ初めてだしな。

それが気にくわないのか、人型の顔がわずかにゆがむ。同じように出来ていないと思っているのだろう。

それをニホリも気がついたようだ。



「うー?」


「これは違う」


「うーうー。う!」


「・・・慣れれば同じにできる?」


「う!」


「・・・わかった」


「う?」


「・・・これはこれでおいしい」


「う~♪」



うん、後数回・・・下手したらしばらくうちでお料理教室だな。

・・・その間、昼飯は俺が作るのか?



「・・・まぁいいか」


「恭輔てそういうところ寛容やな」


「まぁ・・・出来ないことじゃないしなぁ」


「お。じゃあうちもやってええ?」


「むしろお願いしたいくらいなんだけど」


「ふひひ。一緒にお料理~♪」



結構何回かやってると思うんだけど・・・何回やってもうれしい物かそりゃ。


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