表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
340/567

319話

昼一話夜一話です

「・・・なんであいつらふてくされてんの」


「ワフ」


「うん?・・・まぁコロちゃんがそう言うならいいか。ふーちゃんおいで~」


「クゥ」


「おっふ」



なんかフミもニホリも、コロちゃん以外の皆が頬をプクーと膨らませてるんだよな。

なんとなくふーちゃんを抱っこしようとしたら手で顔を押しのけられたし。え、何嫌われたの?



「ワン」


「違うのか・・・」



一体みんなに何があったのいうのだ・・・


その後半日くらいあーだこーだしながらみんなのご機嫌が治らないかなーとかいろいろやってたけど、なんか3時くらいを過ぎたら勝手に治ったよね。

本当になんだったの・・・?



「いや、うちらの早とちりというか・・・」


「うー・・・」


「ぴ」


「はい」


「ぴ♪」



今はすらっぴ普通にマシュマロ食ってるしな。まぁ機嫌が戻ったのならいいか。

気になることは違いないんだけれど。


うーん。それにしても、そろそろ50より下に潜るべきか?

いつ新しいダンジョンが出てくるかわからないから、今のうちにレベルを上げていくってのはいい考えたと思うんだよ。

逆に、今のうちに研究所での仕事を手伝って自由な時間を増やしておくのもいいと思うし。

まぁ手伝うというか、言われたものを獲りに行くってだけなんだけど。後は藤岡さんたちの手伝いか。



「ん~でもなぁ」


「なんや。教えるん嫌なん?」


「き?」


「嫌って言うか、教えられそうなことないなぁと改めて思った」


「あー」


「きき?」


「ほら、俺の戦い方ってスキルある前提じゃんか」



モンスターを戸惑うことなく殴れるのは『硬質化』の効果だ。

遠距離攻撃だって魔法があるから。

それ以外の戦い方。武器を使った戦闘方法とかは、ダンジョン内の戦闘で培った経験から得た物だ。

人に教えるのはできないだろう。しいて言うなら、俺と戦うことで戦闘経験を積むとかだろうけど。それだって今はまだ早いだろう。もう少し強くなってもらわないと話にならないしな。



「せめて魔法スキルを誰かが覚えてくれれば」


「それどんだけ先やねん」


「いや、10層までならボス討伐速度の報酬もあるし、ワンチャン近いうちに・・・」


「三崎さん達ってどれくらいで魔法覚えたん?」


「・・・ダンジョン出てからって意味なら結構後だなぁ」



まぁ無数にあるとか予測されているスキルの中からピンポイントで魔法を手に入れるのはまず無理だろう。

藤岡さんしか魔法を持ってないあたりね。うちの子たちは結構持ってるけど、それはそれだけボスを倒してるからだし。

いつもみたいに残っているスキルスクロールもないし。

ああ、『草魔法』は他人に覚えさせてもよかったかなー。そうすれば教えれることもできたんだけど。



「いや、教えることが目的ではないな」


「せやな」


「・・・ところで何作ってんの」


「え?マフラー」


「これから夏だぞ!?」


「いや、ダンジョン内で寒いのあるやん。恭輔用にって」


「・・・戦闘で破けないかな」


「安心してええで。これアラクネの糸や」


「獲ってきたのか」


「いや、ちょいと貰って来たんよ」


「・・・貰った?」


「糸出させて引っ張ってきたんよ」


「それそうやって集めんもんじゃないだろ!?」



てかあの糸って触って大丈夫なのか?

いや、フミがそうやったって言うんなら大丈夫なんだろうけどさ。

えぇ・・・野蛮というかなんというか。



「でもマフラーはうれしい!」


「へへ。すぐ出来るかんな。もうちょい待っててや」



なんかフミが何かしててその動作が見えるって珍しいな。

いつもは本人の能力のせいで何でも高速だし。流石に丁寧にやらなきゃいけないことはゆっくりだけど。

なんかこう・・・鼻歌歌いながらマフラーを手編み棒で編んでるフミ・・・いいな。



「き」


「ぴ」


「んお?どうした?」


「きき!」


「ぴぴ!」


「見惚れてないで遊べと?いいだろう・・・あ」


「き?」


「ぴ?」


「いや、一個用事思い出した」



そうだ。狼犬の子供に会いに行かないと。
























そもそもなんでそんな話になったって。まぁいつも通り園長先生から来た話なんだけど。

ウルフドッグって呼ばれ方もしてるな。

日本だとあんまり見ない・・・てか、普通に生活してて見る子達ではない。

飼育としつけの難しさから、熟練のブリーダーでも手に余る場合が多い。狼の血が強いからか、群れのリーダーに飼い主がならなければならないからだ。

日本ではそのせいで名称を知っている人は多いかもしれないが、実際のところはどうなんだって人が多いはずだ。

問題の多い犬種でもあるしな。

さて、そんな狼犬。俺からしたら何も問題ない。なんでって、うちにはマジモンの狼、コロちゃんがいるから。

しかも、躾したのは俺。他の個体がいないという状況下だったが、そもそも動物の声がわかる俺にはあんまり意味のない話。群れてようがなんだろうが話すことはできるからな。子供なら特にだ。


んで、肝心のなんで俺が呼ばれたか。

簡単に言うと、元の飼い主がその子たちを飼えなくなり手放したから。

それを色々あって園長先生が引き取った。親も含めて6匹だ。親1匹、子5匹。もう一匹親の個体がいるはずだったのだが、その子は既に亡くなっているそうだ。

彼らがどんな環境にいたか想像に難くない。・・・もし、目の前に元の飼い主がいたら、どうしていただろうか。

まぁいい。この先会うことはないだろう存在を気に掛けるだけアホらしい。俺の知らないところで野垂れ死ね。


そんなわけで俺が呼ばれた。コロちゃんと一緒にいつもの動物園に向かう。

人間のせいで劣悪な環境に置かれた彼らは、既に人間に対して敵意を持っている。頭がいいからな、誰のせいか、何のせいかは理解できる。

普通の人間が、同じ条件の犬猫でさえ危ないのにその狼犬と触れ合おうとするのは非常に危険なことなのだが・・・



「グルルルルル」


「「「「「「クゥーン」」」」」」


「よし終わった」


「茶番」


「う」



コロちゃんに任せておけば瞬間的に終わるわそんな問題。


まぁコロちゃんの方が年上ってのもある。

それ以上に、ダンジョンに潜り強く成り続けたコロちゃんに従おうとしない個体は地球上に存在しないと考えられる。

そのコロちゃんが、うちのリーダーに何してねんワレェと言えば1発で終わる。

今のでこの子たちはコロちゃん、基俺の配下になったわけだ。



「おいで~」


「クゥ~ン・・・」


「おう。それは俺に効く」


「わが子をかばうために身を差し出し取る」


「う!」


「俺のせいかこれ!?」


「ワフ」


「満足そうにしてんなぁコロちゃん!!」



後で褒めてあげるね!!


でもその前にこの状況をどうにかしなければ。

この子たちが俺以外のところで過ごすのは難しい。それこそここの動物園みたいなところじゃないと無理だ。

俺の言うことを聞いてもらえるようになったけど、俺以外の言うことを聞かないなら意味がない。

他の家に引き取ってもらうとかはできない。


俺を呼べば解決するというのは、別の言い方でこれしか方法がないってことだ。

だからと言って子供だけはお助けをって言いながらお腹見せないでくれ俺が死ぬ。



「ぉぉぉぉぉ・・・・」


「欲望と戦っとる・・・」


「るる?」


「お腹撫でたいなぁとか思っとるんやろ」


「る?」


「いや、人型になれんなら何とも・・・いちいち嫉妬しててもしゃーないやん?」


「う」


「る」


「それは言わんお約束やろ!」



撫でていいんだろうか、いやしかし!!今の俺が撫でたらそれはただの欲望を満たしているだけ、この子達のぉぉぉぉぉ



「・・・コロちゃん!」


「ワン」


「あ、助っ人登場。欲望に勝ったんやな」


「うー」(パチパチ


「るー」(パチパチ



拍手が心地いいぜ・・・


コロちゃんが母犬に近づき話しかける。

その内容は今の俺には聞こえないが、徐々に警戒と恐怖がなくなっていくのはわかる。

子供の方も、母親の状況を見て少しづつ固まっていたのが離れていく。あれだ、狼団子みたいになってた。


コロちゃんが離れていく。もう大丈夫なようだ。

命乞いのような形じゃなくて、先ずは俺という人間が大丈夫であるということから伝えなきゃいけない。

そうすることで、徐々に人間に慣れさせて行くと言うことだ。あの時撫でてたらそれがダメになっていたかもしれない。

よく我慢した俺。



「おいでー」


「・・・」(スリスリ


「よしよし。今日からしばらくうちの子だぞ~」



母親が俺の手に顔を擦り付けてくれる。その動作はまだぎこちない。だが、それでもまだマシになった。

コロちゃんのおかげだな。俺の言葉は彼らに通じるし、彼らの言葉は俺に通じる。だけど、俺はどこまで行っても人間だ。なんか最近人間卒業の未来が見えてるけど、まだ人間だ。

その人間の俺が何を言ったところでダメなのだ。コロちゃんがいないと、短い時間で問題を解決できない。



「まぁ本当は俺に来るまでに終わってるのがいいんだけど」


「そうなん?結局おんなじやと思うんやけど」


「全然違うんだよ。俺が関わっちゃうと、悪い意味で俺に慣れる」


「・・・人間が恭輔と同じだと思うんか」


「そう。うちには母さんもいるし」


「ああー」


「問題児を受け入れるって意味ならうちは間違いなく向いてるよ。それをもう一回誰かの手にって話だと・・・ちょいと向いてないかな」



本当は三崎さんに回す気だったんだけど、何匹いるかを聞いて俺が来たのだ。

三崎さん家だと、そろそろ限界が近いし、何より三崎さんに教えたのはテイマーとしてのいろいろ。

ブリーダーに近いことに関しては、また別の話なのだ。



「でも、恭輔はどこでそんなこと覚えたん?」


「これは独学」


「ワン」


「あ、コロちゃん以外にも結構育ててるぞ俺」


「あ、前にいたちゅう」


「まぁ大体うちで飼っちゃうんだけど」



懐かしいなぁー。元気かなーみんなー。

あ、うちで飼う最大の理由は母さんが放したくなくなるっていうことだからな?

俺のせいじゃないからな?



「ホンマに?」


「・・・3割くらいは」


「アウト」


「う」


「るる」



酷くない?

てかピッちゃん。お前の用事を早く済ませなさいよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ