310話
昼一話夜一話です。
50層を攻略してから2日。
俺が指定した日が今日なので多分あの二人は来ると思う。
ニホリが既にお菓子やらなんやらを色々用意しているから来ると思うわ。
俺はニホリがあの人型とメル友でもおかしいとは考えないことにした。
「・・・う」
「はい?玄関?」
瞬間移動できるのに何で玄関から?
ニホリに言われるがままに玄関を開けると、今まさにインターホンを押そうとしていた人型となんで?って顔をしている女の人が。
「・・・お邪魔します」
「何故玄関から・・・?」
「人に家に行くときはこれがマナーって・・・」
「当然」
「誰の知恵だそれ」
「ニホリ」
「だよね」
何を教えてるんだニホリさんや・・・
いや、てかどうしてわかったの。
「・・・」(モグモグ
「ぁ。おいしい」
「うー」(フンス
「いや、なんか想像と違うんですけど?」
「うちもちゃうから言わんといて」
「う?」
「いただく」
人型が次々にエクレアをぱくついている隣で、結構上品に・・・てか、普通にマナー的に完璧に食べている女の人。
相変わらず北半球がすごいなとか思うけど、
「んで?何しに来たの?」
「えぇ・・・」
「恭輔さん・・・」
「・・・完全にいろいろ忘れられてるのだわ」
「ん?」
「う?」
「・・・特にない」
「あるよ!?」
人型。俺の分も食べていいからちょっと静かにしてて。
「・・・」(モグモグ
「よし」
「よしじゃ・・・うん。もういいわ。ちゃんとお話しましょう」
ようやくといったところだな。まぁ空気はゆるゆるだけど。
主にニホリと人型のせいで。
今日の話し合い。一応ヨミにも来てもらっている。
『鑑定』持ちだしな。他の子もみんないる。ちょっと距離の離れた場所にみんなでちょこんと座ってる。
唯一の例外がロラちゃんだ。女の人の足元でジーっと見ている。
「」(ジー
「ロラちゃんおいで」
「」(チラ
「ん?その人がええんか?」
「」(ウー
「はい?お母さん?」
お母さんと言ったか今?
いや・・・別におかしくはないのか。
「ふふふ。この子もだいぶ大きくなったのね」
「サイズ的に1cmくらいしか伸びてないぞ」
毛が
「あら?・・・まぁともかく」
「何がともかくなんだ」
「話進まないんでもう質問していいですかね?」
「ええんちゃう?」
「あ」
「任せた」
ぶっちゃけ俺の気になることって俺自身のことだからな。
ヨミが聞いた方がいいかな。
知識もあって、経験もある。個人的に、いろいろ考えていたことも多いだろう。
俺なんかが聞くよりはいいことを聞いてくれそうだ。
「とは言っても、どこから聞いたものか」
「多いのか?」
「ダンジョンに関して。私たちに関してなら最初から聞きたいんですよね」
「だったら、初めから説明するわね。まずは、ダンジョンを作った理由から」
「ああ、さりげなく自分がダンジョンの生みの親であることを言ってきたよ」
「重大情報やな」
「う?」
「大したことない」
「お前作られた側だろ・・・?」
なんで偉そうなんだ・・・
「まず、ダンジョンを作ったのは私」
「知ってた」
「知ってる」
「わかっとるわな」
「う”う”ん!!・・・それで、なんで作ったかを知りたいのではなくて?」
「ああ。それは知りたい。いきなり出てきたし」
「そうね。本当に説明することは多いわね」
まずは・・・魔力が地球上に最初から存在していた物だってところから説明しましょうかしら。
この地球が生れた時から、それこそ最初の生命体が生れる前から魔力は存在していた。
魔力は、途切れることなく長い時を永遠と流れ続けた。
「龍脈とかいうやつ?」
「そういう人間もいるわね」
ある日、その魔力がおかしな流れになってしまった。
隕石がぶつかって。大きく地球自体が変化してしまったからだ。ながれは、外に向かって流れていくはずが留まるようになってしまった。
「地表に穴があって、そこから流れ出てたってイメージでいいわ」
「ほうほう。こんな感じ?」
空中に土の球体を作り上げ、いくつかの穴をあけておく。
「そうそう。まさにそんな感じなのだわ」
地球自体も、魔力を生み出し続けていた。それが外に排出出て行かなくなったことで、貯まるようになってしまった。
これが問題だった。
「最初は、定期的に無理やり外に出してたのだけれど、いまそれをすると迷惑でしょ?」
「・・・人間に気を使ったってことか?」
「あら?私からしたら、どの生物も等しく可愛いものだわ」
「へぇ・・・」
「続けるわね?」
最近になって、魔力が再び溜まってきた。
想像できていると思うけれど、溜まりすぎるとパンクして地球自体が壊れてしまう。
それを防ぐために、ダンジョンを生み出した。
「ダンジョンが魔力を外に出してるのか?」
「出してもいるわ。でも、全く足りていない」
「・・・他の事に魔力を使っている?」
「正解。ダンジョンで生まれる、あなたがモンスターと呼んでいる子。魔石。手に入る道具。それらすべて魔力で生み出されている物になるわ」
「・・・そうか。だから人が入らなきゃいけないのか」
「ええ。いくら作っても、限界があるでしょ?」
「でも、人間が全員入ったところで地球がヤバいとかいうレベルをどうにかできるよ思えないけど」
こいつの話から想定するに、恐らく地球にたまった魔力をどうにかしなきゃいけないのは。何千年。下手したらもっと長いスパンの話だろう。
そこまで長い期間をかけてたまっていった魔力を、人間がどうこうしただけで解決できるのか?
俺自信が持っている魔力だけでも、正直使い切るのには苦労するんだが。
「ふふふ。可能なのだわ。そもそも、一番魔力を使うことって何だと思う?」
「・・・生命の創造?」
「本当に頭のいい子なのだわ恭輔ちゃん。正解。例えば彼女たちのような存在は、生み出すだけでも多くの魔力を消費するのだわ」
「たまたま生まれたんじゃないのか?」
「たまたまよ?でも、生まれることは想定していた。どれくらい生まれるかはわからなかったけど」
「ほほー。うちら想定されとったんやな」
「みたいですね」
「・・・正直。こうなるとは思っていなかったのだけれども」
「うん?」
「人間と結婚したがる子が生まれるなんて想定外なのだわ」
「「あー」」
「えぇー」
そこが想定外なのか・・・
わからんでもないけど。だってなぁ。そもそも俺のフミの最初の出会いって・・・
「あ、そういえば。なんで俺はあの時怖がられてたの?」
「・・・そういえば。なんで最初怖かったんやろ」
「あああれね?私のせいなのだわ」
「おん?」
「私がちょっと手を加えたから、そのせいで存在的に変な感じになってしまって・・・」
「調整ミスった」
「シッ!!」
「うむ」
「何してくれてんだお前」
ミスったてお前。そもそも何されたんだ俺。




