306話
50層終わりましたけどまだまだ続きますよ
あ、昼と夜に1話ずつ投稿します
一人になったからか、その分攻撃を受ける回数が増えた。他に目移りしなくなったし、爪か尾のどちらかで毎秒攻撃されているような感じだ。
だが、一発も当たることはない。かすりもしなかった。
なにせ相手の動きが全部わかっているのだ。
「ハッハッハ!!今のスタイリッシュじゃね!!」
(う!)
「イエーイ!!気を付けまーす!!」
振るわれた尾をギリギリまで引き寄せて飛び越える。映画みたいに体をひねりながら避けたら怒られたけど。
いやしかし、随分余裕が持てるようになった。先ほども言ったが、あらかじめどこから攻撃されるかがわかっているから回避行動に移るまでがだいぶ早くなった。
回避に集中すると、魔法のチャージがしにくいため攻撃の威力も弱くなってたから、今の方がドラゴンの気を引けている。
まぁそれでも鱗を貫くことはできていないんだが。
「バンカータイプなら・・・であれ危ないしな」
(うー!)
「あらら。そっちの方が速かったか」
本来、魔法のチャージに5分とか使うものは戦闘では使い物にはならない。
そんなことするくらいならコロちゃんに走ってもらった方がいい事がほとんどだ。
俺たちの魔法だって数撃ちゃ同じだ。同じだけの成果を出せる。
でも、長時間のチャージで威力が上昇する魔法の形に関してはずっと練習してた。
俺の魔法が『土魔法』だから、一回の魔法で込められる魔力が決められている。俺だけが、魔法組でこれが出来ない。
しかし、他のみんなは違う。魔力を込めれば込めるほど威力の上がる魔法を使える。これは、切り札だったが今まで使い道がなかった。
だが、いま初めて見られる。
皆の、正真正銘の全力が。
ニホリの合図で後ろに下がる。もちろん、嫌がらせに無数の鉄槍を撃ちだすのも忘れない。
眼球に当たるのを嫌がっているのか、羽で前面を覆うようにガードされる。しかし、それでいいのだ。
俺がみんなの魔法の範囲の外に出られたから。
「ぴぃぃ」
「ききぃ」
「クゥ~」
「るる♪」
「めぇ」
水、風、炎、無、雷。五属性の魔力の塊。
それらが俺の背後で大きく輝いている。もはやその属性というか、光の球にしか見えない。
ただ、それ以上の魔力がある。フミの魔力だ。
「準備しとけって言ったけどさぁ・・・マジ?」
(うー!?!?)
ニホリが驚くのも無理はない。なにせ、フミを除く魔法組は自分の魔力をほぼ使い切る勢いでチャージを終えた。
にもかかわらず、フミの魔力がそれを超えている。まだ本人には余裕があるにもかかわらずだ。
俺・・・ここだと巻き込まれるな。
フミの魔法は知らないが、推測はしている。確証はないので詳しくは言わないが、爆発を起こすものだと言うことは間違いない。
要するにだ・・・
「逃げるぞコロちゃんねっさん!!!」
「ワン!!!!!」
「ちゅちゅ!!!!」
陽動の為に俺の少し後ろで待っていたコロちゃんとねっさんもその脅威を感じ取ったのだろう。
だって、コロちゃんねっさんを咥えて加速して逃げてったし。
・・・あれ、俺は?
「うっし。行くで!みんな!!!」
「ぴ!」
「き!」
「クゥ!!」
「る!」
「めぇ!」
「ちょ」
(うー!?)
ちょ。俺まだ退避できてな
ニホリの視界は、両方真っ白になった。
威力が高すぎる。ポヨネが全力で張ってくれた結界がボロボロになってるし。
ポヨネ~生きてるー?
「うー?」
「な・・・なんとか・・・」
「うう~」
くてんってなってる。おなかも地面についてるし。
衝撃の威力だった。ポヨネが完全に防げないのもあれだが。
あまりの魔力に、属性魔法関係なしになっていた。濃度の高すぎる魔力が、その通った空間に存在するもの全てを消したのだ。文字通り、かけらも残っていないだろう。
さて、そんなところに残ってしまっていた恭輔だが、特に心配はしていない。
視界が白くなる前に、一瞬だけ緑の猫の手が見えたから。
「う?」
「にゃ」
「・・・ナイスふーりんちゃん」(プラーン
「にゃー」
「帰ったらあげる」
「う!」
ふーりんちゃんに咥えられた恭輔が自分の後ろにいた。流石の状況に恭輔の顔も真っ青通り越して白い。
魔法が放たれた瞬間。ふーりんちゃんが恭輔のいる場所の地面の下から巨大化した状態で出てきた。
そのまま背後から服を咥えて、こちらに向けてダッシュ。その間に、恭輔が私たちとドラゴンの間に数十枚の壁を作る。
私の背後に回った段階で、魔法が着弾。作られた壁が一瞬で消し飛んで、ポヨネの結界も崩す。
ラスト一枚がギリギリ残った。
「いや・・・マジで死ぬかと・・・」
「うーうー」
「おおう・・・ニホリ・・・」
「う」(ギュ
こんなに弱った恭輔は初めて見た。
いやまぁあの威力だもんなぁ・・・。穴をあけて潜ったとしても防げたかどうか。
何を考えているんだフミは。
「いや。恭輔の回収頼んだのうちやで?」
「う?」
「そうそう。間違いなく巻き込むから~思てな。案の定やな」
「・・・手加減的な物は?」
「ないわ。てか、加減して勝てる相手やないであれ」
「あれ・・・は?」
「いやぁ。うちも驚きやわ」
恭輔とフミが、ドラゴンのいた位置を見て驚いている。
私も恭輔の視界を共有してみる。
そこには、半身が消えてなお生きているドラゴンの姿があった。
「威力で言うなら、最高と言わんでもそこそこ出したんに・・・ちょっとショックやな」
「・・・あれで殺せないのかよ」
「いや、ほっといてもあれ死ぬで。本当にギリギリで生きとるだけ。もうなんも出来へんわ」
「いや。消し飛んでないだけやばいんだけど」
「うー」
同意である。それは恭輔やコロちゃんの攻撃が効かないわけで。効くわけがない。
ドラゴンを見て、だいぶ調子が戻ったようだ。顔色も戻っている。
「あ、すらっぴ達大丈夫か?」
「ぷしゅ~」
「ああ、ダメだこりゃ」
すらっぴは萎んでるし、他の子もみんな気絶寸前。しーちゃんがギリギリ大丈夫かってくらいだ。
ピッちゃんとか魔力部分の羽根が消えている。心なしかふーちゃんの毛並みも悪くなってるし。バトちゃんはしーちゃんの毛の中に不時着。
ボロボロだ。コロちゃんとねっさん。恭輔とフミしか戦えそうにない。
「どうする?とどめ刺す?」
「・・・刺しとくか。ほい」
手を横に振る。その動作と同じように、壁から鉄槍が生れて撃ちだされる。
体の半分が消し飛んでいるので、鱗のない部分に容赦なく槍が突き刺さる。あっという間に針山のようになり、消滅した。
「・・・はぁ・・・なんか疲れた」
「お疲れ様みんな。ほれ、ロラちゃん印の魔力回復薬飲み」
「うー」
疲れすぎて動けない子には、飲ませてあげる。苦いから、ピッちゃんは抵抗したが無理やり飲ませる。
すらっぴは瓶ごと投げ込むだけでいいから楽だね。
魔力が体調に影響するすらっぴとピッちゃんはそれですぐに元気になるが、他の子はしばらくこのままだろう。
ポヨネは存在が分身なので魔力での回復になるのだが、精神的にクタクタらしくで動きたくないみたい。
「クゥ・・・」
「めぇ・・・」
「きき~・・・」
「うーうー」
まぁ帰りは私が浮かせばいいから問題ないか。
あれ?宝箱あったっけ?と扉を方を振り返ると・・・
「犠牲無しどころか、怪我もないなんてね~」
「忠告した。無意味」
「そうね。ちょっと想像以上だわ」
「う!?」
「・・・ああ。そりゃ来るよな」
「まぁせやろな」
そうか。フミがあんなふうにむりやり終わらせたのはこれがあったからか。
ドラゴンを倒したら、本命が来る。それがわかってたから、出来るだけ恭輔とコロちゃんとねっさんの消費を減らしたかったのだ。
何があっても、一番対応できるのが前衛組だから。
私も何かしなくてはとは思うが・・・
その前に恭輔が話始めた。
「あのさ」
「はい?何か聞きたいことがあるのよね。今なら何でも答えるわ」
「肯定。あなたは示した」
「いや。疲れたからそういうの後にして」
「・・・え?」
「ほら。家に来ればお菓子一杯あるから。明日・・・明後日にして」
「わかった。帰る」
「ちょ、え?本当に・・・あ、本当に帰ったのだわ!?」
「あ、何か食べたいものとかある?」
「え、ええ?・・・エクレア?」
「うい。ニホリ作れるよな?」
「う、うーうー」
「うし。帰ろう。また明後日」
恭輔が可能な限り動けない子たちを抱えて扉の先に進もうとする。ワープで帰ろうということだろう。
うん。わかるんだけど今そうじゃなくて。
「い、いや。今の流れはここで私たちの目的とか聞くんじゃ」
「なにしてる。帰る」
「ちょ」
露出の多い女の人も、人型ちゃんに連れてかれて消えてしまった。
・・・え?・・・ええ??
「・・・さすが恭輔や」
「う!?」
言うとる場合か!!!




