303話
七夕感あんまり出せてなかったなぁと今更ながらに。
俺たちが持ち帰った鉄。その量は新人冒険者たちに一通り装備を整えるのに十分な量があるそうだ。
まぁ俺たちとか藤岡さん達とかは使わないしな。それに、探索が進めば進むほどそこで新しい装備を手に入れていくだろう。
まぁでも、新人が増えるたびに俺たちが中級に取りに行くのは面倒だからやめてほしいんだけど。
「うばぁ」
「なんや?えらい疲れとるけど」
「いや。なんとなくってだけだよ」
柄にもなく緊張しているらしい。
鉄を手に入れて、研究所に送ってから数日。ロラちゃんが出してくれた薬の整理と、手に入れていた装備の確認。
アクセサリーの新調など、様々な準備をした。
明日、50層に挑む。
「・・・緊張しとるん?」
「・・・そらするだろ」
50層で、何を言われるのかわからないからな。
俺に何かしたっていうことの内容も気になる。
「不安は尽きないよ・・・なにせ、最悪はもう一回あれと戦うんだぞ」
「・・・大丈夫やって、皆ならなんだって越えられるわ」
「・・・本当は、俺一人で行きたかったよ」
「そんなことしたら、またみんなで追いかけるで」
「わかってるよ。だから行かなかったんだよ」
また、皆に心配されたくないもんな。一人で行くことなんてしないさ。
「・・・それに、不安なのはそれだけじゃないんだよ」
「おん?」
「俺さ、何されたんだろうな」
「・・・」
「『真化』の効果で人間をやめることはない。これは『昇華』の時にも言われてたっけ。スキルの効果が違うって」
「・・・自分に何かあるってこと?」
「そう。その何かのせいで、スキルが変わったのか。種族が変わるのか」
例えば、俺のステータスが一定値を超えた時に人間とは違う存在に変わるとか。
「そう考えると、将来的に俺は『真化』抜きで人間やめることになるな」
「ああ~。まぁうち的にはその方がええんやけど」
「おん?」
「やって、その方が長生きしてくれそうやん」
「・・・お前寿命長いの!?」
「え!?今!?」
うそでしょ!?フミって寿命長いの!?
「ええ・・・誰にも聞いっとらんかったん?」
「誰にもッて誰に?」
「すらっぴとか・・・寿命ないみたいなもんなんやけど」
「えぇ・・・」
うっそでしょマジか・・・
フミ曰く、私たちの寿命に関して、少なくともフミは最初から知ってたらしい。
そもそもが魔力の存在を前提とした存在である。すらっぴ、ピッちゃんは両名は寿命がない。死ぬのは、致死のダメージを受けた時か、魔力が完全に尽きた時らしい。
「まぁ尽きる前に気絶するから、それで消滅することはないんやけど」
「お、おお」
「んで、うちみたいなタイプは元の寿命が元から長い生物ってタイプやな」
「も、元が長い・・・」
「えっと・・・エルフって寿命が長い種族ってはなしやん?そんな感じ」
「おおう・・・うんうん」
な、なんだ。元から長い・・・ああ、いや。モンスターだしそれもあるか・・・あるのか?
「あ、元の寿命が人間に近いのもおるで」
「ああうん。そこはまぁ・・・」
人間の寿命って結構長い方なはずなんだけどなぁ。
てか、そうか。フミだけじゃなくてみんな長いのか。
そう考えると、ふーちゃんは妖怪になってるから寿命伸びてそうだな・・・
「俺も伸びてるのかな」
「恭輔のあの状態は、どっちかというとふーりんちゃんに近いらしいやん。多分伸びるちゅうか。なくなってるで」
「マジか・・・」
精霊と同じ・・・魔力で体を構成するタイプに近い。
確かにそれなら寿命なんてなさそうだな。でも、そうすると俺の体があることに違和感が残るんだけどな。
・・・ああ、そういうことか。
そのうち俺が体を捨てるってことか。
「まぁそうかもなぁ。今は元々の体があるからってだけで。そのうちなくなるんか。どうなるんか」
「どうせならうまい具合に実体だけ残んないかな」
精霊は魔力で構成されてるから、それはそれで便利なんだけど。魔力の影響をすごく受ける。
フミと一緒にいるのなら、それは少し避けたい。
フミが感情的になる時とか、戦う時とかはふーりんちゃんは基本いない。いると、影響を大きく受けてしまうから。最悪消滅する。
まぁふーりんちゃんはピッちゃんのスキルで呼ばれてる子だから、消滅しても再召喚できるんだけど。
俺がそうなった場合、死と同義だろう。
「それは嫌だからな。魔力方面でも安定する肉体は持ってたいんだけど」
「うーん・・・まぁうちらにはどうしようもないしな」
「そうなんだよなぁ」
こればっかりは努力でどうにかできる範囲ではないな。
半人間半精霊くらいがちょうどいいんだけど。『真化』のせいで変わってるなら強く成ればいけるかもしれないけど。
元から人間じゃなくなるようになってるなら厳しいか。変化する種族は決まってしまっているだろうし。
「ああ、でも俺の寿命が延びても問題あるな」
「え?」
「コロちゃん」
「・・・あ」
そう、コロちゃんは普通の狼だ。すごく強くて、誰よりも速くても、どこまで行ってもただの狼だ。
「悪魔化があるから。それを使えばいけるか?」
「行けるんやろうけど、なんや、嫌なん?」
「・・・なんていうか、コロちゃんに使うのは違うなって思うんだよなぁ」
ほぼほぼ勘だけどな。
「『悪魔化』は、多分バトちゃんか俺なんだよな」
「ん?恭輔も?」
「ああ、まぁ勘なんだけど」
相性って言うか、コロちゃんと悪魔はあんまりよくないんじゃないかってすごい思うんだよな。
逆に、俺とバトちゃんが使うのは何も問題ないように思える。それが一番いいとすら思う。
俺自身にも思うのは、何か変なんだけど。
「今までそうやってスキル選んでたん?」
「大体はな。最初にみんなに聞いて、そこから俺がいけそうか判断してって感じ」
これもないかされた影響なのか?
まぁこれはいいか。便利だし。
「・・・そういう時はみんなが羨ましいわぁ」
「ん?」
「やって、恭輔が考えてくれるもんなんやろ?」
「・・・ぷっは」
「あ、笑うことないやん」
「クク。いや、やきもち焼かれるとは思わなくてな」
「むー」
フミが頬を膨らませる。
それを指で押すと、ぷしゅーと空気が抜ける。
「可愛いな」
「み!・・・もう照れんで」
「いや、照れてるぞ」
「照れてへんもん!」
み!って言ったろ。
恥ずかしいのか顔を見られたくないのか。俺の胸に顔を押し付ける。
耳まで真っ赤になってきたな。
「いっつもいっつも、恭輔はずるいんよ」
「どうして?」
「やって、毎回照れるのはうちやんか」
「・・・思ったことを言ってるだけなんだけど」
「・・・うちも言ったら恭輔照れる?」
「先に箍が外れるかも」
主に理性の。今夜でベッドだし。
まぁそれだけうちの嫁さんはかわいいのだ。手を出したくなる。
俺の物だけど。
そう思っていると、フミの顔がさらに真っ赤に・・・あ
「お前心読んだな」
「あうあう・・・///」
「ああ、ダメになった」
こいつ、大人の精神の癖にこういう方面に弱いというか・・・うぶっていうか。
俺がどんだけフミの事が好きか知りたくなってついつい心を読むんだけどその結果自爆するっていう。
「読まないーって言うのに読むからー」
「や、やってぇ・・・」
「ああもう。明日50行くのにな」
「え・・・そ、それはあかんて・・・」
「わかってるよ。でも、抱き着くくらいはいいでしょ」
「あ・・・そうするとうちの方が」
「はいはい。寝るよ~」
「うぅ・・・寝れへんかもしれへん」
・・・それは俺のセリフだよフミ。
ありがとな。




