302話
昼一夜一です
中級6層から帰還して一夜明けた。
朝寝ぼけている姉ちゃんを叩き起こして、車を出させて出来るだけみんなを連れて研究所へ。
姉ちゃん車買ったらしいからな。乗せてもらうのだ。
流石にしーちゃんとユニちゃんは大きすぎて無理だったが。
まぁユニちゃんは何故かお疲れだったので、今日は休めせて~と珍しく言ってきた。昨日どんだけ戦ったんだか。
それの付き添いで、しーちゃんとロラちゃん。ねっさんにバトちゃんがお留守番に。まぁ自分で言ってきたからいいんだけど。
「何したの?」
「いや、最近の恭輔さんのペースに合わせようとしたらあんな感じに」
「無理しなくてもいいぞ?どうせ50行ったらしばらく下に行かないだろうし」
「そうなんです?」
「いや、なんとなぁくだけど、面倒なこと言われそうでな・・・」
主にあの女の人からだけど。
研究所に来た理由はおわかりだろう。
昨日手に入れた金属・・・おそらく鉄なんだが、これの結果報告やら調査報告やら。あとポヨネの『鑑定』結果もあるな。
中級ダンジョンだから、手に入れた物に関してはすぐに研究所に送れるのはいいな。
うちのダンジョンだと、一回家に帰ってから連絡しないといけないし。まぁ一応普通の街ですしね。
ちなみに、研究所に入った段階でニホリとすらっぴとピッちゃんは連れてかれた。母さんに。
多分新しい服とか、お菓子一杯貰うのだろうな。
俺たちが用があるのは親父の部屋だ。いつも通りの場所だな。
「そんなわけで来たぞー」
「おう」
「お邪魔します~」
「ワン!」
「にゃ」
「お、お邪魔します」
「お、ピッちゃんは連れてかれたか」
「YES。その代わりにふーりんちゃんを託された」
「にゃ?」
ぷらーんとフミに持たれているふーりんちゃんは何故呼ばれたのかって顔してっけど。安心しろ特に理由なんてないぞ。
「んで?なんかわかった?」
「いや、流石に一日じゃ無理だわ。むしろ鑑定の結果を聞きたいんだが」
「まぁそうか。んじゃポヨネ頼むわ」
「わかりました」
今回手に入った金属。これはやはり鉄でいいらしい。
性質もほぼ変わらず。しいて言うなら、魔力を通すことで硬度が増すくらいなものらしい。
「それ以外には?」
「特に変わったところは・・・見せてもらった外の鉄と比べても何もなかったですね」
「よし。完璧だな」
「うん?それでいいの?」
なんかもっとこう・・・ファンタジー的な金属を期待されているものかと。
ミスリルとか、アダマンタイトとか?
どうやら、親父の欲しかった物は違うらしい。
「今必要なのは、単純に数を揃えられるものだからな」
「まぁ中級だからいくらでも手に入るけど?」
「ああ、すまん。そうじゃなくて、人間の今の技術でも加工できる少しだけ優れたダンジョン素材が欲しかったんだ」
「・・・剣とか作るから?」
「それもあるが、それ以外にも使えるからな。下手に今まで存在しなかった金属持ってこられても、正直手に余る」
「なるほどね~」
まぁ確かにそうか。そういう特殊な金属で出来た武器や防具ならそれはそれでいい。使うだけでいいからな。
だけど、金属そのもので手に入ると、それを加工しないといけなくなる。
出来るならいいが、出来ないようなものを持ってこられても困ると。
「準備もあるし、研究もしないといけないしな」
「鉱物の研究ってうちでやってんの?」
「やってないぞ。ただ、ダンジョンの素材に関してはうちが完全にトップ・・・正確には俺か」
「ああ、報告書とか全部回ってくると」
「面倒なんだよ・・・」
「モンスターの事ならいいんだけどね」
「本当それな」
流石生物研究者だよね。好きな物だけ見たいっていうのが伝わってくるわ。
「でも、実際のところどういうのが来られると困るんだ?」
「そうだな・・・なんだろうな」
「いや知らないんかい」
「専門外にも程があるんだがな・・・」
「あの~ちょっとええ?」
「「うん?」」
ここでフミが遠慮がちに手をあげてきた。
何か言いたことがあるようだな。
「いやな。聞いとったんやけど、それスキルで全部どうにかなることやで?」
「おん?」
「どういうことだ?」
「加工出来ないって、うちもどういうものかわからんけど、やり方がわからなくてどうしようもないってパターンならどうにかなるっちゅうかなんちゅうか」
えっとつまり?
設備の能力が足りなくてどうしようもないのはどうしようもないけど。
純粋に方法がわからずに加工できない場合はどうにかできると。それもスキルで。
「フミそんなスキル持ってるの?」
「いや、うちは持ってないけど」
「おい」
「いやいやちゃうねん。恭輔『鍛冶』持ってるやろ!」
「・・・いや。俺は持ってないな」
「あれ?」
売ったな。確か誰かに使わせたんじゃなかったっけ?
「そうだな。お前に渡したあの剣を作った人がスキルを持っているが・・・その『鍛冶』が?」
「ああ、そういうことですか」
「ポヨネわかったの?」
「はい。まぁ出来るか微妙な気もしますけど」
「でも、出来そうではあるやろ?」
「ですね。もちろん、成長は必要でしょうけど」
「何々。わかるように言ってくれ」
「えっとな?・・・」
フミ曰く、『鍛冶』のスキルは本当に鍛冶作業しかできないスキルではないらしい。
鉱物の加工という広い範囲でそのスキルは使えるらしい。あくまでも補助的な効果しかないようだが。
それを使えば、加工の方法がわからない素材に関してやり方はわかるだろうと言うことらしい。
「確か、鍛冶のスキルって最初は本当に普通の物しか作れないんですよ」
「ほうほう」
「成長していくにつれて、作れるもの・・・レシピが増えていくのは前にも説明したと思うんですけど」
「そうだな」
「それ以外にも、ちゃんと成長する部分はあるってことでして」
「確か、ロラちゃんの『調薬』なんかもおんなじやな。まぁロラちゃんの場合は無理っぽけど」
「ん?なんでだ?」
「忘れたんか?あの子、人型の贈りもんやんか」
「あ」
「多分スキルも弄ってあると思うわ」
『調薬』・・・ロラちゃんのスキルだと耳とかから薬を出す能力になってるけど、本来は違うのか。
まぁ名前的に素材があれば作れるって感じのスキルだしな。それの応用で、薬草の種類とかわかるようになるのかな。
「ダンジョンの下の階層で手に入る物の中には、魔力を通さないと一ミリも変化しない金属とかありますからね」
「後は、確か・・・火を吸収してまうやつとか。逆に受け付けんやつとか」
「何でもありますからね・・・下の階層は」
「なんなの下の階層」
「・・・ごった煮やな」
「ある階層を越えると…難易度が跳ね上がるって言うか、バリエーションが豊かですねっていうか」
「お、おう・・・」
フミとポヨネの目が遠くなってきた。この二人がこの反応するってどんなとこなんだ。
フミは地元って言い方も変だろうが、元々80に近い階層の生まれ。ポヨネも似たような階層の生まれのコピー。
両方ともかなり下にいた経験があるのにそれか。
「いやぁ。外におると戻りたくなくなるっちゅうか・・・」
「平和ですよねーここ・・・」
「本当にどんなところなんだよ・・・」
「・・・ヨミが外に憧れて家でするレベル」
「あいつ結界張れるんだよな?」
そこそこ快適に過ごせそうなもんだけど。
「その結界ぶち破ってくるのおるからな」
「・・・それどこ」
「93」
「遠いわ!!」
んなところ暫く行かないわ!!
てかお前らやっぱり生れた階層より下に行ってたんだな!
え、てかヨミの結界をぶち破って・・・
「フミ勝てたの?」
「・・・ぎりっぎり」
「お前でギリギリ?」
「ああ、今はもうちょい強くなってるから、もう少し余裕をもって勝てる思うけど・・・」
「俺がいたら?」
「・・・あんま変わらんかも。『真化』の効果でも、そこまで環境に対する耐性は上がらんやろ?」
「まぁスキルと身体能力の強化がメインだしな」
あくまでも耐性の強化はおまけというか。
俺自身の体に変化が起きた結果変わっているだけだからな。フミレベルの耐性にはなれない。
「あと、あれやし。うちまだ恭輔と本気で戦っとらんし」
「ああー」
「それに、恭輔の『真化』って結局最大まで使うの難しいやろ?」
「まぁ結構な」
「皆の誰かが大けがしたり、そういう時やないと使えんから・・・常に最大稼働なら問題ないんやけど」
「ぐぅの音も出ねぇ」
俺がフミより強くなれるのは、『真化』のスペックを最大限発揮出来た時限定。
しかも1戦したら動けなくなる可能性が高い。
俺の普段の戦闘力は、ようやくフミの半分ほどってところだ。だって普段『真化』を半分くらいしか使えてないし。
「まぁレベル差あるからなぁ。そこ埋めれば余裕やろうけど」
「そうですねぇ。『真化』はレベルが高ければ高いほど効果も上がりますからね~」
「むー・・・恭輔。ちょいとレベル上げマジでやらん?」
「・・・その前に50層かなぁ」
まぁいつ行くかもわからない階層の話もいいけど、先ずは50層だよな・・・
なんかあんな話聞いた後だと余裕に思えてくるから笑えるな。
だって、どうしたってフミがギリギリになるようなモンスターが出てこないだろうし。
「いやまぁ・・・そうやな」
「出てこられても困りますけど」
「だって俺、いま何層が適性なんだっけ?」
「・・・60後半ですかね」
「だよねぇー」
そもそもの強さを見て、適正階層が今よりずっと下なんだから、そら余裕だわな・・・
でも倒すのに時間かかる時あるからな。ダンジョン深いわ・・・




