31話
「じゃあ、この子はピッちゃん決定~」
「・・・いいのか?」
「いいんじゃね?本人喜んでるし」
「る~!」
「ハイテンションっすね」
「そこまでか・・・」
まぁ、みんなのテンションなんて俺以外はなかなかわからないよな。
ピッちゃんのテイムをした後、藤岡さんたちも時間だということで即帰宅。
ちょうど親父たちも帰ってきていたので即名前会議。
議論の末、母さん発案のぴっちゃんに決定。
正直止めようとしたけど、本人・・・本妖精が喜んでるのでまぁいいかとなった。
聞いた途端にすごい主張してきたし。どんだけ気に入ったんだ。
「何食べるのかしら?」
「なんでもいいみたいだけど、甘いもの好きだわ。特にクッキー」
「るー!」
「帰り際に買ってみたらハマったみたいで」
「あら~。なら夕飯はクッキー?」
「いや、普通のにしてください」
甘やかし、ダメ絶対。
適度に甘やかす分にはいいけどやりすぎはダメ。調子乗るし、体調も崩しやすくなっちゃう。
こっちが面倒見るならそのあたりの塩梅は見極めねば。
そういう意味ではコロちゃんは楽だな。
肉食べるのは狼の特徴だし。甘い物よりジャーキー系。でもそんなに多くは食べない。
食べたいときはちゃんと何かしら手伝ったりしてからねだってくる。
なんだこの賢い子は。
「うー!」
「私も楽って。お前はペット枠じゃないしなぁ」
「う?」
ニホリはペットというか・・・娘か?この年で娘はおかしいかもしれないが、行動は幼女だし。
あ、でも好き嫌いしないか。・・・普通だな。
他の子はみんな好き嫌いあるし。すらっぴは何でも食うくせに硬い物が好き。バトちゃんは肉オンリー。ふーちゃんは高いキャットフードじゃないと食べが悪い。
本当にいい子だな、ニホリは。
「る!!」
「あら、そうなの?」
「どったの?」
「お肉は嫌いなんですって」
「うちでは珍しいパターンか?なら野菜と果物?」
「る~」
「豆がいいと。豆・・・大豆でいい?」
「る!」
「いいみたいね~」
「・・・なんで母さんも理解できてるんだ?」
「前からコロちゃんと話してたじゃん」
「・・・あれ話してたのか!?」
「俺も理解したの最近だけど」
元々俺もコロちゃんに始まり、いろんな動物が何を伝えたいかわかってたけど、母さんは俺以上だった。
俺のはあくまで気持ちを理解するだけ。母さんは何言ってるかわかってたらしい。
時々できてないけど。
「今日は少なめがいいの?」
「ワフ!?」
「ダメよ~いっぱい食べなきゃ?」
「ワン!」
「いっぱい上げるからね~」
今できてなかったな。
コロちゃんは肉少なめ、他の多くしてって言ってた。母さんは後半を聞けずにすれ違い。
このままでは今日は肉の山ができるだろう。後で訂正しとくか。
「きき~」
「お前もいつまで乗ってんだよ。家なんだから降りればいいのに」
「き~」
「そういうもんか?」
「クゥ」
「わかるじゃないよ。どうなってんの俺の頭の上」
「ぴ!」
「わかんねぇ」
「・・・なんか疎外感があるんだが」
親父も勉強すればいいのに。
やり方知らないけど。俺も気づいたらできるようになってて。そこからもっと正確に聞こうと集中しただけだし。
そういえば、うちの子たちの特徴としてあまりうるさくない。
コロちゃんもほとんど吠えない。ていうか、普段も鳴かない。鳴かなくても俺がいれば意思の疎通ができるからだ。時どき、俺限定で狼が聞こえる周波数の音で話しかけてくるのはびっくりするが。音に聞こえないが、わかるのでそのギャップに驚く。
前にコロちゃん達狼は、周りの人間に聞こえるように『ワン』と鳴くと説明したが、其れの逆だな。
俺限定だけど、聞こえるし、わかる。だからコロちゃんはそっちの鳴き声と違うものを使いわけるようになった。楽なんだろうか?。近所迷惑にならないって点じゃ非常にいい。
「あ、そうだ。スキルスクロール」
「ちゅー」
「ああ、ありがと。どこいるかと思ったら取り行ってくれたのか」
分身を使って神輿みたいにスクロールを持ってきてくれた。
4匹のねっさんが息を合わせてちゅ、ちゅ、ちゅと運んでくれる姿は愛らしいこのとこの上なし。よく自分ご飯をそうやって運んでる。
さてさて、スキルはなんだろな~。
「・・・あ、そもそもカードで確認してないや。ピッちゃんおいで」
「るー?」
「一緒にカード見るよ」
「るー」
母さんの肩から俺の肩へ。羽があるから移動は飛んでできるし、その場で滞空もできる。速度以外はバトちゃん以上かな?レベル差はあるだろうがそれもすぐに埋まるだろう。
この際だから全員分まとめるか。
恭輔 Lv35
「土魔法」「硬質化」「魔力節約」「精密操作」「テイム」
すらっぴ Lv31
「水魔法」「溶解液」「分裂」
バトちゃん Lv29
「風魔法」「超音波」「周辺探査」
コロちゃん Lv36
「高速移動」「魔刃」「スタミナ上昇」
ねっさん Lv30
「分身」「爆発」「追跡」
ふーちゃん Lv24
「火魔法」「幻術」
ニホリ Lv35
「強化」「幸運」「浮遊」「魔力吸収」
ぴっちゃん Lv22
「浮遊」「精霊喚起」「無魔法」
何気に三つ持ちか。下の階層のモンスターはみんなスキル持ちなのか?そうじゃないと説明できない技やらいろいろあったけど。
それにしても、「精霊喚起」に「無魔法」ね。またわからないものが。
無魔法は想像ができる。ダンジョン内でピクシーが使ってきた魔法だろう。魔力の塊を飛ばすことしかしてこなかったが。
精霊喚起は全く分からない。文字通りなら精霊を喚起・・・呼び起こすのか?。なんか違う気がする。
それにテイムモンスター組もスキル増えてるし。スクロールは使ってない。
もしかしてレベルアップで増えるのか?。成長して、そのモンスター特有のスキルが出てきたと考えれば納得がいく。
手持ちのスキルスクロールは4っつ。手に入れた記憶はないのだが、どうも暇な時にねっさんたちがダンジョンで手に入れたらしい。そんなサクッと手に入る物じゃないはずなんだけどな。
まぁ、手に入っているならいいか、ありがたく使わせてもらおう。
「『吸血」『鍛冶』『妖怪化』『飛行』」
「う?」
「る?」
「悩みの種が増えたなぁ・・・」
なんだよ『鍛冶』と『妖怪化』って。意味は分かるけど、なんだこれは。
危険そうなのは『妖怪化』のほうだな。『鍛冶』はその通りだろうからいいか。俺らが使うことはなさそうだ。研究用に売ってもいいかも。
ただ『妖怪化』に関してはダメだな。能力の内容がわからないのはそうだけど、使った後にどうなるのかわからないのが一番問題だ。
狐と言えば妖怪みたいなところあるけど、それだけの理由で使う気は起きない。こいつは放置で物置いきかな。
「う!」
「え、『妖怪化』がすごい?」
「う!」
「仲間って、妖怪になるってことだろ?」
「うー!」
「ん?種族が変わる?」
このスキルも特殊な部類らしい。
使用したら使った対象の種族が妖怪の何かに変わるらしい。
うちで言うなら、使えるのは俺とコロちゃんとふーちゃんだけ。モンスターには使えないそうだ。ニホリは元々人形なので範囲外。妖怪みたいなもんだそうだ。
コロちゃんなら、狼の妖怪。ふーちゃんは狐の妖怪の何かしら。元の種族に関係のある妖怪に変化するそうだ。変化後はスキルが消滅する。本当に妖怪になる為だけのスキルらしい。
「いや、使いませんけど」
「う?」
「だって、今のままでも十分だし。わざわざ妖怪にしなくてもな?」
「うー」
「そうだろ?。妖怪になれば強くなるかもしれないけど、そこまでして強くなる意味ないし」
確かに戦力強化は大事だけど、そこまで急いでるわけじゃない。むしろ、自衛隊や別のところのお偉いさんに少し休めとか言われてるくらいだし。特にスポンサーのおっちゃんが言ってくる。
そんなわけで、使う必要は当分なさそうだ。
でもこれじゃあ、ピッちゃんの強化にならないな。『吸血』は明らかにバトちゃん向きだし。『飛行』は浮遊と被る。
とりあえず、使えそうなやつは使うか。バトちゃんに『吸血』。『飛行』は・・・
「誰かいる人~」
「「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」」
「誰もいない。じゃあ俺か?俺が取ってもなぁ」
飛べるようになったところでダンジョンないじゃな。10以降は広い空間だからいいだろうけど、この先使えるかわからないし。
速く飛べるならいいけど、走った方が早かったら意味ないし。いざって時には役立つか?
うーん・・・一応取っとく?
「さっそく飛んでみましょう」
「う!」
「る!」
「き!」
「飛行組の視線がすごい」
俺と一緒に飛べるのがうれしいのか。熱視線が・・・。ニホリとピッちゃんは飛んでるんじゃなくて浮いてるんだけど。
まぁ、空中にいるって意味でお揃いなのか。
あ、それがうれしいのか。




