300話
昼一夜一です
「びっくりした!めっちゃびっくりした!!」
「え!?いつ、いつからおったん!?」
「ううー」
「少し前!?」
「・・・本当に気がつかれてなかった」
「うー」
私は姿を見せる前にはわかってたぞってそれはそれで気になるんだけど、マジでか!?
全く気がつかなかった。
って、うわほんとうだ。煎餅もお茶もがっつりいただいてますやん。
「よ、よく気がついたなニホリ」
「うー」
「・・・最近よく来てる?」
「・・・もしかして」
「うーうー」
「おいしい」
こいつお菓子食べにうちにちょくちょく来てるの!?
何してんだこいつ。え、こいつってもっとなんかこう・・・すごい存在なんじゃないのか!?
「うーうー」
「・・・混乱してる」
「誰のせいかと」
「うぇぇ・・・おかしいなぁ。こんな近くで気がつかんわけないのに」
「確かに、気配ってか、誰か増えたら流石に・・・」
「こちらのせいではない・・・あ」
「いや完全にそっちのせいだな今の反応」
あ、って言った瞬間にいつもの気配に戻ったもん。
こいつ俺にばれないように家に遊びに来る時用に気配をごまかせるようになってんだな?
消えてれば、それはそれで違和感があるからわかるが、ごまかされると判別できない。
うち皆いるから誰の気配なのか正確にわからないんだよね。集中すればわかるけど、日常生活でそんな普段から気配の察知に集中しないし。
今も、敵が寄ってくるのがわかればいいかなくらいにしか思ってなかったから、完全にわからなかった。
ねっさんが増えて何かやってんのかなくらいにしか思わなかったぞ。
「え・・・今日は何の御用で・・・?」
「せ、せやな。そこ聞かんと」
「・・・」(ボリボリ
「ううーうーうー」
「・・・何故ニホリが」
「私、気配薄い」
「やべぇよ気にしてるよ。こんだけ近いのに気がついてないからめっちゃ気にしてるよこいつ」
「あっれ~?こないなやつだったん?」
ニホリが伝えてくれてのは、49層超えたのになぜすぐに50に入らないのかを聞きに来たそうだ。
ま、まぁ確かに、直前まで来てるのに進まないのを見たらそう思うよな。
「何故」
「ああ、ここから参加するのか」
「えーっと、恭輔もお仕事あるから、すぐに行けんかったのよ」
「・・・目指すのをやめたわけではない?」
「ないない。行く気はある」
「ならいい」
「・・・行かないとヤバいの?」
「・・・困る?」
「おっふ。また反応に困る反応を・・・」
何かがヤバいとかじゃなくて、困るって。しかも疑問形だっただろ今。
こいつ自信もあんまり把握してないのか?そうなると、あの時以来会ってないあの女の人が大元ってことになるけど。
ただ、やっぱり急かしに来たんじゃないだな。
つまり、50まで来てくれればいつでもいいってことなんだろう。もちろん、あまりに遅いのはあれだろうが。
俺たちが50まで行かないと世界がヤバいとかそういう類の緊急性のある問題はないってことか。
「ちなみにどれくらいまでに来てほしいんだ?」
「・・・10年」
「長いわ」
「そんなん絶対行くに決まっとるやん」
むしろ俺の仕事内容考えて50まで10年行かないとか途中で大けがとかして冒険者やめた時とか敷かないだろ。
「・・・10年はすぐ」
「どこが?」
「あのな?人間にとっては10年は結構長いねんで?」
「・・・???」
「うーうー」
「マジで言ってるんかこの子」
「言うというか、全く理解できてないだけだろうけど」
まぁ寿命的に人間の10年は長いけど、もっと長く生きている存在ならあっという間よな。
「う、うん。なんか納得いかねぇけど。とりあえず絶対に数週間以内には50越えるから安心しとけ」
「わかった。・・・」
「うん。食ってっていいから。すぐ帰らなくていいから」
「感謝」
「うーうー」
話聞き終わったからってジーっと手元の煎餅を見ないでくれ・・・
何時もすぐ帰ってたけど、もうちょっと食べたいなぁって感情がありありと伝わってきたわ。
全く表情に変化がないのに、目だけがめっちゃ語り掛けてきたぞ。
俺の言葉を聞いて、ニホリにもどうぞどうぞと勧められたからか。
無言で次々に煎餅を食べ始める。
真顔なんだけど、食いっぷりがすさまじいのでニホリもこれはこれで満足するだろう。
「そういえば、ニホリはこいつのなんか話したのか?」
「う?」
「いや、世間話じゃないけど、こいつが来た理由を聞いたんなら、俺たちの事情も話したんだろ?」
「・・・う!うーうー」
「え?鉄が下の階層にあるって?」
「めっちゃええ仕事しとるなニホリ」
「それに比べて今日の俺たち酷いな。気づかないし」
「ホンマやな。寝ぼけとるんかな」
なんかもう帰った方がいいんじゃねぇかな今日。
ワープ部屋見つかんねぇし。
「・・・さすがに下見てからにするか」
「そうやな・・・」
「「・・・ハァ」」
なんかどっと疲れた。
中級6層。
鉄が手に入るというここは岩山だ。正確には鉱山みたいなんだけど。
いや、なんでそんなこと知ってるかって・・・
「・・・」(ボリボリ
「・・・いつまでついてくんだこいつ」
「・・・さぁ?」
「ワフ」
「きき~」
人型さん着いてきてるんだよねぇ・・・
帰ろうとするたびにニホリがどこからともなく煎餅を一枚取り出して渡す。
それを人型が食べる。
食べてる人型をニホリがスキルで浮かせて一緒に連れてく。それに気がついた人型が自分で歩き始める。
何故か帰らない←今ここ
試しに話しかけてみたところ、ここの階層は鉱山をモチーフに作られており、出てくるモンスターは金属製のゴーレム。
アイアンゴーレムってことらしい。
こいつを倒すことで、金属・・・主に鉄が手に入るらしい。主にってなんだ主にってとは思ったよ。
「何故助言まで・・・」
「手早く終わらせれば、こちらに来ると判断した」
「お、おう・・・」
ああ、煎餅食べながらも返事してくれるのね・・・なんかぼりって聞こえたけど。
完全にこいつニホリに餌付けされてるよなぁ。え、てか。コロちゃん達は知ってたの?うちに来てるの。
「・・・ワン」
「クゥ」
「おおう」
俺たちもとっくに知ってるものと思われていたようだ。
つまりなんだ。気配だけごまかしといて堂々とうちにいたと。
何故俺に会ってかないのかという。
「ぴ?」
「るる~?」
「気まずいんじゃない?えぇ?そんなこと気にする・・・気にしそうだな」
「せやな。最近思ったんやけど、割と繊細やんなあの子」
「そうそう。無感情な振りだけで子供っぽいというか」
あんまり俺の周りにはいないタイプだわな。
まぁ、満足したら帰るだろう。・・・ニホリが満足するのか人型が満足するのかは知らないけど。
俺たちは当初の目的を達するとしますかね。
「硬いタイプだろうか。ピッちゃんとねっさんよろしくな」
「ぴぴ!」
「ちゅ!」
爆発と溶解液は相性いいからな。
期待してるぞ。




