297話
今年も半分が過ぎてしまいました
「おお・・・物理的に重い・・・」
「衝撃も結構なものですね」
「感覚的には、30後半くらいか。結構上がるなぁ」
中級ダンジョンの難易度は、最初のダンジョンに比べて高い。
そもそも1層の時点でかなりの難易度なのだ。燃やせば簡単とは言え、トレントの大群。
並大抵の能力者では『火魔法』を持っていても魔力がなくなってしまうだろう。
そして、1つ層を進むたびに難易度が跳ね上がる。
この上がり方も、最初のダンジョンとは比べ物にならない上がりかたをする。
基本的に、ここの中級ダンジョンはモンスターの強さのみで難易度が決まっているようだが、その分モンスターが強いのだ。
変に地形や環境で難易度が上がらない分、モンスターの能力は高い。
5層の時点で40後半のモンスターと同じ力。藤岡さん達じゃこれ以上は無理だったな。
「てかいつまで乗せてんだ重いんだよ!!」
作った壁を拳の形に変化させて斧をどける。
横にずらしたから、すぐそこに斧が落ちていくが、その際の衝撃もすさまじいものだった。
普通では立っていることもできないくらいじゃないか?
「だいぶ重いな」
「斧自体重いんやね・・・うーん。気になるなぁ」
「フミはまだ出んなよ?俺たちの仕事なくなるし」
「はいは~い」
まぁ厳しいのは俺たちだけであって、フミには関係ないわな。
てか、俺個人で言うなら問題ないんだけど。
「ちゅ~」
「デカくて重いとねっさん不利だよなぁ」
「ちゅっちゅ」
「うーうー」
そう、魔法組は規模を大きくできるからサイズ差はあまり関係ない。
だけど、そうじゃない・・・ねっさんとコロちゃんは敵とのサイズ差の影響をもろにうける。
爆発の威力を決めるのはねっさんの体力。分身自体の体力を全消費しても、デカすぎて効果がないことは多い。
「てか、ここまでのボス全部そうだったな」
「ちゅちゅ~」
コロちゃんはまだ『魔刃』を大きくすれば戦える。その分魔力の消費は大きいが。
だけど、ねっさんの場合はマジでどうしようもない。戦っても効果がないから、偵察とかばっかりになっちゃう。
ぶっちゃけ飽きてきている。
普通のモンスター相手ならいいんだけど、ボス相手だけは全く何もできないからなぁ。仕方ない。
「ニホリ、ねっさん持ってて」
「うー!うーうー」
「ちゅー!」
後方でねっさんを抱えてぷかぷか浮くニホリ。
それを確認して、もう一度振り下ろされてきた斧を先ほどと同じように受け止める。
「・・・金属じゃないな。なんだこれ」
「めぇ?」
「いや、やめとこうか。ふーちゃん!」
「クゥ!!」
受け止めた感覚、殴った時の感触。両方とも素手で触ったわけじゃないが、触れた感覚からわかることはこれは金属ではないということ。
もちろん。俺が知らない金属・・・ダンジョン特有の物の場合はその限りではないが、恐らく木材だろう。
重く、中身が詰まっている。だけど何かが違うのだ。
だから、しーちゃんの魔法じゃなくてふーちゃんに頼んだ。本当に木材なら、これで少しは燃えるはずなんだが。
ふーちゃんの炎が、斧を覆うように渦を巻く。
ここで巨大ミノタウロスを直接狙わないのは、最初に武器を無くした方がいいと思ったから。
この巨体でこのでかい武器。軽く振るわれるだけなのに毎回受け止めなくちゃいけなくなる。先にどうにかしなければ。
「・・・効いてんのかこれ」
「・・・クゥ」
「マジか」
だが、ふーちゃんの炎ではまったく燃えない。
手ごたえもないらしい。
「一点集中でもダメか?」
「クゥ」
「それもそうか」
そうなると、ふーちゃんの攻撃よりすらっぴの方がいい。
『溶解液』持ちならどんな素材でも溶かせるからな。
だが俺がすらっぴに攻撃を頼む前に、再度斧が振るわれる。
ふーちゃんの炎を纏った状態で。
「あ」
「ちょ。パワーアップしてるじゃないですか!?」
「クゥ」
「呑気か!?」
「あ、ポヨネのため口だ」
珍し。
そう思いながら普通に俺だけで受け止める。
まぁ炎を纏っただけで特に一撃の重さが変わったわけじゃない。二回ほど受け止めた結果。まぁ俺だけでも問題ないと思ったので勝手に受け止めてみた。
結果的に何の問題もなく受け止められたので、これはこれでいい。
ポヨネ単体だと厳しいか。そもそも完全に攻撃をシャットアウトする結界は張れないみたいだからな。
「これこのまま同じこと繰り返されるか?」
「うーん。まぁ攻撃はどうにかできるから・・・誰かに魔法でちくちくしてもらうしか」
「それめっちゃ時間かかるだろ・・・」
「それ以外だと、消費を大きくして一撃で決めるしかないですよ」
「だよなぁ・・・」
そうすると先に進めなくなるから嫌なんだけど・・・
うん?コロちゃんどこ。
「コロちゃんは?」
「え?しーちゃんの隣に・・・あれ?」
「めぇ?」
しーちゃんもいなくなったことに気がつかなかった。
気配を絶っていたわけじゃないから、急に加速したのに気がつかなかった?
そうなると・・・
「「あれの近く?」」
俺とポヨネが巨大ミノタウロスの足元を見た瞬間、ミノタウロスの足が切り落とされた。
『モォォォ!?!?!?!?』
「「・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?」」
一瞬だけ見えた青い光。多分コロちゃんの魔刃の光だ。
サイズは異常なまでに大きく、本当に一瞬しか見えなかった。
一瞬の発生で、その瞬間だけにすべてを込めた一撃。
だからこその効果はあったけど。
「コロちゃん動けないんじゃねぇか!?」
「魔力切れが!!」
マズイ!あの巨体が倒れそうになっている。
動けないのならあれに潰されることになっちゃう。
今から走って間に合うか?
いや、『真化』を全力で使えば何とか・・・
「足元で地面を撃ちだす感覚で俺事飛ばせば・・・」
「ワフ?」
「だぁ!?」
姿勢を屈めて、今から助けに行くぞ!というまさにその時。
ひょこっと隣にコロちゃん出現。そらこけるわ。
「へ?コロちゃん?」
「ワン」
「魔力切れでは?」
「ワフ?」
「・・・ああ」
「そういえば、そんなの持ってましたね・・・」
『魔力吸収』
コロちゃんの場合は、魔刃で切った対象から魔力を奪って自分の物にするスキル。
今までは、そもそもコロちゃんの魔力が切れる前に戦闘が終わってたから、その効果を実感することがなくて影が薄かった。
正直、そんなの持ってたねそういえばくらいの勢いで忘れてた。
ああそっか。切ったタイミングで魔力を吸収して、その魔力があるから特に問題なく普通に戻ってきたと。
しかも、あんだけの巨体をばっさりいったから、吸収した魔力もかなりの物だろう。
まぁそんな場合ではないな。
「コロちゃーん!!」
「わっぷ」
「勝手にいなくならないでぇぇぇぇ」
「・・・わぷ」
「恭輔~今なら殴り放題なんやけどー」
「みんなに任せた。終わったら今日は帰ります」
「言うと思ったわ。やってええ?」
「おけおけ」
「わぁい」
俺はもうコロちゃんに抱き着いて離さない仕事に入るので。後はお任せします。
うーん。想定通りやなぁって感じ。
コロちゃんが前に走り出した時にこうなるやろなぁとは思っとったけど。
「でもどうする?今日帰るんならみんなででかいのかますんもありやけど」
「クゥ」
「めぇ」
「ぴ」
コロちゃんに片足を切られて轟音と衝撃を伴って地面に叩きつけられるミノタウロスの巨体。
まぁ鴨やな。なんでもできてまうわ。
時間をかけて大きい攻撃もできんくはないけど、まぁみんなもそこまでやる気ない・・・てか、コロちゃんが急にいなくなるもんだから、そっちに集中削がれてもうた感じやな。
あれに対する興味がないなってもおうてるわ。
「まぁじゃあ、うちがやるかー」
「いや、めっちゃウキウキじゅないですかお姉さま」
「いやいやぁ。あんなでかいのと戦うのなんて久しぶりやし。テンション上がるわぁ」
「わぁ楽しそう」
まぁ戦うって感じやないかもしれへんけどな。とどめ刺すだけやし。
ほな、どうせならゆっくり一撃でやったりますか。




