30話
数字の表記を統一しては?というご意見をいただきましたが、ちょっと量が多いのでとりあえずそのままで投稿します。
あと誤字も直してるつもりなんですが皆さんに誤字報告をしていただいている状態なので頑張ります。
「仲間になってもいいなって思ってもらうことですかね」
「今回は食べ物で懐柔?」
「違いますよ。まず、ここにいるモンスターって、普段何食べてるんでしょうね」
「普段ですか?」
「うちの子たちはそれぞれに教えてもらったんですけど、何も食べてなかったそうです」
「え?」
「うちに来てから食べるようになりましたけど。だから食べ物で釣るって意味ない事のほうが多いと思いますよ」
「それで、テイムには関係ないと」
「効果的な場合もありますけど」
うちのすらっぴは始めは餌付けだし。
モンスターによって違うんだろう。個体差もあるかもしれないけど。
相手がどっかいかないようにするのには有効なことが多いかな。
「さっきニホリが言ってた、やさしくってのが肝心なんです」
「別に怒ってたわけじゃないですけど」
「でも、何も考えてなかったんでしょう?」
「そうです」
「俺も意識して思ってるわけじゃないですけど。なんていうか、心構えの問題的な?」
別に『テイム』限定じゃない。うちに来る子たち皆に思ってることだ。
衝動的に使うこともあるが、うちの子にするのなら決めていることがある。
小さいころから動物がいた。家に親や姉がいなくても、俺には家族がいた。その家族が生まれるのも、死んでいくのも見てきた。
そんな俺だから、自分の家族に対して、絶対に破らないと決めた約束がある。
「家族は絶対に幸せに死んでいってもらうって決めてるんです」
「幸せに・・・死ぬ?」
「どうしたって、寿命は来るんです。なら最後の最後まで幸せでいてほしいんです」
だから、彼らがなんて言ってるのか知りたかった。
なんて感じてるのか理解したかった。
何を幸せと感じるのか、それを共感したかった。
その思いが、『テイム』を使う時に伝わるのだろう。
「そんな感じです。だから、さっきは失敗しました」
「それを考えてなかったと」
「というか、試しでやったのが原因ですね。失敗してもどうでもいいやなんて、家族に思うことじゃない」
「でも、テイム前はまだ家族じゃないですよね?」
「そうですけど、俺はあなたを幸せにしてみせますって。そういう気持ちが大事なんです」
「・・・」
「・・・」
「まぁ、理解するのは難しいですよね」
「いえ、わかります」
「ただ、とっても難しいことですね」
「そりゃもちろん。命一つ抱えるんですから。責任重大です。それでも投げ出さないって決めたんです」
「うー」
「わかった!じゃあちょっと行ってきます」
ニホリの方も話が終わったようだ。残ったピクシーは一体だけ。話を聞いてくれるようだ。
『テイム』の話。本当は正解かどうかなんてわからない。
ていうか、正解なんてないと思う。
優しい人がいい。強い人がいい。モンスターにも、いっぱい希望があるんだと思う。俺はそれを全部満たすことはできない。
だけど、できる限り叶えたい。不自由させたくない。満足してほしい。その思いは常にある。
俺の家族になっても、悲しいことはある。つらいこともあるかもしれない。
それでも、最後の時に、俺と一緒にいれてよかったと思ってもらえるように。みんなで幸せになりませんかって。
「そう聞くだけでいいんだよな?ニホリ」
「う?」
「なんでもないよ。ありがとな」
「うー!」
「よっし!君が、話を聞いてくれる子だね」
「るー?」
「とはいうものの、聞くことは簡単だけどな」
「う!」
「そうだな・・・さて!」
『テイム』
「・・・すごいんですね、恭輔君」
「そうですね。まだ高校生なのに、いろんな動物を看取ってきたんでしょうね」
「大門教授・・・生物学の権威のかたですね」
「そう。その世界で知らぬものなしと言われる方。もちろん、その奥様も」
「だから、ですかね」
「どうでしょう」
「え?」
「多分、あの子はどんな生まれでも変わらないと思いますよ」
「・・・」
「だって、あんなにやさしいんですもん。だから、そんなに怖がることないわよ」
「・・・そうですね。後で謝ってみます」
「謝る必要はないですよ。普通に話せば十分ですよ」
「はい!」
「じゃあ、よろしく!」
「る~♪」
「うー!」
「る?」
「う?」
「るー!」
「うー!」
「はいはい、じゃれつくのは後でな。あ、二人とも。終わりましたよー」
無事に『テイム』成功。
名前はまだない。家に帰ってから決めないと。あ、スキルもスクロールあるし使うか。
「無事にテイムできたんですね」
「無事にできましたよ!」
「その子の名前は?」
「ああ、まだ決めてないですよ。うちで家族会議です。姉ちゃん抜きで」
「ア、アハハハ・・・」
「いない物はしょうがないですし。てかコロちゃん以外の子たちはそれで決まってますし」
「ぴ?」
「珍しく静かだなって思ったらお前、偵察せずに寝てたな?」
「ぴ~」
「コロちゃんが速すぎて出番がない?」
「ぴ!」
「・・・まぁ、それもそうだな」
周りをよく見ると、俺から見て右半分に何かが高速移動してる影があちこちに見える。
左半分には炎がちらほら。バトちゃんは?
「ききー!!」
「ワン!」
「司令塔か・・・」
バトちゃんは上空を跳びながら近づいてくる敵をみんなに教えてるようだ。それも、人間に聞こえない周波数の声を出すことで早く伝達しているのか、明らかに視界の外の敵に皆が攻撃している。
これじゃあすらっぴやることないね。
「そりゃ寝るわな」
「ぴ~」
「ドンマイドンマイ。この後ってどうします?」
「そのことなんですが」
「今日は一旦戻りましょう」
「いいんですか?俺がいないとここ来れませんよ?せっかくだからテイムしていけばいいのに」
「まだ心構えができませんから」
「恭輔君レベルは遠いですね」
「いや、俺ほど重く考えなくてもいいと思いますけど」
実際、ペットショップでペットを買う感覚でいいと思うけど。
かわいいと思ったらちゃんと面倒見る。これだけでいい。
まぁ、これができない連中もいるけどな。死ねばいい。
「それでも今日は。ちゃんと決めてから来ます!」
「意気込んでますね。じゃあそうしますか」
「じゃあ帰りましょうか」
「皆~。帰るぞ~」
「ぴー!」「きー!」「ワン!」「ちゅー!」「きゅー!」「うー!」
「家族が増えるから、帰り際にちゃんと挨拶しろよ」
「るー!」
また、賑やかになりそうだ。




