289話
本日分です
「いや、そもそも入る前に言ってくれないそれ?」
「ちゃうねん。それ付けとけばすぐには問題にはならんねん」
「どれくらい?」
「えーっと。確か・・・2時間後に体調悪くなるんやったっけ」
「誰に聞いたんだそれ」
「ヨミに決まっとるやん。とにかく、吸う量が少なければそれだけですむんよ」
「はぁ・・・んで?何故にそれを今言う?」
「耐性つけてほしかったんよ」
「耐性?」
耐性・・・耐性って耐性?毒に対する体の免疫力?
「それや。スキルでも『毒耐性』とか『毒無効』はあるんやけど、それ関係なしにできるんならその方がええやろ?」
「まぁ無駄に確率低いのを期待したところで意味ないからな」
そういう狙いがあったのならまぁわからんでもない。
体に抵抗を持たせておけば、後で探索が楽になるし・・・
「てか、毒ってそういうもんなのか?」
吸う量が少ないとあまり害にならないってのはわかるんだけど、効果が遅れて出てくるって何。
絶対に普通の毒じゃないと思うわ。
・・・ああ、ここダンジョンだったわ。
「どっちにしろ早めに言ってほしかったんだけど」
「だって言うたらコロちゃん達連れてくの渋るやろ?タダでさえバトちゃん達連れてこーへんかったし」
「まぁそりゃね?」
毒が弱い物だったとしても、そこは断固として渋る。
「コロちゃん達だって、一緒にダンジョン潜るんなら、必要になってくるしな。今のうちがチャンスなんや」
「むう」
「後、コロちゃん達には先に言ってあるで」
「なぬ」
「ワフ」
「クゥ」
「・・・いいって言ったのか」
「そういうことや。自分らだけ毒ダメなんでいけませんーなんて話にならんって話になったわ」
む、むう・・・そういうこと言われると反論できない・・・
コロちゃん達が俺のためにって言うことを反発するのは・・・でも危ないしなぁ・・・体調悪くなったコロちゃん達とか見たくないしなぁ。
「まぁ全く効いてないのは想定外なんやけど」
「・・・あ、それだ。おかしいって何が。まだ2時間経ってないでしょ」
「2時間後に急に来るわけないやろ。普通なら今の段階でちょっと違和感あるもんなんやけど」
「・・・いや、まったくなし。みんなは?」
「ワン」
「めぇ」
「る」
「にゃー?」
「ぴー?」
「うシュコー」
「ニホリはわかったよ」
楽しいのねその音。
ふむ。みんなも特に違和感はないと。まぁ効かない子が混ざってたけどそれは一旦置いておいて。
「皆特に何もないみたいなんだけど」
「・・・なんでやろな」
「ええー・・・」
わからんのかい。
「いや、うちもヨミに聞いてチャンスだと思っただけやし。全く効かないのは想定外っちゅうか」
「何かのスキルか?俺の場合『真化』のせいって言ってもよさそうだけど」
「謎スキルやからなぁあれ・・・うん?その影響がみんなにも出とるんちゃう?」
「・・・ありえそうだな」
「感情の不安定化みたいに、悪いものばっかりでるんとはちゃうんかもな」
「そもそもマイナス効果はなくなってるはずなんだけどなぁ」
『昇華』の時にスキルが進化したらその辺が解決するって言われてたしな。
今度はプラスに働く効果がみんなに出るようになったのか?
検討しようにも、俺たちじゃわからないことだ。ダンジョンの人型が来た時に聞いとくか。
とりあえず、毒の問題はそこまで。
問題はないようだし。先に進むことに。
とは言っても、目の前に既にボス部屋のドアあるんだけど。
そのまま全員で部屋に入る。ニホリのシュコーって音だけがしてる。気に入ったな。
ボス部屋の中は森の中。完全に木に囲まれている状況だ。
敵の気配は・・・いない。まだ入ってきてないのか。
「森の中かー。今の子達だとちょい面倒かな?」
「そこは恭輔次第やな」
「うー」(シュコー
いい加減それ取りなさいよ・・・
ニホリがマスクを取らないので、少しそのニホリで遊んでいたらようやくボスのお出ましだ。
ただ、魔力が高く気配が薄いのが気になるな。
少しづつ、魔力の持ち主は近づいてくる。そして、ある程度の距離まで来たところで気配と魔力が消えた。
「・・・木で見えねぇ」
「・・・ワフ?」
「におい無しと、面倒な・・・ねっさんがいないのが痛いな」
普段。匂いや魔力の察知ができない敵の場合の索敵はねっさんに頼りきりだった。
ここでその弊害が出たな。そもそも木は多いから、『影移動』がめっちゃ役立つのに。
周囲を警戒する。ニホリは既にフミのしっぽの中に入っている。
それをちらっとみて、いいなぁと思った瞬間。
俺の首元には刃があった。
「んなぐ!?」
「ワフ!?」
「めぇ!?」
「・・・るる!」
「ァァァ」
「ごっほごほ。あっぶねぇ。ピッちゃんナイス」
「るる」
一瞬の気の緩み。その隙を狙われた。
俺がフミのしっぽに気を取られたばっかりに・・・これで死んだら間抜けだな。
刃が当たる直前。首全体を『硬質化』で硬くすることはできだ。だからこそ切られずにすんだんだが。
今、ピッちゃんの攻撃により少し離れた場所にいるモンスター。
どくろの顔。黒いぼろきれを纏い鎌・・・サイズを持つモンスター。まさに死神。
恐らく気配と魔力が消えたのはこいつの能力。隠れて隙を見つけ、一瞬で命を狩りとるタイプ。
「反応追えたかすらっぴ」
「ぴぴー」
「だよな。俺もまったく追えなかった」
今目の前にいるのはわかる。目でも魔力でも。
でも、消えてから現れるまでは全くわからなかった。これでは不意打ちを防げない。
「油断しなきゃいいってことなんだろうけど。それも難しいんだよな」
油断というより、集中力を切らさないようにするのが難しい。人間の集中力なんてそこまで長続きしない。
「カウンターかな・・・コロちゃん出来そう?」
「ワン!」
「オーケー。なら問題なし」
俺が囮になり、もう一撃受ける。その隙に最速でコロちゃん切る。これで問題ないだろう。
さぁ、かかってこい!!・・・と意気込んだはいいものの。
「ァァァ」
「「・・・」」
全く消えないんですけどこいつ。
俺たちの視界から離れるように動いてはいるんだ。それを目で追う。木の裏など、明らかに見えないところにも行くんだが、全く消えない。
かれこれ10分くらいこうしてる気がする。
「・・・消えないなぁ」
「・・・ワン」
「めぇ?」
「・・・もうちょい待とうか」
「ぴぴ~」
「るる」
さらに10分。変化なし。全く消えない。姿も気配も魔力も。
そうやってずっと同じ光景が続いていたからか、見かねてフミが近くまで来た。
「何しとるんよ?見つけたんなら倒せばええやん」
「え。あいつの不意打ちを防御できるから、それでカウンターしてやろうかと」
「いや、そんなじっと見られたら消えれるわけないやん」
「え」
「ワフ?」
まさかの一言にフミの方に視線を向ける。
誰も死神を見なくなったその瞬間。奴の気配と魔力がなくなった。
「お?んん??」
「あいつな?不意打ちは見事なんやけど、誰かに少しでも認識されてると消えられないんよ」
「・・・ええ」
なんだその残念モンスター・・・
がっくりと肩を落とした時、再び俺の首にサイズの刃が。
それを『硬質化』で受け止め、手で刃を掴む。
「ァァ!?」
「一回食らえばわかるわ。やっておしまいコロちゃん」
「ワン!!」
コロちゃんが俺の隣から消える。
そして、次の瞬間に死神がバラバラに切り刻まれた。
少し遠くで宝箱が出てくる。
そして、俺とコロちゃんとしーちゃんで一言。
「・・・消化不良!!」
「ワン!」
「めぇ!」
「るーる!」
「いやだってなぁ!」
なんだ見られてると消えられないって!!もう少しなんかこう・・・努力しろよ!せめて視界から外れるような動きとかあるだろ!!
あと、コロちゃんに一方的に切られるだけってなんだ!?お前のサイズは飾りか!!
せめて物理無効くらい持ってろよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
「・・・最近そういうの多かったかんなぁ」
「う?」
「いや、無駄に期待値上げただけやから。しーちゃんも魔法しか効かないんじゃないかって期待してたみたいやし」
炎骸骨って恭輔が呼んどるモンスターがそうやったしな。魔法しか効かないからしーちゃん大活躍やし。
コロちゃんはコロちゃんで、一発食らい防がれる思てたんやろうけど・・・
「マジで不意打ち特化やから、後何もないんよなぁ」
「うーうー」
「そういうことやなぁ」
不意打ちが得意って言えば聞こえはええけど、それって正面からの戦闘が苦手ですって言うとることが多いからなぁ。
もちろん、下のモンスターには両方できるのもおるけど。まだ49層やしな。そこまでのはおらんわな。
さて、いつまでもここにおってもあれやし、さっさと恭輔包んで帰ろかー
「あ、今日の夕飯何なん?」
「う?・・・うーうー」
「ああ、ええなぁ」
とろみたっぷりの八宝菜・・・ええなぁ。




